宮古島の産廃火災問題

 <資料:平良市旧調査委員会報告書より作成>


      
沖縄県による実態調査の問題点


                                池田こみち
                                環境総合研究所

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 平成13年11月28日に火災事故が発生して以来、沖縄県環境部環境整備課が中心となって多くの環境調査が実施されている。

5−1 沖縄県による調査の概要

(1)大気環境について
 平成13年11月29日には、処分所内ガスについて燃焼ガス成分、腐敗性ガス成分その他、揮発性有機化合物などを測定している。また、火災から2ヶ月半後の平成14年2月中旬には、第二回目の処分場内発生ガス成分の調査、まだ同じ項目について、一般環境大気調査として、処分場の敷地境界地点、被害地域である大浦・西原地区についても測定している。

 その後、住民からの強い要望を受けるかたちで、事故発生から5ヶ月後の4月25日〜5月2日にかけて、処分場内、境界地点、大浦地区、西原地区の4地点について一般環境大気中ダイオキシン類濃度の測定とを行っている。

<主な結果>
・事故直後の調査では、燃焼によって発生するガス成分としてアクロレインが高濃度に検出された ほか、多環芳香族炭化水素類のうちベンゼンなどが比較的高濃度に検出されている。
・第二回目の処分場内調査でも、引き続きアクロレインなどが高濃度に検出されており、有害ガス が継続的に発生していることを裏付ける結果となった。
・ダイオキシン類については、火災鎮火後5ヶ月が経過し、発生源である焼却炉が平成14年2月に 停止していることもあり、すべての地点で極めて低い濃度となった。

図中、●部分が産廃関連施設がある位置


(2)水質について
 水質については、平成13年12月10日に周辺地下水・湧水について6検体、平成14年1月10日に処分場からの排出水について1検体を採取し、水質環境基準健康項目一式についての調査を行っている。

 その後、平成14年5月下旬、ダイオキシン類調査(陸水域1地点、海域1地点、海域底質1地点、地下水・湧水3地点、その他処分場内たまり水、敷地境集水池)、環境ホルモン物質調査(海域2地点、地下水・湧水2地点)、環境基準項目水質分析調査(公共用水域6地点、底質5地点、地下水3地点)について実施している。









<主な結果>
・事故直後に実施した環境基準項目についての分析では、処分場北側の井戸(湧水)から鉛が検出 された他は、すべての項目が不検出(ND)であった。
・処分場からの排出水についてもすべてNDであった。

・ダイオキシン類調査では、処分場敷地境集水池から0.044pg-TEQ/L、処分場内溜まり水から37pg-TEQ/Lのダイオキシン類が検出されたが、集水池については、排水基準(10pg-TEQ/L)に 基づいた評価が行われ、基準値内であるとされ、溜まり水については基準がないとして評価を行 っていない。

・環境ホルモン物質については、21項目について分析を行い、北側井戸でビスフェノールAが10 μg/L検出されたことが特筆される。

・同時に行われた環境基準項目についての分析結果では、海域について健康項目についてはすべて 不検出。底質については、各海域で鉛とヒ素が、それぞれ0.85mg/kg〜2.26mg/kg、0.78mg/kg 〜2.46mg/kgの範囲で検出された。

(3)土壌について
 処分場周辺の土壌については、火災直後の平成13年12月10日と2ヶ月後の平成14年1月28日に環境基準項目について分析している。その後、6ヶ月後の平成14年5月中旬に、処分場内、大浦集会所、西原地区キビ畑の3地点についてダイオキシン調査を実施し、同時に、周辺4地点において土壌汚染に係る環境基準項目についても分析している。



<主な結果>
・大浦地区及び西原地区の9検体について環境基準健康項目の分析を行っているが、検出されたの は、カドミウムが1地点、鉛が4地点、ヒ素が7地点となっており、濃度はいずれも低いレベル であった。

・ダイオキシン類濃度については、処分場内についても濃度は極めて低く、環境基準値との適合性 についての評価では問題ないとされた。

・同時に実施した一般土壌の環境基準項目の分析結果は、ほとんどの項目が不検出となり、前回事 故直後に若干検出されていたヒ素や鉛についても不検出あるいは濃度が低下していた。



(4)その他
 市民からの要望により最終的に破砕され再利用されたり、埋立処分される処分場内のコンクリート塊について、平成14年4月中旬にダイオキシン類の含有濃度分析を行っている。

<結果>
・処分場内に積み上げられているコンクリート塊を砕いて含有されているダイオキシン類を測定し た結果、濃度は極めて低く、土壌の環境基準値を当てはめて評価し、問題なとされた。 ここでは、健康調査については言及しない。

5−2 緊急時の環境調査のあり方

 以上、前項で整理した沖縄県による事後調査の内容を踏まえ、今回のような火災事故に際して、許認可権者であり、監視指導の責任者である沖縄県がどのような事後調査を行うべきかについて改めて整理してみたい。

(1)日常的な監視と指導により収集された情報の有効活用
 まず、最も重要なことは、当該事業者の創業時から今日に至るまで、度重なる事業の拡大、事業内容の変更についての届け出、許認可に係る文書はすべて沖縄県の担当課が受理し処理している。また、日常的な事業者への指導や助言、監視などは地元の出先機関である宮古支庁、宮古保健所などが実施してきた。このことは、事業者の所有する焼却炉の仕様や操業・稼働実態、処分場の使用実態や管理状況について、沖縄県の担当部局は情報を把握しているはずであり、これらの日常的な指導や監視活動を通じて収集されたデータが緊急時にどのように生かされるかが課題となる。

 今回の場合、平良市や平良市調査委員会、地元住民に対して、県から速やかに必要な情報が提供されたとは言い難い状況であった。事故原因の究明、環境への影響、事後対策の立案に向けて、最も必要な情報は、事業者の操業実態であり、これまでに届け出られた各種測定データ、また行政が立ち入り検査によって得た情報等である。

 それらの情報に不足があるとすれば、事業者や従業員、さらには地域住民などへの早急なヒアリングを行い、施設の稼働実態を把握することが不可欠となる。

 さらに、被害地域の気象条件や地形条件、地下水や潮流など、事故後の調査を設計する上で欠かせない基礎的な環境情報も速やかに収集し分析する必要がある。これらについては、地元平良市の環境部局の協力も得ながら効率的に行っていくことが不可欠である。

(2)事故時の適切な事後処理のための行政内の体制
 次に、今回のように事故直後7名が入院し、数ヶ月後に2名が死亡する事態に対し、行政としてどのような調査体制、事後処理体制を構築したかが課題となる。具体的には、日常的に環境をモニタリングしている環境保全課と事業者を指導監督する環境整備課、さらには、市民の健康管理を行う保健所、県の衛生研究所など関連部局による協力・連携体制を速やかに構築し、基礎情報を共有化した上で効率的かつ有効な調査を組み立てることが先決である。

 今回の沖縄県の調査を見る限り、火災が鎮火し焼却炉が停止した数ヶ月後に大気中のダイオキシン類を測定すると言った本来であればあり得ない調査が行われていることはまったく理解に苦しむものである。

 前項に示した基礎情報を踏まえ、調査内容、調査項目、調査スケジュール、評価体制等について戦略を練り、調査のグランドデザインを描くことが不可欠である。そうでなければ、意図的あるいは場当たり的に調査を行い、調査相互の関係がみえにくくなるばかりか、結果として有効な実態把握につながらないことも多々あり、公費の適正な執行とは言えないことになる。

 場合によっては、行政内部の関連部局による対策会議とは別に、第三者による調査委員会を緊急に設置し、必要なアドバイスを得ながら進めることも必要である。

(3)調査のグランドデザインのための留意点
 以下に、今回の事故を想定した場合の調査のグランドデザインについて私見を述べる。

@緊急実態把握調査と事後観察モニタリング調査
・緊急事態に対応し、まずは、汚染の実態を把握するために発生源となった処分場敷地内の大気、水質・底質、土壌についての網羅的な調査を行う必要がある。
 ・併せて、周辺環境についても集落の分布、農地、漁場等の分布・利用状況を踏まえた総合的な調査を速やかに実施し、発生源との因果関係の把握に資する調査を行うことが必要である。
・事故直後に実施する上記の緊急総合調査とは別に、事後の経過を観察するための事後モニタリング調査の設計も不可欠である。

 定点観察を行う項目、連続モニタリングを行う項目、定期観察を行う項目などについて協議し、調査地点や調査スケジュールを決定していくこととなる。
 
A分析機関の選定
 ・県の研究所が分析可能な項目と民間分析機関に委託する項目について検討し、民間委託につい  ては、分析機関の能力(精度及び緊急対応能力等)とともに、第三者性を重視し、選定する必  要がある。

B調査内容の設計
・調査内容:調査項目、サンプリング地点等の具体的な調査内容の決定に際しては、調査の目的を明確にした上で、地域住民に対し事前に説明し、必要に応じて住民からの要望を踏まえ調査項目に見直しや追加を行う。

・分析方法:分析方法は、原則的に公定法(JISや官公庁マニュアルに準じたもの)に従って行われるが、調査対象や分析項目によっては、公定法や環境省通達による分析方法では十分に実態が把握できない場合もある。例えば、土壌中の重金属類については、現在のところ「溶出試験」が原則となっているが、我が国の溶出試験の課題については、長年多くの課題が指摘されているところであり、今回のような事態にあっては、当然、溶出試験とともに「含有濃度分析」を行う必要がある。

 ・評価方法:分析結果の評価は汚染の拡散防止対策や環境保全対策を講じる上で極めて重要なものとなる。今回の沖縄県の調査では、すべて環境基準を評価の指標としているが、ダイオキシン類、重金属類をはじめ、多くの有害化学物質について、我が国の環境基準やガイドライン値が国際的な評価レベルにない場合もあり、より多面的な評価の方法を採用することが望まれる。具体的には、ダイオキシン類については、EU諸国の基準値や指針値、重金属類についてはアメリカやカナダなどの基準値や指針値が参考となる。また、基準値や指針値が存在しない項目については、国や他自治体が測定した他地域の過去の分析結果との比較も有効である。海水中の有害成分などについては、平均的な海水中の元素濃度などを参考としながら、総合的に当該海域の汚染のレベルを評価することも重要となる。

 調査の目的は、環境基準に適合しているか否かを見極めること以上に、汚染の実態がどの程度であり、どのような対策を講じる必要があるかについて、早急な判断と施策を講じるためであることを常に念頭に置く必要がある。

 また、環境基準が設定されていない項目や検体についての扱いも課題となる。今回の調査では、処分場敷地境界の集水池及び処分場内の溜まり水からダイオキシン類が検出されているが、平良市調査委員会調査で2.0pg-TEQ/Lが検出された集水池については、県のスタンスとして、環境水としての環境基準(1.0pg-TEQ/L)を適用せず、排水基準(10pg-TEQ/L)を適用し、「問題なし」とする見解を示したことは、県民の健康や地域の環境を守ることを一義とする行政の対応として適切とは言えない。さらに、処分場内の溜まり水については、県の調査で37pg-TEQ/Lという高濃度が検出されたにもかかわらず、適用する環境基準がないとして評価を避けたことも問題である。

(4)リスクコミュニケーションのあり方(住民対応のあり方など)
 仮に、上記のような調査のグランドデザインにそって有効な調査が行われたとしても、その結果が適切に地域住民や一般市民・県民に伝えられなければ調査の成果が得られたとは言えない。リスクコミュニケーションにとって最も重要となることは、調査を実施する公的機関(この場合には沖縄県)と市民・県民との信頼関係である。

 リスクコミュニケーションとして配慮すべき事項について以下に整理する。

@事前説明
 調査に先立って、地域住民に対して十分な説明を行う必要がある。その内容は、調査の目的、項目等、先に述べた調査の設計にそったものとなるが、とりわけ、調査のねらいが明確に伝えられることが重要である。特に、被害住民の健康調査を実施する場合には、心理的なストレスにも配慮した丁寧な対応が求められる。

A経過説明
  調査の進捗に合わせて、地域住民に対しては、経過を報告し不安の解消に努める必要がある。サンプリング期日、委託先機関名、作業の進捗状況、結果の報告予定日などについて適宜報告するとともに、住民が常にアクセスできる窓口を用意しておく。

B結果報告
  結果の報告に際しては、事前に報告日程を調整の上通知し、関係方面に周知することが重要となる。報告に際しては、データ等の関連資料を用意するとともに、できるだけ分かりやすくデータ処理を行い、住民の理解を促す努力を怠ってはならない。住民にとっては専門的な分析結果(数値データ)を示されてもその意味を容易に理解することは困難である。そのため、できるだけ即地的な情報に整理し、視覚的に理解できる情報として提供することが望ましい。

 分析結果が環境基準値を超えるなど高濃度な汚染の実態が明らかになった場合には、行政側は、住民に対して明確にその実態・事実を伝えるとともに、今後の対応方針などについても誠意ある取り組み姿勢を示す必要がある。

  しかし、説明会では、高濃度であることをあえてわかりにくくし、あいまいに伝えることが多々見られ、そのような行政の態度は、問題の解決を後らせるばかりか、さらなる汚染の拡大を招くことにもなるため、十分に留意する必要がある。

 また、住民への安心材料として安易に「絶対○○はない。」といった表現が使われるが、根拠なく「絶対」というような表現を使うべきではない。あくまでも調査によってわかったこと、依然として不明なこと、今後調査することなどをきちんと分けて、正直で真摯な報告と説明が行われるべきである。

 健康調査については、ここでは敢えて触れないが、環境調査以上に慎重な対応が求められる。個々の調査結果は、極めてプライバシー性の高い情報であることに留意しつつ、手順を踏んだ体系的な調査が行われなければならない。

5−3 県の調査結果に対するコメント

(1)大気に関して
事故直後に実施された処分場内発生ガスの測定結果(1回目)をみると、アクロレインという物質の濃度が単純にみても、No.3の地点で、作業環境基準0.1の170倍に相当する濃度17ppmとなっている。県は説明会において「問題はない」というニュアンスのコメントをしたようだが、WHO(世界保健機関)が1999年12月に公表した健康影響の観点から定められた空気質ガイドラインをみると、アクロレインは「人の眼の刺激と不快な臭い」が指標となっており、ガイドライン値は50μg/m3(マイクログラム/立米)30分(平均暴露時間)となっている。これを当てはめた場合、17ppmは、換算係数が1ppm=2.33mg/m3となっているので、17×2.33=39.61mg/m3となる。従って、ガイドライン値の50μg/m3と比較すると、39.61×1,000=39610μg/m3となり、およそ790倍となることから、きわめて高濃度のアクロレインが火災によって発生し大気中に拡散したことになる。従って、処分場内で作業をしていた人はもとより、周辺の農地で作業をしていた地域住民も、大変な影響を受けたものと思われる。

 第二回目の処分場内大気調査でも処分場内で20ppm(46,600μg/m3)のアクロレインが検出されており、継続的に発生していることが裏付けられている。この間、継続的にこうした高濃度が出ていたとすれば、きわめて重大な影響を及ぼす可能性が高いと言える。しかも、再度の火災を防ぐために散水を継続しており、周辺の海域への影響が危惧される。

 都市部におけるアクロレインの平均濃度は15μg/m3、最高濃度は32μg/m3までが測定されているというデータも報告されており、それに比べてもきわめて高い濃度であることがわかる。また、火事の場合には、mg/m3の範囲で極端に高い大気中の濃度が発見される場合もあるとされている。これらの基礎情報を踏まえた上で、アクロレイン濃度について、県が「問題ない」とするなら、その根拠は何なのか、明確に説明する必要がある。現に眼の痛みや呼吸器疾患などで入院した住民もあるなか、県の見解は説得力があるとは言えない。

 ヒトへの影響としては、急性毒性として、眼や上気道への刺激性を有し、高濃度では肺水腫、気管支炎を起こすとされている。また、化学工場などの事故の事例では、顔や眼瞼周囲の痛み、発熱、チアノーゼ、咳、呼吸障害なども報告されている。

 また、アクロレインは水圏環境生物への毒性が強いことから、水に溶けて現場周辺の海域に流出した場合には、周辺の海洋生物に影響を及ぼす可能性が高い。

 その他の芳香族炭化水素類も第1回目の調査では高濃度となっているが、いずれも揮発性であり、その後の濃度の変化をみても短期間で濃度が下がっていることから、周辺住民への著しい影響はこれらによるというより、むしろアクロレインであったものと考えられる。

関連資料の出典:既存化学物質安全性(ハザード)評価、国立衛生研究所の資料を参照

(2)土壌について
 土壌については、重金属類の溶出試験のみが実施されており、これでは十分な評価ができない。含有試験による分析を行うべきである。長期間にわたり、非常に性能の低い焼却炉によって医療廃棄物などプラスチック廃棄物の焼却がおこなわれてきたことを考えれば、周辺の土壌については、ダイオキシン類の分析を行うべきである。

(3)測定項目について
 事故直後に大気のダイオキシン調査を行っていないのに、なぜ4−5ヶ月もたってから一般環境大気の測定を行うのかまったく理解できない。発生源が停止してから4,5ヶ月経過してダイオキシンを測定することの意味、目的・ねらいを説明する必要がある。

(4)調査地点について
@海水
 公共用水域について処分場東海域(ウプカードゥマ)で海水を採取しているが、地域選定理由、ねらいが理解できない。「処分場からの影響を受け滞留していると考えられる礁地内において、岬と岩場を結ぶ範囲を1海域とし、その中央部を代表地点とした。」とあるが、今回の調査の目的は平均的なウプカードゥマの海水調査ではないなずである。にもかかわらず、平良市調査委員会が行ったように、陸から海への表流水や伏流水の流れの実態、潮の満ち引きの実態、生物棲息の実態などを調査した上で発生源からの汚染の流入を特定しやすい場所を選ぶのではなく、当該海域の中心地点で平均的な汚染状況を把握する調査を行っているに過ぎず、調査の意図が不明確である。

 リーフ内といっても、当該海域は閉鎖性水域ではないため、その中央地点の海水を採取してもまったく当該処分場からの影響を見ることはできない。

A地下水
 平良市西原ヒダ川の湧水を測定しているが、同湧水は大浦湾に注ぎこむもので、事故発生現場からはかなり離れている。「海に接していて海水の影響を受ける恐れがある」ことが選定の理由となっているが、不自然な理由であると言わざるを得ない。肝心な大浦地区の井戸水をまったく測定せずに、なぜヒダ川の湧水なのか、理解に苦しむ。

 大浦湾の海水が当該産廃処分場の事故や業務によって汚染されているとすれば、別途大変な問題だが、現時点で測定すべき地点が選定されていない点が問題である。

B土壌
 土壌については、処分場内でわずか一ヶ所しか測定されていない。今回の調査の主な目的は処分場内の汚染の実態を把握することのはずである。にもかかわらず、3ヶ所のうちの1ヶ所だけが敷地内で、しかもなぜその地点が「処分場内の汚染の状況を把握するために」最適の場所と選定できたのか、まったく理解できない。県の担当者との意見交換の場では、処分場内には火災後覆土されているため、覆土されていない部分はごく限られていたとの説明があったが、その場合でも処分場内の汚染の実態を解明するために、わずか1ヶ所の法面部分の土壌だけの分析で済むはずもない。少なくとも敷地内の利用実態を踏まえ、一定のメッシュに切って、面的な汚染の実態がわかるような調査をすべきです。また、地下の汚染が問題になっているのだからコアサンプリングなどによって、表層だけでなく、立体的な汚染の実態をつかむべきである。

(5)評価について
全体として、ダイオキシン類については基準値以下であるという結果を受けて、「安全宣言」をしようとしているように感じられる。しかし、今回の調査では処分場内の汚染の実態は依然として把握できておらず、今の段階で「安全」という認識を住民に与えるような評価を行うべきではないだろう。かえって住民の間には、不信と不安がつのるばかりである。

東側集水池については、排出基準を適用しようと言う意図がみられるが、同事業所は安定型であり、排出基準が適用できるものでないため、意図的に汚染の実態をぼかそうとする悪質な評価の方法であると思われる。

 あのような集水池では、雨水の流入、伏流水の流入、直射日光による蒸発などにより、日々濃度が変化するのは当然であり、今回はたまたま低くても、平良市調査委員会の調査では2ピコが検出されていることから考えれば、管理もされておらず、非常に危険な集水池であると判断すべきが妥当ではないか。

 他方、処分場内のたまり水から37ピコが検出されているにもかかわらず、評価基準がないから、という理由であえて評価を避け、加えて、地質が不透水層だから周辺への進出・漏出は「絶対にない」と断言し、業者に指導するなどとコメントしているが、「絶対」などと断言できる根拠がない。また、関口委員長が指摘されたように、水準面が変化しないという厳然たる実態を無視して漏出しないと言える理由がない。依然としてボーリング調査もおこなっていない段階で、不透水層がどこまで達しているか、また過去に処分場として掘った穴がどこまで達しているかなど分かるはずもない。

 業者への指導で、汚水の浸出が食い止められるはずもない。現に周辺や海域に浸出している。具体的な指導の内容を明らかにすべきである。

 なお、ダイオキシン類の測定分析結果については、最終的な毒性等量値だけでなく、異性体、同族体データ、ガスクロマトグラフ・チャートなど詳細データ、精度管理データも含めて全データの提供を求める必要がある。