訴  状


2003年4月18日
那覇地方裁判所平良支部 御中

原告ら代理人
弁 護 士  梶  山  正  三

転載厳禁


損害賠償請求事件
訴訟物の価額  金6347万円
手数料額  金27万1600円

当事者の表示   別紙当事者目録記載のとおり

請求の趣旨

1 被告らは、連帯して、各原告に対し、別紙損害賠償請求額一覧の各原告合計額欄記載の各金員及びそれに対する平成13年11月28日から、それぞれ支払済みまで、年5%の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

請求の原因

1 当事者

原告ら

 原告らは、別紙産業廃棄物処分場目録記載の産業廃棄物処分場(以下「本件処分場」という)の北西約1.3kmに存する大浦部落の住民である。原告らの農地の一部は、本件処分場により近いところに存在し、本件処分場と境を接して黍畑を所有している者もある。

 原告らは、被告崎山健成(以下「被告崎山」という)の本件処分場における産業廃棄物の焼却、破砕、野焼き、埋立処分などの操業(違法操業も含む。以下同じ)により、常々、悪臭、排ガス・ばいじん等による農作業の困難、住居の中にまで入り込む排煙などにより被害を受けてきたものであるが、さらに後述の火災事故により居宅からの一時避難を余儀なくされて、それによって重篤な健康被害を受けた者もあり、その後自宅に帰った後も火災後も残る煙害などによって、農作業などにも支障をきたして来た者である。

被告ら

@ 沖縄県
 被告沖縄県は、県民たる原告らの生活環境の保全を図り、その汚染等の被害を未然に防止し、あるいは、その被害の速やかな回復等に努める義務あるものである。そして、国家賠償法に基づき、沖縄県知事がなした原告らに対する不法行為につき、損害賠償の責を負うものである。

 なお、沖縄県知事は、被告崎山に産業廃棄物処分業の許可を付与し、あるいはそれを取消す等の権限のほか、廃棄物の処理および清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という)に基づいて、その適正な業務の遂行を指導監督する権限、及びそのための行政命令・立入調査等の権限を有するものであるが、後述のとおり、被告崎山の違法行為を助長、黙認し、後述の火災に関しても、被告埼山とともに共同不法行為の責任を負うものである。

A 崎山健成
 被告崎山は、埼山環境整備開発の屋号にて平良市字西原田原1837番7ほかの土地において、産業廃棄物の収集運搬及び処分等を業として行うものである。本件処分場(平良市字西原田原1837番7ほか)においては、産業廃棄物の埋立、焼却及び破砕等を業とするものであるが、かねてから、廃棄物処理法に定められた処理以外の違法処理をも繰り返しており、本件処分場の内外に廃棄物を埋立又は投棄し、原告らの生活環境を含む周辺地域、海浜、リーフなどに有害物質等を拡散させるべき行為を繰り返してきた。そして、さらに後述の火災事故を惹起させ、原告らに後述のとおり、健康被害を含む重大な苦痛を与え、かつ、住居からの退去を余儀なくさせ、その後の農作業等にも支障を与えるなど、経済的及び精神的にも多大な損害を与えた者である。

2 火災の発生
 被告崎山は、その業務の一環として、本件処分場内において、安定型廃棄物処分場の運営管理を行っている。同処分場には廃プラスチック、廃アスファルトなど可燃性のものが多量に搬入されているので、同処分場における火気の管理には万全を期し、万一にも火災等を惹起しないように十分な注意を払うべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、同処分場付近において漫然と火気を使用するなどして(原告らは常々出火場所付近での被告崎山の従業員が「野焼き」をしているのを目撃している)2001年11月28日午後0時25分頃、同処分場において火災を発生せしめ、それから発生する有害ガス、ばいじん等により、原告らに対し、悪性気管支炎等の重篤な傷害を負わせた。

 原告らの中には、火災直後に大浦の集落を襲った煙・ばいじんなどにより、激しい頭痛、咳き込み、眼や喉の痛み、呼吸困難などを訴える者が続出し、平良市の避難勧告で大半が一時避難したものの、7名が緊急入院した。被告沖縄県は、緊急の消火措置として火災現場にトラック700台余の土を被せたため、火は内部で長期間にわたって燻り続け、その排煙が又、大浦の集落を長期間にわたって襲い続けたので、事態をかえって悪化させた。火災後入退院を繰り返していた者3名が死亡し、ダチョウなども死亡、農作業にも深刻な影響を及ぼしてきた。体中に発疹を生じ、痒みのため夜も寝られない日々を過ごす者も居た。

3 明るみに出た数々の違法操業

 被告崎山は本件処分場内で上記火災事故の以前から、違法行為を繰り返してきた。沖縄県知事は、当該違法行為を知りながら、それを黙認し、あるいはそれを助長してきた。それらの違法行為を、原告らは従来全く知らなかったわけではない。しかし、前記火災事故は、被告崎山の違法行為の全貌を白日のもとに曝すことになった。火災事故をきっかけに沖縄県(以下単に「県」ということがある)や平良市の調査が行なわれ、その過程で、沖縄県知事によるでたらめな許認可行政、本件処分場の外にまで及ぶ不法投棄、違法処理などが明らかになり、周辺環境の調査などから本件処分場内には多量の有害物質が蓄積し、それが周辺の土壌、地下水、海浜、リーフ内の汚染をもたらす高度の蓋然性のあることも明らかになった。

 法行為自体は、ずっと以前から繰り返されてきたのである。その内容をやや具体的に述べる。

@ 安定型処分場の維持管理基準違反
 本件処分場内には安定型処分場が設置されている。廃棄物処理法施行令6条及び共同命令(昭和52年総理府厚生省令第1号、その後数回にわたり改正)により、「周囲に囲いの設置」「廃棄物が風などにより飛散しない構造」などの構造基準とそのような構造に対応した「維持管理基準」が定められている。
しかし、上記「安定型処分場」には、囲いらしいものは公道側に一部あるのみで、風によるゴミの飛散を防ぐことはできない。南東側の斜面(浜辺に下る里道に面している)は、法面勾配が確保されず、ゴミが無造作に高々と積み上げられ、金網の間からから廃アスファルトがはみ出している悲惨な状況で、「ゴミが常に転げ落ちている」という状況である。

 埋立時に最大径15cm以下に廃棄物を破砕し、空隙のないように埋め立てなけれぱならない(廃棄物処理法施行令6条)が、これも全く守られていない。

A 処分場外への不法投棄
 上記「南東側の里道」は、転げ落ちたゴミだけでなく、意図的に「汚泥」を敷いて「舗装」されており、多量の不法投棄がなされた痕跡が明らかである。なお、被告崎山は、本件処分場近辺以外の場所でも廃棄物の不法投棄を行っている。不法投棄は廃棄物処理法16条違反として、重い刑事罰が定められている重大な違法行為である。

 安定型処分場として指定された区域外へのバッテリーの放置、焼却灰の放置も同様に「不法投棄」である(自己の事業所内又は所有地内への違法投棄も同法16条違反に該当することは通説・判例である)。

B 違法な埋立
 1997年の廃棄物処理法施行令(以下単に「施行令」又は「令」ということがある)の改正により、安定型廃棄物の範囲が変わり、それまで安定型処分場への搬入が許されていた「鉛、鉛合金を含む廃棄物、車・バイク等の破砕物、廃石膏ボード、ハンダ付け等を施した電気部品、有機物の付着したプラスチヅク容器など」は安定型処分場への埋立が禁止された。しかし、本件処分場には、同施行令の施行後も、これらのものが大量に搬入されている。

C 野焼き
 本件処分場内で「野焼き」が繰り返されてきたことは既に述べたとおりである。「野焼き」に直罰規定ができたのは、廃棄物処理法の2000年の改正からであるが、それ以前も「野焼き」は違法行為であった。ただ、直罰規定がなく、「維持管理基準違反」であり、行政庁による改善命令とそれに対する違反を経ないと罰則の適用がなかっただけである。

D 埋立量・埋立面積の怪
 この安定型処分場は、埋立面積12974u、埋立容量44790uとして県知事の許可を得ている。そうすると、平均埋立高さは3.45mであるが、現実には、処分場外側からみた廃棄物の山は、GL(グラウンドレベル)を少なくとも10mは超えている。さらに、埋立当初の状態から知っている原告らの目撃事実では、GLの下約30m以上も埋め立てられているという。

 前記火災事故をきっかけに設置された平良市の「平良市産業廃棄物処理場火災に関する調査委員会」(以下単に「平良市調査委員会」ということがある)によると、「安定型処分場」の範囲を実測すると22000uであった。
したがって、埋立地として許可されていない土地に廃棄物が埋め立てられ、さらに許可された埋立容量をはるかに超えた大量のゴミが埋め立てられていたことになる。

 これらは、不法投棄と無許可埋立の両者に該当する重大な違法行為といえよう。
さらに奇怪な事実がある。本件処分場は当初「安定型」の埋立地であったが、1990年9月12目「変更届」(当時は、処分場の設置・変更は「届出制」であり、「許可制」ではなかった)により、900uだけが「管理型」処分場となり、埋立品目として燃え殻等が追加された。しかし、「管理型」に必要なしゃ水工、浸出水集水管、地下水集水管、汚水処理施設などは一切設置されず、この「変更届」は間違いなく、県知事により違法に受理・黙認されたものである(当時の制度では、届出後60日以内ならば、県知事による計画の変更・廃止命令が可能であった)。さらに不可解なことは、この「管理型」は5年後には姿を消し(この時には「許可制」に変わっていた)、その後は前記面積による安定型処分場が公的な許可内容となっている。

 つまり、「管理型」にしか埋立できない廃棄物が、少なくとも5年間は、沖縄県知事の「協カと黙認」のもとにおおっぴらに本件処分場に埋め立てられ、しかも、「燃え殻」のような有害性の高い廃棄物が、それを遮断する一切の構造のない埋立地に搬入され続けたことになる。

 これほどあからさまな違法行為が、しかも、県行政の「協力」のもとに遂行されてきたことは、実に驚くべきことであり、県行政の県民に対する背信行為の最たるものといえよう。

E 「積み替え・保管」を偽装した違法処理
 廃棄物の「積み替え・保管」は廃棄物処理法のうえでは、独立した業の態様として位置づけられておらず、「収集運搬業」の業態の一部として、あるいは「処分業」の業態の一部として、「必然的な行為」として捉えられている。つまり、「収集運搬」や「処分」をするに際して、一時的に「保管」したり、「積み替え」たりすることは、当然あり得るという想定なのである。

 間題は、「積み替え」とか「一時保管」の目的を詐称して、廃棄物を長期間にわたって「保管」したり、「積み替え」目的と称して、大量の廃棄物を「積替え所」に大量に集積する例が後を絶たないことである。ゴミを大量に集め、長期間保管すれば(数年間〜10年以上にわたる例もある)、それは事実上の「最終処分」と同様であり、しかも、最終処分場としての周辺環境の悪化に対処する施設は一切有しないから、周辺に重大な環境悪化をもたらすことになる。

 このように「保管・積替え」に名を借りた脱法行為は、全国各地に蔓延している「違法処理」の典型であり、それが周辺環境に与える悪影響も絶大なものがある。被告崎山は、「収集運搬業」として認められている特別管理廃棄物(有害性・感染性・爆発性のあるもので、法で指定されたもの)の収集運搬の許可を有することから、これらを「積替え・保管」の名目で、本件処分場内に長期間にわたり野ざらしにする行為を繰り返してきた。これらは、「積替え・保管基準違反」であり、事実上の「無許可処分」ともいえよう。

F 焼却炉、破砕機の操業など
 原告らによると、被告の使用していた産廃焼却炉の操業状況は、実にひどいものであった。構造図面や設計書を見ても、ばいじん等の除去施設は、形だけのものであり、煙突が極度に低い上に、排ガス流を妨げる「傘」が煙突出口に付いているという不可解な構造をしており、排ガスを高濃度のまま周辺に撤き散らすようになっている。しかも、バッチ式のうえ、維持管理もほとんどなされてこなかった。現在は休止しているが、この排ガスには原告らをはじめ、周辺住民はたいへん苦しめられてきた。被告崎山は、この焼却炉から排出された焼却灰等を違法に野曝しにしてきており、現在でもその様な状況が継続して見られる。

 破砕機の設置場所は、埋立地や焼却炉とは少し離れた場所にある。コンクリートガラ、アスファルト、ガラスくずなどが破砕の対象である。破砕機からは微細な粉塵が多量に排出され、悪臭・騒音も相当にひどいのが通例なので、通常は建屋内で行い、粉塵や騒音等の対策を施す(完壁な対策は不可能だが)ものであるが、そのような対策は一切採られず、周辺に粉塵と騒音を撤き散らしてきた。破砕機の粉塵は眼に見えないほど微細なものも多く含まれ、このような微粒子は遠くまで飛散するので、それによる周辺住民の健康への悪影響も懸念される。

4 被告崎山の操業による原告らの被害

 火災事故に起因する被害

(本件訴訟における講求は限定された一部請求である)
前述の火災事故(以下「本件火災事故」という)による原告らの被害は多岐に渡り、また、現時点では確定していない。

 上記「現時点では確定していない」の意味は二つあり、一つは、「火災事故の周辺環境への影響がまだ継続しており、その影響がなくなる時期は当面特定できない」ということである。他の一つは、現時点までに受けた健康被害に関しても、健康状態が十分に回復しておらず、治療が継続しているので、その「被害額は、過去に受けた健康上の影響に関しても今後拡大する可能性がある」ということである。

 そこで、本件訴訟では、原告らの被害を次の範囲に限定して主張し、それに漏れた損害に関しては、さらに別途の法的手続により(本件訴訟の進行状況によっては、「請求の追加」もあり得る)請求することとした。このように「請求の範囲」を限定したのは、上述のようにまだ、未確定ないし未発生の損害もあり、網羅的に俎上に乗せると、訴訟が長期化せざるを得ないが、それは、原告らとしても耐え難いところだからである。

 (本件訴訟における請求の内容)
上述の事情から、本件訴訟における原告らの請求の内容は具体的には次のとおりである。

@ 本件火災による一時避難、火災発生時の煙害などに関する精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料
A 本件火災による農作業・家事等において支障が生じたことによる損害
B 避難生活後も長期間にわたって燻り続ける煙害、悪臭等により、窓を閉め切った生活を強いられ、その間気管支・喉等の不調、発疹、かゆみ等の症状に悩まされ、さらには、健康を害して、通院や投薬を受けた。ことなどによる経済的被害、精神的苦痛に関する損害

 別表「原告損害額一覧」は、上記項目別に各原告の損害額及び各原告の損害額の合計額を記載したものである。

 上記@〜Bについて、若干説明する。

 まず@についてであるが、2001年11月28日の本件火災による猛煙により、平良市の一時避難勧告が原告ら及びその家族に対して出され、それに応じて原告らは避難したわけであるが、家の中には一寸先も見えぬほどに煙に包まれた住居もあり、家族とともに住居を追われ、不安な数日を過ごしたことに対する、精神的・肉体的苦痛は、言い知れぬものがある。このような苦痛は、それ自体本来金銭で慰謝できる性格のものではないが、原告らとしての最少限度の請求額として、避難した日と、その翌日の2日間の慰謝料として少なくとも金10万円を下ることはない。

Aについては、前記「火災」は、その後の被告沖縄県による「大量覆土」により、長期間燻り続け覆土の下での酸素不足状態における燃焼だったため、ばいじんもひどく、原告らのうち、農作業に従事するものは、呼吸困難、激しい咳き込み、喘息の発作などによって、仕事に従事できなかった。また、農作業以外の業務や、家事などについても、多かれ、少なかれ、多くの原告支障を来たしたのである。

 それらの「休業損害」に相当するのが、この部分である。一時避難の日々はもちろん、原告らは農作業、職場での勤務、などのほか、家事なども、「やりたくても、できない」という状況であった。折りしも、黍の収穫に向けて、剥葉作業が始まる時期に当たる。言語に絶する苦痛の中で、原告らは黍の収穫などの農作業等に従事した。このような作業困難な状況は、火災の翌年5月頃までは継続した。この間の農作業等困難な状況における損害額は、原則として、次のとおり算定した。

 @ 損害算定の期間は、2001年11月30日〜2002年3月31日の122日間

 A 黍等の農作業に関しては、男の場合は、6000円/日(通常の黍作業アルバイト日当の半分)?100日分、女の場合は4000円/日(通常の黍作業アルバイト日当の半分)?100日分とした。作業の支障の程度を考慮して、通常の日当を半分に見積もり、かつ、作業日数をも考慮したものである。なお、もちろん、この期間だけで、作業への支障がなくなったわけではない。

 B 家事労働に関しては、上記@の期間を基礎とし、家事労働も必ずしも毎日やるとは限らないこと、支障の程度も黍作業ほどではないと考えられることから、100日間で10万円とした。

 なお、上記と異なる算定方法を用いた場合については、後述のとおり、別表「原告損害額の算定事情一覧」にその事情及び算定方法を記載した。

Bについてであるが、前述のとおり、原告らは、2日間の避難生活後も長期間にわたって燻り続ける煙害、悪臭等により、窓を閉め切った生活を強いられ、その間気管支・喉等の不調、発疹、かゆみ等の症状に悩まされ、さらには、健康を害して、通院や投薬を受けた。また、洗濯物の汚れ、家畜の死などの損害も受けた。このような生活妨害のほか、外出も思うようにできない生活などによる精神的苦痛も大きい。

 このような、火災後の長期間にわたる有形・無形の損害のうち、因果関係が必ずしも明確でないものもあり、損害額算定の困難なものもあるが、それらを包括的に評価して、最低限の「慰謝料」として算定したものである。もともと「慰謝料」というのは、経済的な損害であっても、損害額や範囲が不明確な部分を公平の見地から調整する役割を果たすという機能もあるのだから、上記長期間の「精神的・経済的損害」を包括的に評価することも認められよう。その額としては、余りに少ないかも知れないが、30万円とした。

各原告の個別事情について

 上記は、各原告の損害額の標準的な算定方法を示したものであるが、当然ながら、原告らによっては、上記算定方法が当てはまらない場合があるので、そのような場合に関しては、その事情と算定方法とを別表「原告損害額の算定事情一覧」に示した。

5 被告らの責任原因

 既に述べたように、本件は、業務上の過失により、原告らに前記各損害を与えた被告崎山の不法行為責任を問うものであるが、本件火災は、同被告の単なる一過性の業務上過失にとどまらず、普段からの野焼き、多量の廃棄物の野積みなどの違法行為の繰り返しが、火災の発生を招き、かつ、その被害を拡大したという関係にある。

 しかして、沖縄県知事は、廃棄物処理法による同被告の業務を監督する権限の行使を怠って、同被告の日常的な違法行為を看過し、さらには、意図的に見逃すことによって、違法行為の拡大を助長したという関係にあるから、被告崎山と共同して不法行為責任を問われるべき立場にある。しかし、同知事の責任は、公務員としての業務上のものであるから、国家賠償法第1条第1項により、被告沖縄県にその責任を問うものである。

6 残された課題
 既に述べたように、本件訴訟は、被告崎山の操業に起因する損害の一部であって、火災による損害に限っても、その一部である。原告らの健康被害等の苦痛は多様であるが、極めて深刻な例もあり、それによる死亡が疑われる事例もあり、そうでなくても、損害は多大になった事例もある。

また、地元のまとめ役である自治会長などは、本件火災を契機として、関係行政庁や被告崎山らとの折衝などに忙殺される生活が続き、職をやめざるを得ない状況になった者もいる。

 本件訴訟は、上述のような損害や、個別の健康被害に関しては、因果関係の立証や損害の範囲に関する主張立証に相当の日時を要することに鑑み、原則として立証が容易でない部分を除いた、「火災に起因する限定された損害」に絞って請求の対象としたものである。

  したがって、今後、上記の「残された損害」の部分に関して、さらなる解決を求めて行くことが、原告らの課題である。

7 結 語
 以上の次第で、原告らは、不法行為に対する損害賠償請求権(被告沖縄県に対しては、さらに国家賠償法1条1項)に基づき、被告らに対して、請求の趣旨第1項記載の金員の支払を求めるとともに、それに対する本件火災の当日から民事法定利率年5%の割合による遅延損害金の支払を求めるため、本訴を提起したものである。

証 拠 方 法

1 甲第1号証                 平良市調査委員会報告書
その他、口頭弁論期日において、適宜提出する。

添 付 書 類

1 訴訟委任状 94通
産業廃棄物処分場目録

所   在:平良市字西原田原1837番7ほか
面   積:22434平方メートル
位   置:別紙図面において、緑色蛍光ペンで示した部分