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守大助さんとの面会より

藤沢 顕卯

2007年1月22日


 6年前に私の地元である仙台の私立病院で起きた事件の裁判について呼びかけをさせていただきます。

 2001年1月に、仙台の北陵クリニックの准看護師だった守大助さんが、1人殺人、4人殺人未遂の容疑で逮捕・起訴されました。

 この事件は、当初守さんが犯行を認めたということで、准看護師の立場を利用し、仕事の不満を解消するために、5人の患者の点滴に筋弛緩剤を混入して殺害しようとした凶悪な犯罪として、当時のメディアを騒がせました。

 しかし守さんは逮捕3日後に否認に転じ、以降一貫して無実の主張を貫いています。

 その後、一審(仙台地裁)では前面無罪を主張する弁護側と検察側が対立し、激しい争いになりましたが、2004年3月に無期懲役の判決がなされました。

 二審(仙台高裁)ではたった4回の公判で、弁護側の証人申請、証拠開示請求、(筋弛緩剤の)標品鑑定請求が却下され被告人質問も認められないまま結審し、2006年3月22日に控訴棄却の判決となりました。

 弁護側は即日上告し、今に至っています。

 一審判決前から、守さんと弁護団長の阿部泰雄弁護士共著の「僕はやってない!−仙台筋弛緩剤点滴混入事件 守大助拘留日記」(明石書店)を読んで冤罪の可能性を疑い、守さんとも何度か手紙でやり取りしていた私は、去年の10月に2度、守大助さんとの面会に仙台拘置所を訪れました。ご両親とも2度話し合いを行ってきました。

 結論を言いますと、私は、本人との2度の面会、及び彼との手紙のやりとり、ご両親との話し合い、支援する組織との話し合い、検察の論告書、弁護側弁論、裁判所の判決文、等々を通して、守大助さんの無実をあらためて確信しました。

 守さんは警察・検察や逮捕当時のマスコミが描いたような、上司を困らせたり、自己顕示欲の解消などの目的で人を殺そうとしたり、傷つけたりしようとするような卑劣で凶悪な殺人鬼などでは全くありません。

 むしろ人としての素朴なやさしさを持った真面目な好青年です。

 准看護師という職業に誇りを持って働いてきた青年です。

 上司からの評判も良かったのです。

 ちょっとお人好しで世間知らずのようなところがあり、それを(結果的には)警察、検察側に利用されてしまっていると私には思えます。彼の恋人がいろんなメディアで語っている彼の印象がそのまま当たっていると思います。

 彼のご両親も全く同様に彼の人柄を暗示しています。彼のご両親は宮城県の仙台から少し離れた田舎に住んでいて、お父さんは宮城県警の警察官(既に定年退職)という職業に似つかわしくないほどおっとりした優しい方、お母さんは素朴で品のある息子思い。どちらもどこにでもいる、田舎の良心的、標準的な夫婦で、息子の教育に失敗したなどという影は少しも感じられません。

 また、大助さんと同年代の男子として、私は息子としてこのご両親を泣かすようなことは絶対できないと直感します。

 この事件、この裁判は全くの茶番です。しかしこれ以上ないくらいに恐ろしい茶番です。無実の青年が、1人の殺人及び4人の殺人未遂で起訴され、無期懲役を言い渡され、まさに最高裁で刑が確定されかねない情勢なのです。

 無実の青年が、身に覚えの無い罪で6年も不便な拘置所生活を強いられているのです。(座る位置、向きを勝手に変えられない、勝手に横になることも許されない、冷暖房が満足に効いていない、入浴は週2〜3回で1回10〜15分、運動は入浴のない日に檻のようなところで1日30分、手紙の発信は1日2通まで、内容は全部チェックされる、看守から差別的発言を受ける、食べ物の差し入れは許されない、等々。)

 警察、検察は一体、何を考えているのか!裁判所は一体どこを見ているのか!

 人としての常識があれば彼がやっていないことなどすぐに分るのに、不確実な状況証拠と強制と誘導による自白のみによって、こんな茶番劇が行われるとは!

これでは誰もがいつでも簡単に殺人者にされてしまうでしょう。全くナンセンス極まりないです。

 検察の論告や裁判所の判決はいい加減な決め付けや悪意の解釈、証言の恣意的な取捨選択等々に満ちています。ぜひ一度ご覧になっていただきたいと思います。

 また警察の取調べが如何にずさんで人権を無視したものかについては、ぜひ守さんと阿部弁護士共著の以下の本をご覧ください。

 「僕はやってない!−仙台筋弛緩剤点滴混入事件 守大助拘留日記」
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-ISBN=4750314404
またぜひ仙台拘置所の守さんと手紙の交換をされてみてください。

 以下は参考まで、大助さんと面会したときの様子です。

 大助さんは逮捕当時29歳で現在は35歳(私とほぼ同年である)。

 きびきびとした体の動きで、積極的な雰囲気を感じさせる。顔はまだ若者の風を感じさせるが、さすがに6年間の拘置所の厳しい暮しのせいか、少々苦労の跡のようなものが見える。

 話すときは落ち着いた様子で笑顔を絶やさず、多少地方訛りのある喋りではきはきと話す。話を聞くときはじっとこちらの目を真っ直ぐ見て話を聞く。話は雄弁ではないが、素朴で飾ったところが無く、人当たりの良さを感じさせる。どことなくやさしさと人なつっこさと甘えた感じの雰囲気があり、女性にもてるという噂の理由が分かる。はっきり言ってどこにでもいそうな、普通の気さくな青年、それもどちらかというと好青年である

 。ひどく屈折した心情を抱えていたり、嘘や隠し事をしているような様子は全く見えず、どちらかと言えば単純、素朴、さわやかという印象である。必要以上に人の悪口を言うことがなく、私の身を逆に案じてくれたりした。

 二度目の面会時に本件事件に関わっていないことをあらためて確認したところ、気負った様子なく、ただし力強く、真っ直ぐの眼差しで「それは俺を信用してもらっていい。」と即答した。そのとき私ははじめて彼の瞳の奥にあるある彼という人格の本質のようなものに触れることができたと感じ、彼の無実を確信した。