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家電業界の回し者に成り下がった
環境省と安倍総理


池田こみち


2007年6月5日


無断転載禁


 明日からドイツ北東部の小さな街ハイリゲンダムでG8サミットが開幕する。今回は地球温暖化問題がメインテーマとなり、各国とも主導権をとるべく、前哨戦に余念がない。

 安倍総理はと言えば、参議院選を控えてのリップサービスもあり、無責任発言の連発である。「環境の日」の今日6月5日の朝刊各紙には、安倍総理夫妻による全面広告が掲載された。「電球から、日本を明るくしよう」と電球を交換する総理を笑顔で見守る夫人。

 「今更、安倍総理に言われるまでもない。それよりも全面広告にいくら税金をつかったのか」との批判続出。また、今日、07年版「環境・循環型社会白書」を閣議決定した。

 その中では、「太陽発電と省エネ型家電の普及で温暖化対策を」という相変わらずの技術依存型の政策がメインとなっているようだ。総理の広告と言い、白書の内容といい、家電業界の回し者となったといわれても仕方がない。

 さて、昨年まで、環境白書と循環型社会白書は別々に作成されてきたが、「温暖化とごみの問題は表裏一体」(環境省)として今回から1冊にまとめられることになったとのこと。環境省が言うまでもなく、温暖化とごみ問題は密接に関連している。

 しかし、国が打ち出す政策は常に矛盾に満ちている。現に、省エネ家電に切り替えた場合、膨大な量の廃家電はどうするのか。「循環型社会の形成」が言われて久しいが、実態はそれとは裏腹に、莫大な資源を焼却・埋立し続け、煙と灰にして環境を汚染し続けているではないか。

 廃棄物発電をサーマルリサイクルと称して推奨し、東京では今まで分別してきた廃プラスチックを平成20年度から全面焼却へと切り替える。4月16日に環境省が発表した一般廃棄物に関するデータから実態を見てみたい。

 廃プラを焼却することにより、「拡大生産者責任」を問わないまま、出続ける廃プラを消費者に分けさせ、自治体で処理するという体制が確立し、その影響は財政リスク、環境リスクともに地域住民が負担することになる。

● ごみの排出量は15年度から大幅な減少傾向が続いている?どこが!


 注)上記の総排出量には「集団回収」分も含まれている。

・ この十年、それほどごみの排出量に変化はなく、5千万トン前後で推移している。

・ 1人1日当たりの排出量も1kgを切っていない。

●家庭系のごみはわずかに減少傾向だが、事業系のごみは逆に増加傾向。3Rが叫ばれて久しいが、笛吹けど踊らず?焼却炉という受け皿がある限りごみは減らない。



●集めたごみは圧倒的に焼却(全国平均焼却率:77%)処理している。その一方で資源化は進んでいないことが明らかに。



・さすがに、直接埋め立てる量は減っているが、焼却依存体質はあいかわらず。

 「燃えるか」「燃えないか」という分け方では、膨大な資源が焼却され、埋め立てられていく。

● リサイクル率は着実に増加?どこが!


注)リサイクル率は、(直接資源化量+中間処理後再生利用量+集団回収量)を(ごみ総処理量+集団回収量)で割って100を掛けて求める。つまり、集めたごみからどれだけ資源をリサイクルに回したか、ということだが、集団回収はそもそも最初から資源として集めているので、この式から分母と分子の両方にある「集団回収」の分を予め除いて計算すると、リサイクル率は14%に過ぎないのである。

●資源化量は10年で倍にも達していない。



・ 「燃えるごみ」「燃えないごみ」という区分では資源が救われない。「資源化できるか」「資源化できないか」でごみを区分することが大切。

●焼却炉を7年で500以上減らしても・・・・



●処理能力は7年で2%減っただけ。



・ 焼却炉、ガス化溶融炉は大型化し、余力があるので、廃プラも燃やしたい。産廃もいらっしゃい。

・ サーマルリサイクルといえば格好がいいが、ごみ発電は課題がいっぱい。ごみは減らしてなんぼであって、発電のためにごみを必要とするシステムは矛盾に満ちている。

・ しかも効率的な発電ができる施設はごくわずか、発電効率は均10%程度に過ぎないのだ。

・ 廃棄物は新エネルギーではない。

●処分場の数は10年で500以上少なくなり、残余年数は少しずつ延びているが・・・



・ 新規立地は地元での合意が得られず極めて困難。だからといって、埋め立て地の延命のために焼却強化、溶融推奨は「循環型社会づくり」にあきらかに逆行する。

● ごみ処理事業経費は総額2兆円、1人当たり15000円となっている。



・ピーク時(平成13年度)には総額3兆円に迫り、1人当たり2万円を超えていたが、今後、ごみ発電を本格化していくためには再び膨大な設備投資が必要になり、国庫補助、交付金依存のごみ処理が続くことになる。

 国の政策ではごみを減らしたいのか、燃やして発電したいのか、矛盾に満ちている。

出典:一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成17年度の実績について) 環境省 平成19年4月16日
http://www.env.go.jp/recycle/waste/ippan/ippan_h17.pdf