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世界の水が危ない


池田こみち
環境総合研究所副所長


掲載日:2006年8月19日


 連日の猛暑でうんざりの毎日、台風や豪雨続きで、雨にもうんざりと言った日本列島だが、世界的に見ると、「水」の問題は極めて深刻な状態となっている。

 今年も8月20日日曜日から26日までの一週間、「世界水週間」としてストックホルムで国際会議が開かれる。浴衣を着込んでの「打ち水」も結構だが、この機会に、人類が直面する水問題に少し目を向けてみたい。

 地球温暖化の影響もあり、集中豪雨による被害と砂漠化による被害が同時並行的に進行している。特に隣国中国では、干ばつにより1800万人余に影響がでており、農作物や家畜の被害も著しい。

 同時に、中国・朝鮮半島・日本など東アジア諸国はいずれも台風や集中豪雨による水害に見舞われ、多くの人的、物的被害を出している。

 (BBC:Chinese drought affects millions,  http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/5261918.stm

 そうした「自然現象」に拍車を掛けているのが、まさに我々先進国そして、BRICSなど中進国の経済活動であり、市民生活そのものなのである。進まぬ温暖化対策が「水」という人類の生存にとって欠くことのできない資源の枯渇を加速化させているのである。

 大量に水を使用する先進国では、水道のインフラが古くなっていることもあり、かなりの無駄を出している。

 ちなみに、WWFによれば、ロンドンでは、1日にオリンピックプール300杯分の水が、老朽化した水道設備のためにただただ失われている(漏れている)というから驚きである(BBCニュース,Water shortage'a global problem',By Imogen Foulkes, 2006.08.16 より)。

 そういえば、先日、東京でも土木工事の不手際で、水道管を損傷し、大量の水道水が無駄に道路に吸収された事件が起きたことは記憶に新しい。

 それよりも、先進国が途上国に安い製品の製造を求めれば求めるほど、無駄に水が使用され、本来途上国の人々が基本的な生活に使うべき水資源を搾取しているとことが指摘されており、中でも日本は水搾取大国と言って良い。

 今年も世界水週間には世界中から多くの専門家、政治家、NGOなどが集まって人類共通の水資源問題について議論されるが、主なテーマとして次のようなものが挙げられている。

                  
                   主なテーマ

・ヨルダン川やチグリスユーフラテス川流域の水と文化、経済などに焦点をあて中東の水問題についての特別セッション

・国連による水資源管理の危機:人類の生存と水資源、飲料水と衛生、水と性など・水資源の供給国と需要国との連携:水資源開発のあり方など

・水資源を巡る異なる専門分野、専門家(個人や団体)の相互連携のあり方

・これまでのストックホルム水賞(Stockholm Water Prize Laureates Seminar)受賞者の記念講演

・水に係わる各種災害への対策−いかにして適切な法整備により水を蓄え、洪水や干ばつに対処するか。

・増加する人口をどう支えるか:農業分野における総合的な水管理アセスメント について

・世界の貧困対策と水資源管理の適切なガバナンスのあり方について−河川流域の総合的な管理のあり方 など

・国境を越えた水資源管理のあり方−広域的かつトランスバウンダリーな水資源の適切な管理のためのツールとは



 まさに、世界はグローバル化、水についても、世界の人口の45%が国境の枠を超えた複合的な水域の恩恵のもとで生活している。こうした地球規模の水資源を巡る深刻な課題をこの機会にじっくりと考えて、少しでも日頃の水の使い方、消費生活のあり方などにフィードバックする機会としたいものである。

会議の詳細は以下を参照のこと。

 http://www.worldwaterweek.org/