エントランスへはここをクリック!  

隠蔽される鉛流出の実態
資源循環に名を借りた
巨大廃棄物処理施設の闇


池田こみち

掲載日:2007年1月16日


 2006年6月に完成した「彩の国資源循環工場」(埼玉県寄居町)は、先に本コラムでも紹介し(http://eritokyo.jp/independent/ikeda-col0131.html)この種の「循環型」工場が果たしてどれほどのものなのか、周辺への環境も含めて今後監視が必要であることを指摘したところである。

 案の定と言うべきか、今年2007年に入って、速くもほころびが出ていることが明らかとなったのである。彩の国資源循環工場の中心施設でありオリックス資源循環株式会社のガス化溶融炉施設から、創業以来、雨水に鉛が流出し続けていたことが発覚し、しかもそれが県によって公表もされず、事実上隠蔽されてきたことも明らかになったのである。詳細については、この大規模廃棄物処理施設コンプレックスを監視する地域のNGO「彩の国資源循環工場と環境を考える広場の最新ニュースとコラムに掲載されているので参照されたい。

 さっそく埼玉県の公式ホームページを探したがこの関連の情報はいっさい掲載されていなかった。そこで、環境部資源循環推進課資源循環工場整備担当に電話で問い合わせを行ってみたところ、驚くことに、県としてまったくこの件に関して原因や経過、県としての責任や対応の仕方などについて公表していないことが明らかになったのである。

 問い合わせに対して、担当者は、ホームページに掲載の「平成18年度調査結果(速報)」を見るように誘導したのである。

 これを見ると確かに、18/8/9測定の雨水について、鉛の濃度が0.27mg/Lとなっており、評価の基準である環境基準の0.1mg/Lを大きく上回っていることがわかるが、測定値のみが掲載されているだけで評価やコメントはなく、一般の県民が分かるはずもない。また、同じ資料で18/10/24の測定値をみると、雨水のダイオキシン類が1.2pg-TEQ/Lとなっており、これも環境基準の1pg-TEQ/Lを超えている。

 彩の国資源循環工場は、公共関与による全国初めての総合的「資源循環型モデル施設」をうたい文句に華々しくデビューした施設であり、莫大な税金も投じられている。また、建設に先立ってはもっともらしい「戦略的環境アセスメント」も実施され、安全・安心が強調されてきたはずだった。地元とは協定も結んでいる。

 地元に対しては下記の通り、ようやく県から説明が行われるようだが、地元への説明だけで済まされる問題ではない。

このたびの埼玉県PFI事業サーマルリサイクルからの鉛流出の詳細を埼玉県から直接説明を聞きに行きませんか?

■日時 1月18日(木)午前10時〜

■場所 埼玉県環境整備センター 事務所
    埼玉県大里郡寄居町大字三ヶ山368

■お問合せ 彩の国資源循環工場と環境を考えるひろば
     事務局 TEL/FAX 048-581-5843

彩の国資源循環工場内の埼玉県PFI事業サーマルリサイクル処理施設 (オリックス資源循環(株)ガス化溶融炉)から雨水排水溝を通り塩沢川〜荒川へ約4ヶ月間、鉛が流出し続けていたことがわかりました。
(彩の国資源循環工場と環境を考える広場からのお知らせ)


 埼玉県が肝いりで進めてきた事業であり、全国に誇る事業であったらなおさら、そこで生じた問題については、県民にいち早く公表し、県としての責任の所在、対応の仕方、今後に向けての環境監視や事業者指導の在り方などについて総括すべきではないだろうか。

 県に対しては、即刻ホームーページ上で事実関係と経過などを説明するように求めたが、明確な回答は得られていない。まだスタートしたばかりの施設でこのような隠蔽がまかり通れば、今後のことが心配になるのは当然である。

 埼玉県民がもっと関心をもち、今回のことについて県の対応の不始末を直接指摘し改善を求めて行くことが問われているのではないだろうか。無関心が最大の無責任であり県を増長させる原因でもある。

−−−−−−−−−−−−−−−
彩の国資源循環工場のガス化溶融炉 オリックス資源循環(株)創業時から鉛が流出し続
出典:彩の国資源循環工場と環境を考える広場 コラムより
   

オリックス資源循環(株) 出典:埼玉県

2006年8月9日に行われた埼玉県による環境調査で、彩の国資源循環工場内の雨水水質が環境基準《彩の国資源循環工場においての比較基準値でもある》(0.01mg/l)の27倍の鉛を検出。

 原因を調べるため9月4日に9社の雨水枡を測ったところ、ガス化溶融炉のオリックス資源循環(株)の4つの雨水枡からそれぞれ0.01mg/l、0.31mg/l、0.34mg/l、0.23mg/lという高濃度の鉛が検出された。(最高値0.34mg/lは環境基準であり彩の国資源循環工場においての比較基準値の34倍・・水質汚濁防止法の3.4倍)オリックス資源循環(株)から鉛が流出していたことがわかった。

◆理由は2つあるとのこと

1)オリックス資源循環(株)のガス化溶融炉での重金属類は、焼却時2000度という高温で気化して排気中にあるが、排気中の重金属類は水で急冷し、スラグとして固形化するので、その水“水砕水”には重金属類が溶け出さないというわけだったが、想定外の事実として水砕水に鉛が溶け出しているのがわかった。

 その水砕水の鉛を測定したところ、30.5mg/l。(水質汚濁防止法の30.5倍・一般の環境基準であり彩の国資源循環工場においての目標値の305倍という驚くべき数値。)さらにスラグにも鉛を含んだ“水砕水”が付いており、そのままストックしていた。そのスラグに付いていた水砕水が排水溝に流れていたとのこと。

 ※水砕水に鉛が溶け出すことは想定外だったことから、水砕水中の鉛の濃度がだんだん高くなっていた。スラグに高濃度の鉛を含んだ水がついていることも想定外だったことから、スラグのストックヤードから操業当時から応急措置を取った10月14日まで、雨水排水溝を通り、だんだん濃度が高くなって鉛が流出し続けていたことになります。

 ※水砕水に鉛が溶け出すことは想定外だったことから、水砕水中の鉛の濃度がだんだん高くなっていた。

 ※水砕水が減るので水を足すが、交換はしていない。

2)8月上旬〜中旬まで数回、酸洗浄水の温度を下げるための熱交換器の電熱プレートを洗浄した。電熱プレートの付着物に鉛があり、それが洗浄時、散ってしまった模様。その鉛が雨水排水溝を通り、雨水枡にたまったとのこと。

  これらの鉛を含んだ水は雨水排水溝を通るので周辺土壌には影響ないとのこと。

 ※この間、調整池、塩沢川を経て荒川に流れていたことになります。

 ※この間、大量に流れ出てしまった鉛は回収できなかった。

 調整池の水質は0.002mg/lだったので問題ないのではとのこと。しかし、重金属類なので水よりも底質を測るべきだったのではないでしょうか?彩の国資源循環工場では流れてしまう川や調整池の水質は測っても、底質は測りません。(底質は土壌と同様、蓄積されたものを測るので正確な数値が出ます)人間にとって大事なのは濃度ではなく蓄積される摂取量です。これからは底質をはかるべきではないでしょうか?

 対策として、オリックス資源循環(株)は、スラグのストックヤードの排水溝から直接排水溝へ流れていた経路を直し、水処理施設へ行くようにしたそうです。(10月14日に応急措置、11月3日に措置終了)

 オリックス資源循環(株)は2006年4月から試験運転を開始し、6月に本格稼動。6月9日の水質測定値(9社の排水)は0.008mg/l。8月9日に測定した結果の出た9月1日に問題発覚。

<確認>埼玉県環境部資源循環推進課/この記事の内容に間違いないと確認しました。

<資料>

平成16年度 敷地内土壌・塩沢川底質 検査結果    

平成17年度はなぜかリンクが切れています。