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日本初
ゼロ・ウェイスト宣言の町
上勝町視察


池田こみち

掲載日:2007年3月5日


無断転載禁


 大暖冬で梅の花も満開の二月末、ようやく上勝町を訪れる機会を得た。

 同町は、「日本初のゼロ・ウェイスト宣言の町」として有名だが、もうひとつ、地場産業「つまもの」(彩産業)でお年寄りが高収入を稼ぎだす元気な町としてもマスコミにももてはやされ、全国に名をはせた。

 このふたつの町の売り物は一見まったく違うジャンルのようだが、実は密接に関係していた。

 キーワードは「自立」と「自治」である。先頃も、徳島県に隣接する高知県の東洋町が高レベル放射性廃棄物最終処分場の誘致に手を挙げて「交付金・補助金に依存する自治体の体質」をめぐり、議論が沸騰しているが、まさに、上勝町は対極にある町である。

 地元の資源を活かし、高齢者が元気で働き、町民が自分の町に誇りもち生活に生き甲斐を感じているからこそ、町が経済的に自立し、その延長として、ごみゼロ宣言が可能となったのである。


ゼロ・ウエイストアカデミー理事長と

 百聞は一見に如かず、そのことが現場を訪れてよく理解できた。自ら考えて参加し、努力・行動を惜しまない姿勢こそ見習うべきだ。

 徳島駅から車で約1時間、山間の狭い斜面に張り付くように小さな集落が点々とする上勝町、平地がないために稲作も厳しい棚田がわずかにあるだけ、杉の植林が7割を超える人工林ばかりの山々、林業は疲弊している。


このような風景が続く

 数年前までは、それに高齢化の進行が追い打ちを掛け人口の減少による過疎化も深刻な町だったが、笠松町長のもと、数名のキーパーソンがプロデューサーとなって、町は見事に元気を取り戻し、今や全国から視察が訪れる町に生まれ変わった。

 とはいえ、まだまだ深刻な状況がすべて解決したわけではない。町役場と町民そして、町内につくられた5つの第三セクターがそれぞれ連携し、賢明にがんばってはいるものの、依然として森林資源の活用や保護には大きな課題が残されている。

 温暖化が進む中、森林資源を抱えた町はそれをどう資源として活かせるのか、まさに思案のしどころ、いろいろな新しいアイディアを事業化しようと懸命だ。

 株式会社彩(いろどり)を立ち上げ、現在も代表取締役として町内のお年寄りのビジネスをプロデュースしている横石さんの研修は熱意にあふれ、町や町民に対する愛情にあふれていた。


町役場の一角に全国的に有名になった
いろどりの本社がある

 横石さんに案内されて訪れた菖蒲さんのお宅では、80を過ぎたおばあちゃまが暖房もないひんやりした作業場で明日の出荷のために桃をトレーに並べる作業を、ラジオを聞きながら進めていた。


一心不乱にツマを仕分けする菖蒲さん

 6畳ほどの小さな作業場だがそこは都会のオフィスさんがららに、パソコン、通信用ファックス、電話、携帯などが供えられていて、正座してモニターに向かう姿が妙に板に付いていたのがなんとも言えない。


菖蒲さんと

 そうこうするうちにご主人が出荷から戻ってこられ、記念撮影となったが、菖蒲さんの庭先の急斜面には植えたばかりの梅の苗木に綺麗なピンクの花が満開だった。

 「未来のために苗を植えたり種を蒔くのが楽しい。」と言われるこの町のお年寄りに元気をいただいた視察だった。


左から池田、菖蒲さん、青山、横石さん、菖蒲さんの旦那さん
撮影は鷹取敦さん