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環境立県
滋賀県の産廃委員会事情(3)


池田こみち

掲載日:2007年8月23日



 その(2)では、主に委員会の運営上の課題を指摘した。

 ここでは、第6回対策委員会の中心議題となった「生活環境上の支障の特定」と「対策工法の選定」に関連する課題を述べてみたい。

<本題についての課題>
(詳細は提案書(PDF:9頁)をご参照下さい)


・まず、今年度、滋賀県は1億円を越す予算を計上し、この民間産廃処分場対策に当てている。

 委員会の運営費もそれに含まれるが、圧倒的な費用は、処分場内及び周辺地域のボーリング調査や地下水・浸透水などの分析業務の委託費であると思われる。

 現に、ボーリング調査は応用地質(株)、分析調査はエヌエス環境 (株)が行っている。

・にもかかわらず、県はその処分場の所有権を確保することを明確にしていない。

 事業者であるRD社は既に破産し、管財人が無償で土地を提供すると言っているにもかかわらずだ。

 今のままだと民間処分場に公費をつぎ込んで綺麗にしてあげて、どなたか「どうぞお使い下さい」ということになってしまう。

 少なくとも国費がつぎ込まれる可能性があるとすれば、ますます、土地所有が前提でなければ県民はもとより、国民的にも納得は得られにくいと考えるのが普通である。

 筋からしても、まずは、その処分場の土地所有を県が明確に表明した上で、公費による調査、対策を行い、処分後はそのレベルに応じて有効な土地利用を図るのが筋ではないだろうか。

  ただ、そのためには、ことここに至った責任の多くは、もちろん事業者自身の責任は当然だが、滋賀県と栗東市の責任も免れないことは明らかである。

 その点を明確に認めなければ、これからの対策を市民が信用するはずもない。

 安定型処分場(許可安定型埋立対象物:廃プラスチック類、ゴムくず、 ガラスくず及び 陶磁器くず、がれき類)でありながら、ありとあらゆる違法な廃棄物が持ち込まれ、違法に処理・処分されてきたことによって、焼却炉や処分場からの悪臭・大気汚染(黒煙、煤塵等)、有毒ガスである硫化水素の流出、地下水・浸出水、さらには周辺の公共用水域等へのヒ素、鉛、水銀、ホウ素、フッ素等の浸出、ダイオキシン・有機溶剤によるVOC類の検出などが相次いだため、周辺住民はもとより、栗東市民、さらには琵琶湖の下流域の住民にまで不安が広がっていったのである。

・検討委員会では、現在、処分場の土地の所有権問題を棚上げし、汚染浄化など処分場対策には膨大な費用がかかるため、県は「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(平成十五年六月十八日法律第九十八号)」 いわゆる「産廃特措法」http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO098.html
 の適用を受けることを前提に検討を進めている。そのため、「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等を平成24年度までの間に計画的かつ着実に推進するための基本的な方針「環境省告示104号」を前提に、生活環境上の支障の特定や対策工法の検討を進めている。

 しかし、市民にとって最も重要なことは、「生活環境上の支障」とは地下水にホウ素が××ppm、ヒ素が○○ppm検出され、基準を超過したとか、検出されたヒ素は処分場由来か自然由来かといった子細で科学的な議論ではなく、長年にわたって精神的・肉体的、あるいは生活全体について被ってきた苦痛・不安・不信こそが問題である。

 いわば、RD処分場の存在そのものが極めて大きな「生活環境上の支障」となっているのである。その点を理解せずに法手続や分析化学的な解析からのみ対策工法を選定することは極めて大きな禍根を残すこととなることを県はもとより、対策委員会メンバーもしっかり認識しておく必要がある。そうでなければ、市民代表も含めた対策委員会を開催する意味が無くなるからである。

 実際、市民の間には、いつまで調査ばかりしているのか、いつになったら本格的な対策に着手してくれるのか、といった苛立ちが蔓延し、また、一方では、元産廃会社の従業員などの証言から「有機溶剤、ドラム缶、焼却灰が膨大に埋められている」ことが伝えられていることから、徹底した掘削調査を対策以前に求める声も根強いのだ。

  こうした従業員からの情報は平成11年から13年ごろにかけて収集され県も入手していたようだが、現在に至るまで直接的な証言の裏付け調査などは行っておらず、対策が後手に回ったことは否定できない。

 とはいえ、最終的にどのような対策が最も有効かを判断するためには、住民の意向を踏まえつつも、@実施可能性(適用可能性)、A実施期間、B費用対効果(財政負担の妥当性)、C合意形成など、多面的に検討を行っていくことは当然のことである。

 そこで、梶山・早川・池田の3名は、梶山委員の豊富な現場経験(全国の産廃処分場関連事件や訴訟を通じて)や理学博士としての知見、早川委員の地元住民としての意識と環境社会学者としての問題認識、池田の化学分析に係わるなかで得た知見や各地の事例から得た経験などを踏まえて、現時点でもっとも合理性があり、かつ必要な対策工法の提案を行ったのである。(PDF参照)

 一部にはドラム缶1000本を埋めたなどという証言もあることから処分場内の汚染の実態はまだまだ把握し切れていない。

 かといって、全容解明まで掘削し続けたり分析し続けることも非現実的である。そうした状況のなかで、総体的に判断し、緊急的に行うべき対策は何であり、恒久的に行っていくべき対策はどのようなものかについて、具体的に提示して実行していかなければならない。

  これから具体的な工法の選定プロセスに入っていくが、委員会は是非とも、本来の役割を見失うことなく、開かれた議論、真摯な議論を積み重ね、市民に自信を持って提案できるよう努力していくことが必要である。

 次回は、三者の提案について、より深い議論ができることを期待している。そのためにも、県(事務局は)人ごとのような対応ではなく、重大な責任をとらなければならない当事者として誠実な対応に努めて欲しい。また、嘉田由紀子知事のリーダーシップが発揮されるように強く求めたい。

 つづく


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<RD最終処分場問題対策委員会 滋賀県公式Web Site>
 本サイトには、対策委員会及び専門部会の開催回数ごとに、開催案内 会議概要 議事録 配付資料が掲載されている。
http://www.pref.shiga.jp/shingikai/rd/index.html

 また、RD最終処分場問題については、同じく滋賀県琵琶湖環境部の最終処分場特別対策室のホームページに、許認可の経緯、航空写真、問題の経緯などが整理されて掲載されている。http://www.pref.shiga.jp/d/saisyu/gaiyo.html