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環境省の
廃棄物処理施設整備計画案
へのパブリックコメント

池田こみち
環境行政改革フォーラム副代表

2008年3月15日


<意見>

 我が国においては、廃棄物処理施設整備に重点が置かれてきたために、廃棄物政策としてもっとも重要である発生抑制、排出抑制のための施策の構築、拡充がなおざりになっていることは否めない。

 そもそも、中間処理施設(焼却施設はもとより、プラスチック類の選別・圧縮等の施設)及び埋め立て処分場等の処理施設はいずれも、環境への影響はもとより、それら施設で働く従業員の健康に影響を及ぼす施設であり、本来そうした施設に過度に依存しなくても済むように、廃棄物政策を計画立案すべきである。これまでダイオキシン対策も含めて膨大な税金がこうした処理施設の建設に投じられてきており、今後もますます高度な施設の建設にはコストがかかることは間違いない。

 一方で、施設周辺住民には、そうした施設の立地への不安もあって、建設までの合意形成も容易ではない。

 現に、廃棄物の焼却率は世界的に見ても極めて高く、都市によっては90%を上回る地域も存在している。

 一方で、リサイクル率は依然として20%に満たないほど低く、3Rの推進はかけ声だけでその背後ではさらなる焼却・溶融など先端技術・ハード依存のごみ処理が続いている。「適正処理」といえば聞こえはよいが、先端技術はいずれも未完成かつ不安定な技術が多く、多くの自治体が導入後の維持管理費の増大などに頭を悩ませている事実を見逃してはいけない。

 また、国庫補助、地方交付金という直接的な国の関与により、基礎自治体における廃棄物政策の立案の自由度を束縛し、不必要に過剰な設備を高額の費用で建設するなど、自治体としての廃棄物政策立案能力の低下を招いている。

 同時に、住民や事業者の排出者としての責任も十分に問われることなく、安易に廃棄物の処理を焼却炉や溶融炉に依存する体質を助長してきたことは否めない。廃棄物となる製品の製造者、廃棄物を出す排出者の責任が問われる仕組みこそ早急に構築する必要がある。

 我が国においては人口も減少に転じることが明らかとなっていることから、今後は既存の処理施設の維持管理及び適正な時期における閉鎖にこそ力を入れるべきであり、その間に、本来の廃棄物政策の達成目標である「発生抑制」「排出抑制」が進む政策、施策、仕組みづくりに努めるのが筋であろう。

 そもそも、都市部から農村部に至るまで一律の処理施設の整備を誘導するような政策は問題である。

 そのために、廃棄物の減量目標やリサイクル率の達成目標はできるだけ高めに設定し、そのための施策について市民も含めて国から市町村レベルで多段階かつ多面的に議論する必要がある。

1.基本理念について

 廃棄物処理の3R化とA地域の自主性と創意工夫を生かした処理施設の整備が理念となっているが、いずれも本来の廃棄物政策の基本理念とは矛盾している。

 過去10年間の一般廃棄物の排出量の推移をみても、ほとんど5000万トンでの横ばいの状態となっており、従来のような廃棄物処理施設に依存した3Rでは効果がないことは明らかである。

 環境影響やコスト、地域間不公平など社会的に見ても課題の多い廃棄物処理施設を着実に減らしていくための政策こそ議論されるべきである。また交付金制度が地方の自主性、創意工夫を阻害していることは明らかであり、ごみが減るどころがそうした大規模施設を立地したところでは、逆にごみが増加する傾向すらあるのである。

 交付金を出すのであれば、一定のごみ減量化目標を達成した自治体に、必要な施設建設の補助を出すなど、より環境面、財政面から持続可能な補助・助成のあり方こそ検討すべきである。

 過剰な施設整備は、ごみ減量化へのインセンティブを減らすばかりか、かえってごみを必要とするような本末転倒な方向へと向かわせることになる。

2.施設整備の重点的、効果的かつ効率的な実施

 有料化は短期的にごみの減量化に結びつくかもしれないが、結果的には有料でも出した方が楽、という考えから長期的に減量化に結びつかないおそれがある。

 施設依存をさらに強めることになるので注意が必要である。また、焼却施設はもとより、埋め立て施設からも温室効果ガスが排出されることから、地球環境の観点からも日本の焼却依存体質は早急に改める必要がある。焼却・埋め立てともに減らすための仕組み作りが不可欠である。

 廃棄物系バイオマスの有効利用は重要なポイントだが、焼却炉などでの発電が有効であるとして、焼却炉への更なる設備投資が助長されるようであればきわめて問題である。結局廃棄物が発電目的に集められることにもなりかねない。

 効率的な事業の推進の中ではPFIなども盛り込まれているが、現在の一部事務組合方式にあっても、情報の公開が十分でないなど問題が生じている。行政の役割と民間事業者の役割分担を明確にすべきである。また、事業体制によって責任の所在が曖昧になることのないように配慮する必要がある。

 地域住民等の理解と協力の確保、とあるが、現状においても廃棄物処理施設からの環境影響や排出される有害物質については十分なモニタリングが行われていない状況であり、なかなか新規立地や稼働延長等について住民の理解を得るのは難しい状況である。施設の適切な維持管理は重要であるが、焼却炉等の中間処理施設は耐用年数がくればまた新たな施設が必要になる。そのため、早急に、次の新たな焼却炉への依存を減らすための仕組み作りに取りかかる必要がある。

 次世代に負の遺産を残すことのないように計画を立案することこそ、今求められているのである。

 これらのことを踏まえ、廃棄物に関わる環境教育の一層の徹底、処理施設に依存しないルールの確立、既存の各種リサイクル関連法案、循環型社会形成推進基本法等の抜本的な見直しこそが必要である。国際社会に目を点ずれば、ゼロ・ウェイスト政策を着実に実行している都市、地域が多数存在する。そのなかで、我が国は依然として、一部メーカーの利権に直結するような高度なプラントにばかり依存する政策を続けることは非常に問題が多いことを認識すべきである。

以上

池田こみち
環境行政改革フォーラム副代表
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事務局代表