エントランスへはここをクリック!  

問われる市民派知事の判断
滋賀県産廃処分場対策

池田こみち

2008年4月10日
無断転載禁

 4月9日、滋賀県RD産業廃棄物最終処分場対策委員会(委員長岡村周一 京大教授)が滋賀県庁を訪れ、1年3ヶ月、全15回に及ぶ議論を経て、このほどとりまとめられた最終的な答申を嘉田知事に手渡した。

 以下の報道にあるように、答申は、最終的に委員全員の一致を見ることができず、複数案の併記となったが、もっとも賛同者の多かった全量撤去案(A-2案)を推奨案とした。

 すなわち、緊急対策として処分場からの水銀やヒ素、ダイオキシン等の流出を防ぐために遮水壁等の遮水工を施した後、時間をかけて、恒久対策として、許可容量を大幅に超えて不法に投棄された廃棄物、違法に処理処分された廃棄物、有害廃棄物、それによって汚染された有害な土壌等を、順次、全量撤去し、周辺に暮らす市民の安心と安全、生活環境保全上の支障を除去しようという対策である。

 この案は、筆者ら委員3名(梶山委員(弁護士)、早川委員(滋賀大教授)、池田)らが委員提案として委員会に示した案であり、他の案、たとえば、現場での汚染物質の封じ込めや有害物の除去と言った対症療法的な工法に比べて費用がかかることは確かである。しかし、処分場からの周辺への環境影響の状況や処分場内の汚染の状況などから判断し、全量撤去以外の対策では、将来に禍根を残すとの判断に基づいて提案したものである。現に、処分場内に埋め立てられた有害な廃棄物の層が複数箇所で帯水層を突き破り、地下水に接していることも明らかとなっている。

 もちろん、費用や工期の観点から、部分的な汚染の除去や有害物の除去でよいとする主張や、帯水層と接している部分の粘土層の修復と有害物の除去でよい、といった案も出されたが、19年度に滋賀県が実施した処分場内の掘削調査においても新たに100本を超えるドラム缶が発見され、そのうちの50本以上がすでに空となっていた。つまり、処分場内に持ち込まれた有害廃棄物はすでに処分場内に拡散・混在し、有害物のみ、あるいは、廃棄物のみを除去できるような状況ではなくなっているのである。

 いずれにしても、これからは嘉田知事の判断を待つことになる。一年余にわたり、地元住民代表委員5人も参加し、追加的な分析調査・掘削調査を行いながら検討を行ってきた委員会の「推奨案」をどのように受け止め、具体的な政策としていくのか、まさに手腕が問われている。

 残念ながら、全15回の委員会への知事の参加はわずかに初回の挨拶と、昨年末の委員会に30分ほど顔を出されただけで、委員会での議論や様子をどこまで把握しておられるのか、疑問である。この際は、多くの地元委員、特にもっとも現場に近い自治会の代表までもが、苦渋の選択として時間のかかる「A-2:全量撤去案」を選択するに至ったのか、知事は、その決断を真摯に受け止めていただきたい。

 以下の報道によれば、知事は「最小の費用で最大の効果を図る。県民に納得してもらえる結論を速やかに出したい」、また、「まだ技術的に詰めなければいけないところがずいぶんある。地元が一番望んでいるのは早期解決なので、委員会の対策案を尊重して、できるだけ速やかに対策を提案したい」とコメントしているが、「最小の費用」では「最大の効果」が出ないからこそ時間とお金をかけて検討してきた末の答申ではないのか、と問いたい。また、地元が一番望んでいるのは必ずしも「早期解決」=「短い工期」ではない。県が問題発覚から10年近くもこの問題を放置してきたことが「早期解決」を求める市民の声の裏にあることを忘れてはならない。

 長年にわたり大気汚染、悪臭、騒音、地下水汚染などの公害に加えて、硫化水素流出などの危険を窓越しに見てきた市民たちの本当の願いは、安心して住み続けられる住環境を取り戻すことであり、孫子の代に付けを残さない抜本的な対策である。ここで安上がりな対策を講じれば、広大な処分場内に残された汚染物質がいつ再び表面化するかという不安が払拭できないままとなるのである。

 知事のコメントは、「お金はかけられない」が「早期解決が求められている」という滋賀県の都合の良い解釈に基づいて、答申の推奨案を反故にし、「現場封じ込め案を採用するつもりである」、と言っているに等しい。

 これでは、県民の納得は得られないだろう。対策委員会と平行して開かれてきたRD処分場問題に対する県の責任を検証するための「行政対応検証委員会」の報告書において、滋賀県のこの間の対応がいかに不適切かつ不十分であったかが指摘されている。事がここまでに至ったのは事業者の責任は言うまでもないが、許認可権者であり、指導監督責任者である県の責任が厳しく追われるべきであり、その意味からも、ここでさらなる問題の先送りとなるような対策の選択は決してしてはいけない。県財政の逼迫という最大の難関をどう知恵を働かせて乗り越えるか、まさに、知事の手腕が問われている。

 市民派であり、環境派であるはずの嘉田知事の英断を期待したい。もっと市民の方に顔を向けた県政を是非とも自信を持って推進していただきたい。


京都新聞2008年4月9日
RD産廃問題、知事に報告書提出 滋賀県対策委「全量撤去」を推奨
 滋賀県栗東市のRDエンジニアリング(破産)の産廃処分場問題で、滋賀県の対策委員会が9日、有害物の全量撤去を対策工法の推奨案とする報告書を嘉田由紀子知事に提出した。

 岡村周一委員長は「(全量撤去は)全委員一致ではまとまらなかったが、知事はよい判断をしてほしい」と話した。知事は「最小の費用で最大の効果を図る。県民に納得してもらえる結論を速やかに出したい」と述べた。

 報告書は、問題の経緯や、処分場とその周辺の地下水汚染などの現状を説明。対策工法については全量撤去以外に、現地での封じ込めと一部の廃棄物撤去を組み合わせる工法など、委員の支持があった2案も併記した。


NHK滋賀ニュース 2008年4月9日
 栗東市にある産業廃棄物の処分場に有害物質が不法投棄されている問題で、対策を検討してきた県の委員会は汚染された地下水が周囲に広まらないよう地中に壁を設置した上で、有害な物質を全て撤去することが最も望ましいとする対策案をきょう嘉田知事に答申しました。

 9日は、対策委員会の岡村周一委員長が、不法投棄や地下水汚染が問題になっている栗東市の産業廃棄物の処分場の対策について15回にわたって検討してきた内容を嘉田知事に答申しました。それによりますと汚染された地下水が周囲に広がらないように地中に水の流れを遮る壁・遮水壁を設置した上で、埋めたてられた有害物を全て撤去する案が最も望ましいとしています。

 しかし、何を有害物とするかや撤去の範囲などについては委員会で意見が分かれ、答申には具体的に盛り込まれませんでした。

 嘉田知事は「まだ技術的に詰めなければいけないところがずいぶんある。地元が一番望んでいるのは早期解決なので、委員会の対策案を尊重して、できるだけ速やかに対策を提案したい」と述べました。ただ嘉田知事は具体的な対策をまとめる時期については明言しませんでした。