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 環境省所管の公益法人に
メスを入れる
@その実態を知る


池田こみち
 環境行政改革フォーラム副代表

2009年6月8日 無断転載禁


 省庁再編で環境庁と厚生省の一部が統合され環境省となってから、環境省所管の公益法人の数は74から93へと約19団体が増加している(図1参照)。


図1 環境庁時代からの環境省所管公益法人数の推移

 平成19年現在、その内訳は、自然保護局所管が35団体と最も多く、次いで、廃棄物・リサイクル対策部の19団体である。また、1990年代以降の地球環境問題の顕在化により「地球」がらみの活動を行うことを目的とした公益法人が増加し、そうした団体への補助(拠出金)や委託費が増加している。

 国(省庁)が所管する公益法人の総数は平成19年時点で共管による重複を除くとなんと6,720団体(図2参照)、加えて都道府県が所管する公益法人が18,056団体となっており、合計すると24,648団体にも及んでいる。


図2 省庁別所管公益法人数(平成19年)

 その中で環境省が所管する団体は93団体と少ないとはいうものの、環境省やその認可団体が必ずしも誰の目から見ても環境によい活動をしているか、ムダのない有益な活動をしているかどうかはまた別の問題である。

 「環境」という錦の御旗のもとでどのような団体が何をしているのか、政権交代も間近に迫ったこの時期に、改めて環境省所管の公益法人の実態に鋭いメスを入れてみるのは重要なことではないだろうか。

 環境省所管公益法人の一覧(http://www.env.go.jp/info/hojin/)は、独立行政法人が2つ、特例民放法人が93に及んでいる。

 その内訳は、特例社団法人:42法人、特例財団法人:51法人となっている。さらに所管部署別に見ると、次の通りである。

●大臣官房(2)
●大臣官房 廃棄物・リサイクル対策部(19)
●総合環境政策局 (10)
●地球環境局 (9)
●水・大気環境局 (15)
●自然環境局 (35)
●東北地方環境事務所 (1)
●関東地方環境事務所 (2)

 定年間近になると、課長クラスのキャリア組は、国公立や有名私立大学の教授となって大学に天下る人事が横行しているが、天下りが問題となる昨今、なぜ、学術的実績も教育的実績もほとんどない役人が、いきなり大学教授になれるのか、極めて不可解な人事と言わざるを得ない。

 平成20年7月4日に各省庁から「行政と密接な関係にある公益法人への支出の無駄の集中点検について」という報道発表があった。環境省ももちろん公表している。下記URLをご覧いただきたい。

 ★平成20年7月4日 「行政と密接な関係にある公益法人への支出の
   無駄の集中点検について(お知らせ)」 環境省長官官房総務課
  http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=9964

 これによると、全93法人の内、18年度に国又は独立行政法人等から何らかの支出を受けている法人は56法人、そのうち「行政との関係を総合的に勘案して、集中的に点検の対象にすべきと考えられる事情を有している」として20団体を選出して点検を行ったとしている。点検された法人は次の通り。
 
(1)事務事業の見直し:国から発注等する事業の見直し(必要性、
   金額の見直しを行い発注の適正について検討)
    1法人:(財)環境情報普及センター

(2)一般競争入札原則の徹底:

  @国等から発注する事務事業のすべてを全面的に一般競争入札
    に移行、応募条件が制限的となっていないいかどうかを点検。
    3法人:(財)環境情報普及センター
             (財)日本環境整備教育センター
             (社)におい・かおり環境協会
   
  A一般競争入札に移行できない場合について、
   ・関係する事務事業の分割などにより、可能な限りその対象を
    限定し、一般競争入札の摘要を拡大するよう点検。
           11法人:(財)日本環境衛生センター
              (財)日本産業廃棄物処理振興センター
              (財)産業廃棄物処理事業振興財団
              (財)日本環境協会
              (社)環境情報科学センター
              (財)地球・人間環境フォーラム
              (社)海外環境協力センター
              (財)地球環境センター
              (社)国際環境研究協会
              (財)地球環境戦略研究機関(IGES)
              (財)自然環境研究センター

   ・一般競争入札が適用できない場合、関係する事務業務について、
    企画競争など競争的な手続きや市場化テストによること、制限的
    な応募条件等が設定されていないことを点検。
          5法人:(財)環日本海環境協力センター
              (社)日本の水をきれいにする会
              (財)休暇村協会
              (財)自然公園財団
              (財)日本鳥類保護連名

(3)法人組織の縮減(役員報酬抑制、削減、役員数削減、退職金報酬
   抑制削減、内部留保の縮減を含む)

  @法人組織の縮減  環境省関連はなし
  A役員報酬の抑制削減 12法人
               (財)環境情報普及センター
               (財)日本環境衛生センター
               (財)日本環境整備教育センター
               (財)浄化槽設備士センター
               (財)日本産業廃棄物処理振興センター
               (財)産業廃棄物処理振興財団
               (財)日本環境協会
               (社)海外環境協力センター
               (財)環日本海環境協力センター
               (財)自然環境研究センター
               (財)自然公園財団
               (財)日本鳥類保護連盟
   B役員数の削減   6法人
               (財)環境情報普及センター
               (財)日本環境衛生センター
               (社)国際環境研究協会
               (財)地球環境戦略研究機関
               (社)日本の水をきれいにする会
               (財)自然公園財団
   C退職金の抑制削減 5法人
               (財)環境情報普及センター
               (財)日本環境衛生センター
               (社)海外環境協力センター
               (財)環日本海環境協力センター
               (財)自然公園財団
   D内部留保の縮減 3法人
               (財)日本環境協会
               (社)におい・かおり環境協会
               (財)日本鳥類保護連盟

 これらの団体は、いったいどのような「事情」により選出されたのかについて、環境省長官官房総務課に問い合わせを行ってみた。(電話は通話録音をもとにまとめたもの)

池田:点検の対象になった20団体の選出理由はどのような「事情」によるのでしょうか。国と密接な関係にある、いわゆる「密接特民法人」ということですか。

担当補佐:いいえ、「事情」とは、随意契約で仕事を受けている団体を指します。

池田:そのことはなぜ点検の報告に明記しないのですか。密接特民法人がどの公益法人かは公表していないのですか。

担当補佐:人事がからむ問題は長官官房秘書課が担当しています。密接特民法人の公表は環境省では行っていません。総務省で行っているはずですが。

池田:総務省に確認しましたが行っていないようでした。「公益法人白書」を見てほしいということでしたが。公益法人の側は「密接特民法人」に該当するかどうかを公表する義務があるようですが、そもそもどこがそれに該当するかは所管官庁側が公表すべきだと思いますが。

 そこで、調べてみると、環境省の所管公益法人の内、

◆補助金を受けている法人:6
◆委託事業を受けている法人:29
◆補助金等を受けている法人:33
◆国家公務員出身者がいる法人:66
◆密接特民法人:5(すべての法人に有給役員がいる)

となっていた。

出典:総務省資料

つづく

注)密接特民法人の定義

 関係法令において、国と特に密接な関係があるものとして掲げられている特例民法法人。 具体的には以下のとおり。

1.次に掲げる特例民法法人。

 ただし、下記2.に該当する法人にあっては(1)又は(2)から、下記3に該当す る法人にあっては(3)から、それぞれ除くものとする。

(1)国からの補助金・委託費等の2分の1以上を第三者に交付する特例民法法人

(2)国からの補助金・委託費等による収入額が年間収入額の3分の2以上を占める特例民法法人

(3)国から検査・認定・資格付与等の事務・事業の委託等、推薦等を受けている特例民法法人

※ 補助金、委託費等の額は、直近の決算額とする。

2.次に該当する特例民法法人

○直近の決算では、(1)、(2)に該当するが、現時点の予算では該当せず、次年度以降も該当しないことが確実な法人。

3.次のいずれかに該当する特例民法法人

○「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」(平成14年3月29日閣議決定。以下「実施計画」という。)に基づき、特例民法法人が国の代行機関として行う検査・検定等の事務・事業について、登録機関制(登録機関制に準じた措置を含む。)に移行した法人
○実施計画の対象となっていない特例民法法人が国の代行機関として行う検査・検定等の事務・事業であって、実施計画でいう登録機関制と同様の制度に移行した法人

出典:http://www.resona-fdn.or.jp/main/shoukai/image/main_news01.pdf