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 暴かれる利権の巣窟:
八ッ場ダムを食い物
国交省の罪は大きい


池田こみち
環境行政改革フォーラム 副代表
2009年10月20日 無断転載禁


 政権交代後、堰を切ったように八ッ場ダムの工事現場にマスコミが押し寄せ、今や全国知らない人がいないほど有名になった群馬県吾妻渓谷だが、そこは昔から美しい自然景観と豊かな自然の宝庫であり、群馬県だけでなく、関東地域、さらには日本全体にとっても貴重な自然環境資源であったはずである。

 そこでは、この57年間、治水・利水のためと言いながら、ひたすら土木工事で自然破壊が続けられ、今や四季折々の美しい自然や渓谷の風景とは似てもにつかないコンクリート構造物が乱立する場となってしまった。まさに痛々しいとはこのことである。

 ダムの建設には道路も必要なことは分かるが、なぜこの規模、この設計の道路や橋梁なのか、理解に苦しむほど過剰な工事が目に付く。

 先週末、この間の八ッ場ダムの各種土木工事がいかに利権にまみれたものであったかを示す証拠として、工事規模の大小や内容を問わず、極めて不自然な高落札率で身内の公益法人に発注していたことが報じられた。

 東京新聞の記事を以下に引用する。(記事全文は枠内を参照のこと)

<高落札立の大規模工事案件>

03年3月契約   県道林・吾妻線新設工事(落札額二億九千万円) 99.47%
           大柏木トンネル新設工事(同三十四億円) 97.12%

05年9月契約   須川橋改築工事(同三億五百万円) 98.3 %

06年3月契約   県道林・吾妻線2号橋下部工事(同五億六千万円)98.34%

09年4〜9月の工事22件でも18件が落札率94%を超えていた。

「現場技術業務委託」として、特定の社団法人が五回にわたり98〜99%の落札率で受注。04年10月当時、この社団法人の役員に再就職した元国交省職員が二人いた。

 まず、橋梁建設やトンネル建設といった内容が明確な土木工事はまだしも、「現場技術業務委託」といった内容が不明確な業務が98〜99%の高落札率で天下りの多い公益法人に発注されている。

 しかもその額は一億円と巨額である。新聞ではその公益法人の名前が伏せられていたが、調べてみると、社団法人関東建設弘済会もそのひとつである。

 なおかつ、入札どころか随意契約で発注されていたことも分かった。

 以下に「平成18年度八ッ場ダム現場技術補助業務(その4)」の随意契約結果及び契約の内容が公表されている。この案件は、予定額103,246,500円(税込み)に対して、99,750,000円(税込み)で受注しているので受注額は予定額の96.6%となる。随意契約にも拘わらず、気持ち安くしているのもわざとらしい。

http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/nyuusatsu/nyusatsu/imgs/consul/h180403a.pdf

 随意契約とした理由の説明の中に次のような一文がある。

 「・・・上記業者は、ダム建設事業に関する幅広い知識と行政的な経験を持ち、ダムや河川に関するもの以外に国有林野に関する知識に加え、また、地元情勢にも精通していることから、本業務の目的を的確に実施できる唯一の契約対象である。」と。これをお手盛りと言わずして何というのだろうか。新聞に寄れば、「関東地方整備局は「八ッ場ダムの関連工事で、過去に談合と認定した事実はない」としている。」とのことだが、自分で自分のお手盛りを認めることはあり得ないので第三者のしっかりとした検証と調査が必要なことは間違いない。

 事ほど左様に、八ッ場ダムを食い物にしてきた国土交通省だが、そのうえさらに、「ダム湖周辺施設実施検討業務」(落札金額四千万円)、「八ッ場ダム自然環境保全対策検討業務」(同三千九十万円)を100%の入札率で発注している。

 入札率が100%ということは、官製談合そのものであり、言い訳のしようがない。しかもその内容が「自然環境保全対策検討調査」というからお笑いである。

 さんざん自然を破壊しておいて、保全対策検討もないものだ。おそらく、橋梁や道路などで分断された動物の生息域や生活圏を守るため、動物のための横断通路や獣道を整備する必要がある、などというさらなるハードな工事を誘導するものではないかと勘ぐられても仕方がない。実際、私たちが沖縄のやんばる地域を視察したとき、「動物が横切るための通路を整備しています」という工事を何度も見かけているからだ。

 本来、自然環境、動植物の生態系をできるだけ保全しながら地域と共生してこそ生きるすべがあるというのに、タコが自分の足を食べるように自然を破壊しつくし、人工的な構造物ばかり作り続けても地元に未来はない。

 自民党時代、国交省は、八ッ場ダムに関してこれまで投入してきた費用の内訳を黒塗りにして開示していなかったようだが、新政権はまずはこの間の税金の使われ方を徹底的に明らかにし、全国の公共事業見直しのための検証材料とすべきである。

吾妻渓谷で進む八ツ場ダム関連工事(長野原町)
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10  2008.11.1

YOU TUBE映像

八ツ場ダム工事現場にて  2008年9月
撮影:青山貞一、Victor Digital Hi-Visonカメラ GR-HD1

――以下記事

工事落札率 大半94%超 八ッ場ダム 市民団体『談合の可能性高い』
2009年10月17日 東京新聞 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009101702000216.html

 前原誠司国土交通相が中止を表明している八ッ場ダム(群馬県長野原町)事業をめぐり、国交省関東地方整備局が2001年4月から06年3月に発注した関連工事や業務で、落札額が一億円以上だった入札76件のうち65件が落札率(予定価格に対する実際の落札価格の比率)94%を超えていることが17日、国交省がまとめた資料で分かった。99%以上も8件あった。 

 公共事業の談合問題を分析、追及している全国市民オンブズマン連絡会議の新海聡事務局長は一般論とした上で「94%以上であれば談合の可能性は極めて高い」と指摘している。
08年度の関東地方整備局工事の平均落札率は90.6%。関東地方整備局は「八ッ場ダムの関連工事で、過去に談合と認定した事実はない」としている。

 市民オンブズマン群馬は「入札で参加業者の辞退も多く、落札率が高いのは不自然」として近く国交省に質問状を提出する方針。

 資料によると、03年3月に契約した県道林・吾妻線新設工事(落札額二億九千万円)の落札率は99.47%で、大柏木トンネル新設工事(同三十四億円)は97.12%。05年9月契約の須川橋改築工事(同三億五百万円)は落札率98.3%、06年3月契約の県道林・吾妻線2号橋下部工事(同五億六千万円)は98.34%だった。

 また「現場技術業務委託」として、特定の社団法人が五回にわたり98〜99%の落札率で受注。04年10月当時、この社団法人の役員に再就職した元国交省職員が二人いた。

 09年4〜9月の工事22件でも18件が落札率94%を超えていた。


●八ッ場ダム 4業務 落札立100% 天下り先法人が受注
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009101702000210.html
2009年10月17日 東京新聞 夕刊

 八ッ場ダム(群馬県長野原町)の関連工事では一億円以上の工事、業務だけでなく、落札額の低い工事や業務でも、談合を疑わせる高い落札率が目立つ。ダム計画に反対している市民団体は天下りとの関連を指摘している。

 入札に参加した業者のうち、国土交通省所管の七つの公益法人では、2004年10月時点で国交省のOB計25人が役員を務めていた。この七法人が01年4月〜06年3月で落札した業務や工事は45五件に上り、落札率は92〜100%だった。うち43件は95%以上だった。中でも、ある財団法人は「ダム湖周辺施設実施検討業務」(落札金額四千万円)、「八ッ場ダム自然環境保全対策検討業務」(同三千九十万円)など四つの業務を落札率100%で受注。

 八ッ場あしたの会の渡辺洋子事務局長は「100%は不自然で、何をする業務かも判然としない。国交省は情報を公開すべきだ」と指摘する。

 談合ではないが、八ッ場ダムの工事をめぐっては〇六年、用地調査業務で便宜を図った見返りに、業者から無利子、無担保で約七百十万円を借りたとして、収賄罪で国交省の八ッ場ダム工事事務所元用地第一課長が有罪判決を受けた。

 <落札率> 国や地方自治体が発注する公共事業や業務、物品購入などの契約で、予定価格に対する実際の落札額の比率。落札率が高いケースでは、参加業者による談合の疑いが指摘される。