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がれき広域処理の欺瞞
北九州市で発覚


池田こみち(環境総合研究所)
掲載月日:2013年9月30日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 2013年9月末、被災地(仙台市)に建設された仮設焼却炉によるがれきの焼却がついに終了するというニュースが流れた。仙台市は早くから市内に大規模仮設焼却炉をつくり、独自にがれき処理を進め、隣接する石巻市の分も引き受けてきた。

 一方、がれきの発生量が大量だ、ということから全国の自治体でがれきの処理を行ういわゆる広域処理も、最後まで受入を継続していた大阪市での処理が、同じく2013年9月中旬で終了し事実上がれきの処理は終了した。

 2013年7月末時点の環境省発表のデータを見ると、広域処理で最も多くのがれきを受け入れた自治体は北九州市だった。その北九州市も2012年9月から受入を開始し、2013年3月末で受入を終了している。受け入れた災害廃棄物の量は、約22,000トンとなっている。がれきの処理はすべて国が負担するスキームとなっていることから処理量が多ければ多いだけ国の税金がその自治体に投じられたことになる。

 このほど、北九州市のローカル紙「小倉タイムス」に極めて重要なニュースが掲載された。

 北九州市での受入は、被災地から1200kmも離れており輸送するだけでトンあたり5〜6万円もかかると試験焼却段階から批判されていた。最終的に同紙が情報開示請求を行って入手した情報から、北九州市内の清掃工場のひとつ皇后崎工場の改修費用の45億1500万円の全額が「循環型社会形成推進交付金」と「震災復興特別交付税」で国から補助されていることが明らかになったのだ。

 本来の循環型社会形成推進交付金の一般枠であれば、北九州市への補助額は1/2で、残りは北九州市が独自に負担しなければならなかったものが災害がれきを受け入れ、震災復興枠を利用したことにより、まるまる全額国庫補助となったと言うわけだ。これはいったいどういうことなのだろう。

 国も北九州市はじめ、受入を行った自治体は、広域処理によって早くがれきの処理が進んだと誇らしげにその成果を喧伝してみせたが、実態は、単なる補助金目当てと言われても仕方がない。わずか2万トンあまりのがれきを1200kmも輸送するため、通常の5〜6倍もの輸送費をかけ、結果として本来、震災地域とは関係のない、北九州市の焼却炉の改修費まで震災復興特別交付税で出していたというのは、まさに国民を欺く行為と言われても仕方がない。まして、北九州市内では、市民の混乱を引き起こし、果ては逮捕者まで出すに至ったことを考え合わせると、あまりにも酷すぎる。

小倉タイムス 2013年9月11日 記事


 環境省から別途入手した資料から、東日本大震災復旧・復興予算(循環型社会形成推進交付金)による支給額(施設整備に対する交付金)は合計238億円となっており、支給された自治体の内訳は、下図の通り、特定被災地方公共団体が104億円、63自治体であるのに対して、広域処理による受入対象自治体が134億円、15自治体となっている。つまり、被災自治体以外の自治体の方が額が多い。しかも自治体数が少ないので一自治体あたりの額は大きくなる。


 図1
出典:環境省資料の掲載ブログ:http://eritokyo.jp/independent/ikeda-col1377...html
上記ブログの中に掲載している環境省資料:
http://www.eforum.jp/FaxEnvToKinyo20130403.pdf

 さらに、広域処理に手を上げた自治体への交付額134億円の内訳を見ると、実際に受け入れをした自治体は5自治体に対して12億円であるのに対し、最終的に受入に至らなかった自治体10自治体に121億円が支給されているのである。その中の筆頭がこのほど市長選が行われた堺市で86億円として騒がれたが、北九州市の場合はどうなのだろうか。


 図2
出典:環境省資料の掲載ブログ:http://eritokyo.jp/independent/ikeda-col1377...html
上記ブログの中に掲載している環境省資料:
http://www.eforum.jp/FaxEnvToKinyo20130403.pdf

 東日本大震災復旧・復興予算(循環型社会形成推進交付金)による施設整備一覧を見ると、下図の通り、焼却施設整備、最終処分場整備、既存施設の延命化、リサイクル施設整備、施設整備等に係る調査等、施設の延命化に係る調査、ごみメタン化施設整備となっていることがわかる。災害ががれき処理とはまったく関係ない各自治体の施設整備や関連調査に使われたというのだから驚きだ。


 図3
出典:環境省資料の掲載ブログ:http://eritokyo.jp/independent/ikeda-col1377...html
上記ブログの中に掲載している環境省資料:
http://www.eforum.jp/FaxEnvToKinyo20130403.pdf

 つまり、北九州市はこのなかの焼却施設整備、または、既存設備の延命化と言った名目で交付金を受け、自分の皇后崎清掃工場の改修工事を行ったことになる。 結果として、北九州市での災害がれきの処理単価は、実際に北九州市が処理にかかった経費15億6000万円(北九州市が小倉タイムスに明らかにした額)に皇后崎清掃工場の改修費(交付金)45億1500万円を加えた合計60億7500万円で処理したがれき量約22000トンを割ると、トンあたり、26万8000円あまりとなるのである。 被災地で当初から分別を徹底し、エリア内に設置された仮設焼却炉で効率的に処理すればこの20分の1以下の費用で処理が出来たはずである。改めて、広域処理とは何だったのか、どこに責任があったのか、問う必要がありそうだ。

 被災地では、震災から2年半が経過しても仮設住宅での厳しい暮らしが続いている。国の税金は国民のものであり、決してこのような自治体の私利私欲のために使われてならない。不透明・不適切な税金の使途は徹底追求されるべきである。