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荒川区内工場跡地(都有地)
基準千倍超の土壌ダイオキシン!
メディア報ぜず

池田こみち(環境総合研究所)

掲載月日:2013年9月18日
 独立系メディア E−wave
無断転載禁


 今時、環境基準(1000pg-TEQ/g)の1100倍に当たる1,100,000pg-TEQ/gのダイオキシン濃度の汚染が都内にあるとは驚きの事実である。しかも大学キャンパスのすぐ隣である。新聞やテレビなど大メディアはこの事実を全く報道していない。 


超高濃度ダイオキシンが検出された位置

 世間は東京オリンピック招致決定で大騒ぎしているが、東京都内の環境汚染に目をつぶるのは国際社会に向けての裏切り行為ではないだろうか。


 図−1a  汚染地域の衛星画像  出典:グーグルマップ


図−1b  汚染地域の施設配置図(出典:東京都下水道局)


現地の立体写真  出典:ストリートビュー

 福島の汚染水問題も重要だが、都民はまず、足下の汚染にもっと眼を向ける必要がある。ダイオキシン濃度が1グラムあたり100万ピコグラムを超えるなどという汚染はこれまで国際的に見ても極めて希なケースである。

 しかも、高濃度が発見されたのは、首都大学東京荒川キャンパス北側に隣接する東京都下水道局の東尾久浄化センターの敷地内で、地下2mの地点となっている。

 図1に示したように、周辺には都営町屋五丁目第三アパート、区立町屋五丁目住宅、都立尾久の原公園(テニス場、ゲートボール場)、東尾久運動場(多目的広場)などが立地している。

 まさに、都民の居住する場所、子どもが遊ぶ場所、お年寄りが集う場所の汚染が明らかになっている。ドイツ連邦土壌保護法の指針値では100pg-TEQ/gを超えるところは子どもの遊び場として不適切とされている。

 東京都はこの事実をなぜしっかりプレスリリースしなかったのか、また、報道発表されている情報に東京都詰めの記者連中はなぜ気がつかないのか。まさに、メディアの怠慢と言われても仕方がない。

 首都大学東京荒川キャンパスに確認したところ、キャンパス内土壌は深度調査の対象となっておらず、これまで敷地内でダイオキシン濃度の基準超過はないため(環境基準ぎりぎりの1000pg-TEQ/gは検出されているが)、学生等に対して何ら注意喚起等の情報提供やアナウンスは行っていないという。

 この問題の経緯は以下の通りである。

敷地概要

 住所:荒川区東尾久7−2
 面積:74,000u
 土地履歴:大正 7年〜昭和54年 旭電化工業(株)
      昭和58年〜昭和59年 旭電化工業(株)による汚染土壌対策工事
                (水銀及び鉛)
      昭和60年 工場跡地が東京都へ引き渡される
      平成 4年〜平成11年 高度処理施設(砂ろ過施設)工事
      平成18年〜     西日暮里系ポンプ室建設工事

 注)旭電化工業(株)は現在 (株)アデカとして電解法によるか性ソーダの
    製造からスタートし、現在はプラスチックの添加剤など多様な化学
    製品の製造を手がけている。

   沿革は以下の通り。
   http://www.adk.co.jp/company/history.html

@東尾久浄化センター建設用地内におけるダイオキシン類の検出について
  平成24年12月22日 東京都下水道局

  http://www.gesui.metro.tokyo.jp/oshi/infn0681.htm


  工事に伴って発生する土砂を受け入れる深海面処分場の発生土受入
  要綱に基づき検査した結果、仮置き中の掘削土1検体、工事箇所土壌
  112検体中4検体について最大2300pg-TEQ/g〜1100pg-TEQ/gの範囲
  で基準超過となった。重金属類についても基準超過が見られた。


 図2 浄化センター工事箇所と仮置き土壌の位置(出典:東京都下水道局)

A荒川区東尾久浄化センター隣接敷地のダイオキシン類及び重金属等の
  土壌調査等の結果について 平成25年4月4日 東京都下水道局

  http://www.gesui.metro.tokyo.jp/oshi/infn0714.htm
  http://www.gesui.metro.tokyo.jp/oshi/infn0714/kekka_0714.pdf

  上記を受けて、隣接する地域の土壌について平成25年1月から調査を
  行ったところ、 隣接地の公園、運動場、住宅団地、大学(首都大学東京)
  キャンパス内の表層土壌から基準値を超過する高濃度のダイオキシン類
  が検出された。最大値は都営町屋第三アパート隣の運動場から6200pg-
  TEQ/gが検出されている。


 図−3a  採取箇所(施設配置図)(出典:東京都下水道局)


 図−3b  周辺地域ダイオキシン結果(出典:東京都下水道局)

  首都大学東京荒川キャンパス内の土壌37検体のうち、1検体が1000pg-
  TEQ/gであったが、基準値以内としてその後は調査が行われていない
  模様である。

B東尾久浄化センター建設用地内のダイオキシン類及び重金属等の
  土壌調査の結果について 平成25年9月11日 東京都下水道局

  http://www.gesui.metro.tokyo.jp/oshi/infn0759.htm

  そして、Aを受けて、この度、下水道局建設工事敷地内の深層土壌に
  ついての追加調査を行いその結果が発表された。その結果ダイオキシン
  類については;
   総検体数 449検体
   1,000〜3,000pg-TEQ/g未満 35検体
   3,000〜10,000pg-TEQ/g未満 23検体
   10,000pg-TEQ/g以上 12検体
 
 最大値は、1,100,000pg-TEQ/gで、検出された場所は首都大学東京荒川キャンパスに隣接する敷地内、深さGL-2mの地点である。


  図4 敷地内の土壌深度調査結果ダイオキシン(出典:東京都下水道局)

 1998年に大阪府の能勢町で焼却炉敷地内土壌から5200万pg-TEQ/gのダイオキシン類が検出されて以来の高い濃度の汚染の発覚である。行政も大学当局もこうした事実を直視せず報道機関への適切な発表も行わないとすれば看過できないことである。