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廃プラ焼却実証確認試験問題
学習会


池田こみち・鷹取敦
 
2010年1月30日 無断転載禁


 1月30日(土)豊島区民センターにおいて「23区廃プラ焼却・市民と専門家が検証する」と題する学習会が開催された。

 東京23区において平成20年度から始まった廃プラの「もやすごみ」への変更に伴って行われた「実証確認試験」の評価を、政策・方針転換の当事者である東京二十三区清掃一部事務組合(以後「一組」と表記)に任せるのではなく、市民側の評価として専門家に依頼して第三者的立場から行うという試みのいわば立ち上げの学習会である。今回の学習会の会場の窓からは、豊島清掃工場の210メートルの煙突が見える。

豊島清掃工場煙突

 なお23区における廃プラ焼却問題については、
独立系メディア「今日のコラム」の<ゴミ>スレッド
http://eritokyo.jp/independent/today-column-waste.htm
に既に多くの論考が掲載されている。

 実証確認試験は、一組が開催してきた検討委員会(サーマルリサイクル実証結果の確認等検討委員会)において検討されてきたが、すでに平成21年度から廃プラ焼却が全区で本格実施となり、あと数回の開催を残すばかりとなっている。

 この検討委員会は、廃プラ混合焼却への転換を図った当事者である一組自身によるものであるため、廃プラ焼却に問題ありという結論が出ることはありえない。これでは科学的な検討でも無く、第三者性もない。ごみを出し、焼却事業の費用を税金で負担し、排出された排ガス等の影響を受ける区民としては、このような検討で納得できるはずもない。

 NPO法人ごみ問題5市連絡会の青木泰氏が司会を務め、ストップ温暖化・廃プラ焼却連絡会の代表の挨拶から始まった。その後、これまでの経過報告および趣旨の説明の後、23区廃プラ問題に関連する今後の集まり等として2月6日、7日の環境行政改革フォーラム発表会の一般発表の分科会の1つで関連する報告があること、3月6日のシンポジウム等の案内があった。

 本題の報告として、まず池田こみち(環境総合研究所副所長)より23区一組による600ページに及ぶ実証確認試験のデータから分かる問題点を技術面、政策面から整理して概説した。

 その後、鷹取敦(環境総合研究所調査部長)より、実証確認と称して何が試験されたのか、について解説の後、データに基づいて、調査のあり方の問題点、調査結果から分かること、ごみの組成の調査の問題点、環境大気の測り方の問題点、焼却灰、飛灰、汚泥、スラグ等の調査結果から分かること等をグラフや図を示して1つ1つ説明した後、質疑を行った。

鷹取敦

 休憩後には、池田より、豊富なデータを用いて、日本の廃棄物政策の現状、廃棄物処理に関連するダイオキシン、重金属類やPBDEなどの未規制物質による環境汚染の現状、マツの針葉を生物指標とした市民参加による環境監視調査による現状把握の意義とその結果わかったこと、排ガス測定の方法の問題等の関連する問題についての講演を行った。

池田こみち

 中間質疑および、池田の講演後の質疑、議論では;
  • 一組の実証実験では誰がこんないい加減な調査計画を立てるのか、

  • 測定データの生データが開示されず整理された結果だけが提示されていることの問題、市民委員からの生データ開示の請求にも一組が応じなかったこと、

  • 分析作業で未知の物質が検出された場合には一組の実証実験ではどう扱っているのかという疑問、そもそもPBDE等の既知の有害物質でさえ対象としていないものが多いとの指摘、

  • 大気を測定する場所を決めるのに環境アセスメントの結果を参考にしていないのはおかしいという指摘、アセスメントそのものの大気汚染の予測方法には重大な問題があるし、1日単位で大気を測定しても意味がないという指摘、

  • 廃プラ焼却問題以前にプラ製品を作ることの問題もあるのではないか、製造の規制も大事だが、廃プラを処理するのに一般廃棄物焼却炉に余力があるからといって焼却する今の考え方そのものを見直すことが重要。焼却処理やリサイクルは事業者の責任でよりそれに適した施設で実施すべきとの指摘、

  • 意味のない調査結果でも一組に取っては「問題ない」と主張する調査になってしまっているとの指摘、
などをはじめとする、活発な質問、発言があり、参加者の関心と問題意識の高さがうかがわれた。そもそも廃プラ焼却は「問題ない」という結論が先にありきの調査であり、延べ65回にも及ぶ膨大な分析調査費をかけて分厚い資料が提出されても、自分で問題をつくり回答し採点している「自作自演」に他ならず、区民の理解を得るに足るものとは言えない、という点に疑問が集中した。

 最も身近な環境問題である廃棄物政策の大きな路線変更にも関わらず、科学的な検討を装った「実証確認」と、形式的な市民参加を持って廃プラ焼却が強行されつつある。この問題を多くの人と共有しなければとの感想が参加者から聞かれる学習会であった。