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オンズブズマンが問う
公共事業


その1 港湾事業(1)


川田賢司

全国市民オンブズマン連絡会議 幹事
市民オンブズ・なら 代表委員

掲載日:2006.6.13

 今回から数回に分けて全国市民オンブズマン連絡会議幹事で市民オンブズ・ならの代表委員をされている川田賢司氏に、オンズブズマンがと言う公共事業と題して執筆していただきました。
                  独立系メディア「今日のコラム」 
                  設置管理・編集責任者 青山貞一

皆さんは「スーパー中枢港湾」と言う言葉を耳にされたことがあるでしょうか。

 平成16年(2004年)7月23日国土交通省が指定したもので、「港湾整備事業に於ける新たな公共投資の仕組」と言えるものです。

解説によるとスーパー中枢港湾とは、次のごとくになります。


 官民が一体となって、ITの導入、コンテナターミナルの整備、運営方式やコンテナ物流システムの改革を推進し、国の予算面からも日本の中心的な港湾として支援する対象となる港のこと。

 スーパー中枢港湾では、アジアの主要港を凌ぐコスト、サービスの実現を目指し、港湾コストの3割削減、リードタイム(コンテナが本船から港に陸揚げされてから引き取り可能となるまでの日数)の短縮などの目標を掲げている。

 2004年7月には国土交通省が、スーパー中枢港湾に京浜港(東京港・横浜港)、伊勢湾(名古屋港・四日市港)阪神港(神戸港・大阪港)の3港湾を指定。 北九州・博多の2港も検討されたが、コンテナ取扱量が3大港湾に比べて少ないことなどが影響し、指定は見送られた。

 昨今、アジアの主要港が繁栄しているのに対し、日本の港湾の衰退化が懸念されているため、政府や港湾業界、港湾を利用する業界などがこの構想に期待を寄せている。港湾整備計画のことなのです。


出典: スーパー中枢港湾 【カテゴリー】運輸/物流
     【よみ】すーぱーちゅうすうこうわん
http://www.blwisdom.com/word/key/100319.html

 東京都はスーパー中枢港湾構想について、日本の港湾の国際競争力強化に向けて、『アジア諸国の主要港湾を凌ぐ港湾コスト・サービス水準の実現』を目標として、国土交通省主導のもと、先導的・実験的に施策を展開していく港湾のことを「スーパー中枢港湾」といいます。

 首都圏のくらしと産業を支える「東京港」「横浜港」からなる『京浜港』のスーパー中枢港湾指定によって、国際貿易港としてより発展していくよう、両港が連携してさまざまな取り組みを進めています、と説明しています。詳しい事業内容を見ると、

以下のようなものがあります。


大井ふ頭 : 連続7バース 
       延長 2,354m
       水深 -15m
       奥行 405m〜630m

青海ふ頭 : 連続5バース  
       延長 1,570m
       水深 -13m 〜 -15m
       奥行 350m〜560m 


出典: 東京都港湾局、大井ふ頭、青海ふ頭において次世代高規格
    コンテナターミナルの形成を目指す。

http://www.kouwan.metro.tokyo.jp/jigyo/super/kosshi.html

 大井ふ頭は1例ですが、結局岸壁や浚渫工事などの土木工事と、管理庁舎のような箱物の建築が主力になることは間違いないようです。

 さてこのスーパー中枢港湾が出てきたいきさつであるとか、かける事業費については次回以降に掲載させていただくことにして、はじめに港湾の現状を考えてみたいと思います。

 全国市民オンブズマン連絡会議は、2001年(平成13年)8月4日5日の両日、京都市内の立命館大学で、第8回全国大会を開催しました。

 主要なテーマの1つは、巨大公共事業の闇の解明でした。公共事業委員会の広田次男委員の報告には、公共事業の問題点を正面から取り上げる委員会として1年間やってきました。

 出発点となった議論は単純素朴なものでした。巨大公共事業は、予算取りの段階では、いずれも膨大な「需要予測」「経済波及効果」といった数字を誇示するのですが、ハコモノの完成と同時に「予想を下回る実際」といった新聞記事を目にし、その後に赤字が報じられるのが常なのです。

 このようなカラクリがなぜ堂々とまかり通るのでしょうか、まずは公共事業の「出生の闇」に光を当てることにした。対象は4つで、空港、港湾、高速道路、そしてダム。

 方法は3つ、第1は、計画当初の需要予測と完成後の実際の数字の比較である。例えば、東京湾アクアラインの利用実績は、需要予測に対し約3割にすぎなかったのです。

 (大会のこの発表当時:通行料割引など利用拡大に政府は、大あわてたとなった。)第2は、キャッチフレーズ。「歯の根の浮くような」キャッチフレーズを伴っています。

 全く赤字の福島空港
2000mを2500mに、それをさらに3000mと拡張するときの言い分は、「2002年には、日本の首都が福島になる」でした。

 首都霞ヶ関の官庁街では、改築を大々的に進めている一方で福島では、すでに首都移転は確定していたのだ。第3は、「笑う以外にない」豊富な事例をそれに付け加えることにあります。

 
 500
億円の建設費を要した福井港は、船舶の利用が殆どないため、魚の寄付きがよく釣り人に大人気で、「100億円の釣堀」と呼ばれているなど。ほかにも、「熊、鹿専用道路」、「狸の道」などでです。

 ここで港湾を見ていきましょう。空港、ダム、高速道路は次の機会にすることにします。

 港湾の状況については倉橋克実委員が報告をしています。

 2000年(平成12年)4月現在、日本には、商工業港の重要港湾が128港(そのうち特定重要港湾が21港)、地方港湾が960港あります。各県に港が平均23港あるということになります。

 別に漁港が約
3,000港ある。これ以上港の新設、拡張が必要なのか。国の第9次港湾整備7箇年計画(平成8年度〜平成14年度)の総事業費は74,900億円を見込み、その内、港湾整備事業費は43,100億円を計上しています。

100億円の釣堀」(実際には450億円以上投入されているので、500億円の釣堀?)と揶揄され、その後重要港湾から地方港湾に格下げされた福井港は、その利用率が当初計画の10%程度に過ぎず、埠頭や防波堤がもっぱら釣り場に利用されたため、皮肉を込めて「釣堀」と呼ばれるようになったのです。

 福井港のような港は他にはないのでしょうか。公共事業専門委員会が各地のオンブズマンの協力を得て調査した結果、第2、第3の釣堀が噴き出てきたのです。

 最大貨物取扱量が港湾計画にある取扱貨物量に対し、
50%を割る港湾が、調査終了した48港の内7港もあったのです。和歌山県日高港は計画の13%、宮城県塩釜港は22%、徳島県橘港は25%、岩手県久慈港は27%、北海道石狩新港は39%といった具合です。

 しかも一度でも計画取扱量に達した港はたったの
7港だったが、大方の6港は取扱量が減少に転じ、平成11年には計画を大きく割り込んでいたのでした。

 唯一減少していないのは今治港だが、フェリーの増加によるもので、海外との貿易量には何ら関係がなかったのです。

 平成8年から平成11年の4年間の取扱貨物量の増減傾向は、調査終了した港湾86港の内約80%に当たる67港が減少傾向にあり。最大貨物取扱量を達成したのは、約8割が平成9年以前だったのです。

 政府は、わが国における海外貿易額の43%がコンテナによる貿易となっており、東京港、大阪港をはじめとした主要5大港においては約80%コンテナ化されています。

 だから、第9次港湾整備7箇年計画では、水深15mのコンテナ埠頭を50バース新設(大井埠頭は8減7増の改良)することにしています。

 水深15mの埠頭を1バース造るには300億円程度の資金が必要となったわけです。

 コンテナを6000個積んだ世界最大のコンテナ船が入港できる「中枢国際港湾(国際ハブ港湾)」を造らなければ国際競争に負けるのだそうです。

 国際海上コンテナターミナルの整備として東京港、常陸那珂湊など18港の事業費として6020億円を計上したのです。

 しかしながらコンテナは平成9年をピークに平成10年には減少に転じていきます。公共埠頭の最大取扱貨物量のピークの多くが平成9年であったことと機軸は一致しているのです。

 全港湾の80%近くで貨物取扱量が減少している現在、2010年までにコンテナ貨物が倍増するという「需要予測」を信じるものなど皆無のはずですが、2010年コンテナ倍増の前提に立って第9次港湾整備5箇年計画のコンテナ事業整備計画が立てられ事業は協力に推進されています。

 またしても巨大海釣公園の誕生となるのでしょうか。

つづく