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仙台市松森焼却工場問題
への意見申し入れ


池田こみち

掲載日:2005.5.20


松森清掃工場(泉区)の概要>

 地上6階、地下2階、延べ床面積47,000u、3炉を備え、一日あたり600トンの焼却能力をもつ仙台市の巨大な焼却炉(ストーカー炉)。

 老朽化した小鶴工場(宮城野区)の代替施設として2000年に着工し、試運転を2005年3月31日に終え、4月1日に三菱重工から仙台市への引き渡しを行う予定となっていた。

 焼却炉は、三菱重工のストーカー炉、余熱利用の発電設備なども備え、排ガス対策としては濾過式集塵装置と触媒反応施設を備え、排ガス中のダイオキシン類濃度は規制値の0.1ng-TEQ/m3Nの10分の1の0.01ng-TEQ/m3Nを維持することを仙台市長は議会答弁で仙台市民約束している。

 総事業費は365億円、トンあたりの建設費は5000万円を超えている。

 この事業に対し、周辺住民がその必要性を当初から疑問視し、また、0.01ng-TEQ/m3Nを監視し保証するための排ガス中ダイオキシン類の連続監視システムの取り付けをめぐる訴訟を提起している。

 2004年12月の仙台地裁の判決では、連続監視装置を取り付けないことは違法とは認められなかったものの、周辺住民の要望を執拗に拒否する仙台市の姿勢に対して裁判所から苦言が呈される異例の判決内容となった。

<トラブルの概要>

 今回の事故は、まさに周辺住民の危惧が露呈したものであり、事故が生じた際にどの程度の有害物質が環境中に排出されたのかについての検証が現状ではまったくできないことを明確に示す格好となった。試運転中にモニタリング装置が稼働していなかったことは致命的である。

 地元住民団体は、事故を受け、すぐさま裁判所に差し止め請求を行い清掃工場の証拠保全を裁判所に求めた。5月23日から差し止め請求に関する審尋が開始されるが、その中で改めて三菱重工の体質とともに、仙台市がいかに市民の側にたった対応を行ってこなかったかが明らかにされることになるだろう。

 なお、最も歴史が長く経験も豊富とされているストーカー炉の試運転段階で今回のようなトラブルが生じること自体極めて異例であり、三菱重工側は、今後の対策(恒久対策)として、さらなる装置の付加を提案している。このことは、現在の設備そのものに欠陥があったことを示すものであり、何重にも取り付けられた排ガス処理装置がシステム全体を一層複雑なものとし、危険と裏腹な技術であることを裏付けたものである。だからこそ、常時排ガスの状態を第三者的に監視できる装置の取り付けが最低限、求められているのである。


松森清掃工場位置図:台市泉区松森字城前地内 出典 仙台市

 ◆住民団体・弁護団による仙台市長への申し入れ(PDF)

 ◆環境総合研究所の意見書(PDF)

 ◆東京新聞こちら特報部記事(2005.5.21朝刊)


 以下は関連する新聞記事。

仙台・松森工場1号炉停止 三菱重のミス続出

河北新報 2005年05月21日土曜日
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 仙台市泉区のごみ焼却施設「松森工場」で、試運転中の1号炉が大量のばいじんを排出し、緊急停止したのは、炉を建設した三菱重工業(東京)の現場担当者の度重なるミスが原因となった可能性が高いことが20日、分かった。

 市環境局によると、緊急停止する3日前の3月28日、蒸気を冷却する低圧蒸気コンデンサーの部品「大気放出板」を操作ミスで破損。工場には、この部品を常備しているはずだったが、在庫切れというミスを重ねた。

 同社は、破損した部品を急きょ、台湾から取り寄せたが、部品取り付けまで長時間、ボイラーは種火を残したままの状態にされた。これが、不完全燃焼ガスを大量に発生させる原因をつくった。 31日の再稼働後は、1号炉の触媒反応装置に2、3号炉の排出ガスを誤って集約させた。このため、ばいじん発生の原因となった不完全燃焼ガスが触媒反応装置に蓄積した。

 不完全燃焼ガスがこの装置を通過する際、排ガス再加熱器により極端に短い時間でガスの温度を上げたため、大量のガスが一気に燃焼したとみられる。 松森工場では1号炉に加え、3号炉でも基準値を超えるばいじんが排出された可能性が高いことから、点検のため13日に2、3号炉も停止。最悪の場合、6月半ばにも市内のごみ処理がパンクする事態となっている。

 仙台市議会は20日、三菱重工業の責任者を参考人招致することを決めた。同社東北支社(仙台市)は「事実関係を詳細に調査した後、誠実に対応したい」と話している。

松森工場問題/市長に怒りの声相次ぐ

朝日新聞 宮城支局 2005.5.19
http://mytown.asahi.com/miyagi/news02.asp?kiji=6817
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 仙台市のごみ焼却施設「松森工場」(泉区)が全面停止した問題で、同工場の周辺住民らで構成する5団体が18日、第三者機関による原因究明などを求めて藤井黎市長あてに申し入れをした。だが、藤井市長は不在で、住民団体からは「市長は逃げている」と怒りの声があがった。

 申し入れでは、第三者による委員会が原因究明にあたること、市長自らが現地で周辺住民に説明することなどを求めている。

 住民側は、今回の3号炉のトラブルでは1号炉と同様に高濃度のばいじん、ダイオキシン類などが排出された可能性があると主張する。団体代表の桑原信淑さんは「有毒物質が処理されないまま、欠陥工場を1カ月間を稼働させた」と批判。藤井市長への直接の申し入れが実現しなかったことについても、「市民をないがしろにする市長の態度が一番の問題だ」と反発した。

 住民団体は19日、工事の施工業者である三菱重工業にも申し入れる。

 住民団体などが起こしている松森工場の2、3号炉の操業停止を求める仮処分申請の第1回の審尋が23日に仙台地裁で行われる予定だ。


仙台・松森工場 2号炉再稼働を検討、来週中に調査

河北新報 2005.5.19
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 仙台市泉区のごみ焼却施設「松森工場」の3炉すべてが停止している問題で、仙台市は19日、安全確認のため停止している2号炉の再稼働に向けた検討を始めた。

 市内のごみ処理が追いつかなくなる恐れがある中、青葉区の「葛岡工場」1号炉の法定点検延期について国が難色を示しており、松森2号炉の早期の稼働態勢を整える必要があるため。

 松森2号炉は、1、3号炉で相次いでトラブルがあったため、点検のため14日に運転を停止させた。触媒反応装置を解体し、目視で触媒や装置近くの煙道などを調べたところ、「19日までに異常は見つかっていない」(市環境局)とい
う。

 市は今後、触媒の内部のばいじん付着状況などを調べ、来週中にも調査結果をまとめる。その後、十分な安全性を確認した上で、再稼働にこぎ着けたい考えだ。 また、市は葛岡1号炉で6月12日―8月6日に予定されている電気事業法に基づく点検の延期を国に求める作業も並行して進めている。

 葛岡1号炉は、3月31日にボイラー近くの配管が破損し緊急停止、4月9日に配管を交換して運転を再開した。経済産業省の関東東北産業保安監督部東北支部は「抜本的な改善が必要」との認識から、法定点検の延期に難色を示している。 このため、市は交換する配管部分の範囲拡大を検討。配管が破損したトラブルの原因などを特定した最終報告書を来週中にも監督部に提出し、法定点検の延期を求める。

2005年05月19日木曜日

仙台・ごみ焼却場ばいじん問題:
「三菱重工は説明を」−−仙台市議会 /宮城
 ◇責任者の出席要求へ


毎日新聞 宮城 2005.5.20
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 仙台市泉区のごみ焼却場「松森工場」が全炉停止している問題で、仙台市議会は19日、焼却炉を製造した三菱重工業に対して、説明を求める方針を決めた。20日の経済環境常任委員会協議会で、市環境局の説明を受けたうえで、正式に決定。議長を通じて、同協議会への同工場担当責任者の出席を要求する。

 関根千賀子・同委員長に、三菱重工の責任者を協議会招致することが「委員長一任」の形で了承された。招致に法的な強制力はないが、関根委員長は「市も三菱重工の説明をそのまま繰り返すだけ。三菱重工からどのような調査をして、これからどうするつもりなのかを直接聞かなければ始まらない」と話した。

 委員の佐藤正昭市議は「地域住民や市民に、説明責任をきちんと果たすべき。会社を代表して答えられる担当者が来てほしい」と話し、同社に対して役員級の出席を求める声が上がっている。

 また、19日午前、最大会派のみらい仙台が松森工場を視察した。【棚部秀行】

毎日新聞 2005年5月20日