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落選運動を主導する

韓国のNPO「参与連帯」
(その2)

青山 貞一
政策学校「一新塾」代表理事
武蔵工業大学環境情報学部教授

掲載日:2005.3.6

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※一新塾:政策学校、非営利活動法人一新塾の略。
        大前研一氏が設立、政策コースと起業コースの2コースを
        もった私塾。現在、青山貞一、片岡勝、森嶋信夫の3名が
        代表理事、青山は政策コースを担当している。


 以下は、参与連帯事務所で私たちとの質疑応答の概要である。

質疑応答

Q 4つの基準のうち腐敗しているというのは、どのような調査をし、誰がどういう方法で決定しているのか。

A 4つの基準のうち特に強調しているのは、腐敗した政治家を落とすこと主な目的にしていることだ。司法処理されて、懲役なり執行猶予がついた人は、無条件で落選運動の対象となる。また、過去にそのようなことがあったひとも同様である。判決が出る前は不公平なので、あくまでも判決が出た時点で対象としている。

Q 候補者から訴訟を受けた例はあるか。

A 2000年に名誉毀損の損害訴訟を受け、敗訴し、賠償金を払った。しかし、落選運動そのものの活動は不法、違法なものではなく、発想自体は、法的に問題はないと思っている。有罪とはなったが罰金で処理できた。

Q 落選運動は、日本では公職選挙法があって「違法性」が高いと思うが、韓国は日本と法律が違うので問題ないのか。

A 韓国でも選挙法はあるが、選挙法には、落選運動には関する規定はない。2000年に市民が政治参加するよう改正したので、落選運動ができると解釈した。2000年の選挙の時、名誉毀損で罰金を払ったが、落選運動そのものには、大きな違法性はなかった。落選運動の対象である候補者の氏名を流すことについては、特に司法的な規制を受けなかった。

Q 韓国の選挙法87条では、市民団体が選挙運動をすることを禁止しており、これを根拠に運動をストップさせようとする動きもあったようだが、政治家の側からの圧力をどうはねのけることができたのか。

A 87条に市民団体は選挙運動をしてはならないという規定はあるが、公開討論会のようなことは日本と同じにように認められている。10人を落としたいと考える場合には、10人が牢屋に行く覚悟が必要であり、そのような固い決心を持ってこの運動を始めた。

 落選運動に対する国民の支持率は、低くても70%程度はある。国民からの支持が運動のバックボーンにある。国会でもそれに驚き、推薦段階や公開討論会までは認めるという改正を行った。落選運動が逆推薦した候補の50%程度の人たちが、政界を引退したり、選挙に出るのをあきらめた。残りの50%は、立候補したが、その中の2/3が落選した。当初10名だけ落とせばよいと考えていたが、59名落とす結果となり、大成功であった。

Q 日本では、選挙と候補者が特定していると選挙前であっても、このような運動は違法となると考えるが。

A 韓国では、推薦段階における落推運動、終わった後の落選運動の2つに分けて運動をした。

Q テレビで若い人が、携帯のメールで流すのを見たが、運動の意図が最後の方の人まで伝わるか。最後の方は、誹謗中傷が飛び交う心配はないのか。逆推薦された者から、参与連帯へ訴訟以外の対抗措置はなかったか。

A NGOコリアという大きな団体がインターネットで落選運動を進めた。インターネットの普及により、落選運動の形態も大きく変わった。効果的な運動ができた。私たちのジレンマは、インターネットの利用者が、20歳以下の割合が大きいことである。選挙権者に落選運動の情報を伝えることが課題であり、検討をしている。

  国会では、インターネットでメールを送ったり、意見を公表するときは、自分の名前を書かなければならないというインターネット実名制(漢字不明)という制度を決めたが、参与連帯は、それに反対している。私たちこの法律で打撃を受け、プライバシーの問題もあるので、廃止するよう運動を進めている。

  名誉毀損には、虚偽の場合と事実の場合でも名誉毀損とされる場合の2つがある。私たちは、後者で有罪判決を受けた。国会議員は、事実であっても自己の名誉に関わることであると提訴するが、私たちの活動は国民は知る権利があるということを基本においている。実際の裁判では、負けた例もあるが、これについてはあまり判例がなく司法も混乱しており、無罪となった例もある。

  どのように対抗したかであるが、それは国民の世論を元に対抗するしかない。

Q 15代国会の時に78の立法提案を国会に提出し、半分くらい成立したという話であるが、なぜ可能になったのか。その背景の一つに市民団体の大同団結ということがあると思うが、それが難しい日本に何かヒントはあるか。

A 立法提案だけでなく法案も書いて国会議員と交渉した。成立、却下等あるが、国会議員が嫌うような法律は成立しなかった。15代国会では、参与連帯が国会腐敗防止法を出して、299議員の内、159名が賛成したが、最終段階で処理ができなくなり通過できず、16代国会で私たちが出したのとは、すこし薄れた内容で成立した。

  市民団体は、日本より韓国の方が弱いと思っているが、弱いからこそ大同団結して戦わなければ勝てない。日本のことはよくわからないが、大同団結しないのは、危機感がないからではないか。

Q 国会における法案採決の際、日本でいうところの党議拘束は、どの程度強いのか。

A 韓国にも党議拘束はあり、100%かける党もあるが、どうしてもそれに反対したい議員は、党でかなり締め付けられる。17代国会では、党によっては、かなり緩和されて、個人、議員の自由を認める雰囲気になっていることは確かです。今でも、党議をはずれると言うことは、かなり難しい。

Q 不適格者の選定のプロセスの中で、一方的にリストに載せられてしまうのか、釈明の機会を与えられるのか

A 一番最初に質問書を送る。その中では、こういう事実があるが、事実かどうか、本当であれば、なぜこのようなことが起こったか説明してもらい、その説明もあとで調べる。落選運動の対象者にする場合も、一方的にするのではなく、そのようなプロセスを踏んで、対象者には釈明の機会を与えている。