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アムネスティ・インターナショナル日本
「君が代」斉唱の強制に強い懸念を表明


掲載日:2004.6.12

 アムネスティ・インターナショナル日本は、2004年6月8日、君が代の斉唱に関して、生徒を起立斉唱させるよう指導することを教師に義務付ける職務命令を出す旨を東京都の横山教育長が都議会で発言したことに対し、強い懸念を表明する。

日の丸、君が代の強制については、すでに国旗、国歌法の国会での審議中、また審議後も、思想、良心の自由の侵害にあたるとする数多くの批判が寄せられている。そして何よりも、国旗国歌法を根拠とする君が代の斉唱などの強制および、それに反対する意思表明をした人びとに対する処分は、憲法第19条および自由権規約第18 条の思想、信条の自由、憲法第21条、自由権規約第19条の表現の自由、などに対する重大な違反行為である。

教師に対する一般的な指導という形式をとっているものの、この間、卒業式などでの君が代斉唱の際の不起立により、すでに都の教職員238 人が職務命令違反で戒告などの処分を受け、生徒が起立しなかった学校の67人が注意や指導などの処分を受けていることなどを踏まえると、現在、思想、良心、表現の自由の重大な侵害が進行していると指摘せざるを得ない。また、こうした動きは、君が代斉唱の際の音量を計測した福岡県教育委員会の例など、全国に広がりを見せている。

アムネスティ日本では、すでに2000年4月16日、日の丸、君が代の強制が良心の自由を侵害するものであることを指摘する宣言を総会において採択している。しかし、その後の情勢は、思想、信条の自由、表現の自由を配慮した慎重な対応などではなく、一律に強制力を増す方向で運用されている。これは、自由権規約をはじめとして、日本も締約国となっている人権諸条約に明確に反する施策である。
また、日の丸、君が代の子どもへの実質的な強制は、子どもの権利条約第12条、第13条、第14条に反する重大な人権侵害であるとともに、外国籍の子どもたちの存在を考え合わせると、人種間の分断を強化する動きを禁じる人種差別撤廃条約にも抵触する可能性がある。

以上を踏まえ、アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府および関係当局に対し、教育現場への日の丸、君が代の強制を直ちにやめるよう強く求めるものである。

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(参考資料)

日の丸・君が代に関する良心の自由宣言

日本国憲法は、思想・良心の自由を保障し(第19条)、市民的及び政治的権利に関する国際規約は、これを具体的に「この権利には、自ら選択する信念を受け入れ又は保持する自由(第18条第2項)、単独で又は共同して、公に又は私的に、その信念を表明する自由を含む」(第18条第1項) 「何人も自ら選択する信念を受け入れ又は保持する自由を侵害する恐れのある強制を受けない」(第18条第1項)」と定めている。

国家行政組織法は、「(各大臣が発する省令=命令)には、法律による委任がなければ、罰則を設け、義務を課し、国民の権利を制限する規定を設けることができない」(第12条)と定め、命令より下位の法形式である「告示」(第14条)によっては「義務を課し、権利を制限する」ことを認めていない。
去る1999年に制定された国旗・国歌法は、義務づけ規定を置かず、また、これを省令に委任する規定もない。しかるに文部省、各地方自治体の教育委員会は、「告示」に過ぎない学習指導要領を根拠として、教職員に対し、日の丸・君が代に関する業務を義務づけ、これに従わない教職員を地方公務員法違反として、減給等の不利益処分を課し、また、子ども・生徒・保護者が、日の丸・君が代に関して自ら選択する信念を受け入れ・保持・表明することも困難にしている。これは、憲法・国際人権規約などの諸法規に明白に違反する行為である。

アムネスティ日本支部は、政府及び自治体の行為によって、日本全国各地で「思想・良心の自由」の侵害が生み出されていることを深く憂慮し、政府及び自治体が日本国憲法を尊重・擁護し、国際条約・法律を誠実に遵守・執行することを求めると共に、すべての人がこれらの自由を不断の努力によって保持することを希って、ここに日の丸・君が代に関する「良心の自由」を宣言する。
2000年4月16日

アムネスティ・インターナショナル日本支部2000年度総会
http://www.incl.ne.jp/ktrs/aijapan/2004/0406090.htm