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新幹線禁煙車にも「煙害」
 
喫煙車から流入?国基準超す


朝日新聞(2004.12.11)


 新幹線の禁煙車に座っていても隣が喫煙車ならたばこの煙害を被ることが、東京大大学院の研究生らの調査でわかった。乗降時や検札、車内販売などで自動扉が開くたびに煙が流れ込むためらしい。携帯電話をかけにデッキに移動する客が増えたことも影響しているという。喫煙車が満席だと、禁煙車内の浮遊粉じん濃度が国の基準の約3倍になる時もあった。

 調査したのは、東京大大学院医学系研究生の中田ゆりさんと、産業医科大(北九州市)の大和浩・助教授。中田さんらは10月に数日間、東京―新神戸で、たばこの浮遊粉じん濃度をデジタル粉じん計で1分ごとに測定した。

 ほぼ満席の喫煙車内では1立方メートル当たり最大1.5ミリグラムに達し、平均で0.79ミリグラムだった。これに対し、隣り合う禁煙車では最大0.42ミリグラム、平均でも0.18ミリグラムで、厚生労働省の基準値(0.15ミリグラム)を超えた。

 喫煙車の乗車率が4割程度だと、禁煙車の濃度は平均0.05ミリグラムと基準値を下回った。喫煙車に隣り合っていない禁煙車内だと平均0.03ミリグラムだった。

 03年5月施行の健康増進法は、多数が利用する施設や鉄道車両の管理者に対し、受動喫煙の防止を義務づけている。ただ、管理者の努力義務にとどまり、違反しても罰則はない。

 中田さんは「喫煙車に隣り合う禁煙車は『隣煙車』などの表示に改め、子どもや妊婦に受動喫煙の危険を知らせるべきではないか」と指摘している。

 新幹線では76年から禁煙車が登場した。禁煙車の割合は現在、東海道で70%、山陽で76%。JR関係者によると、98年に国内線を全面禁煙にした航空機に対抗する必要もあり、全面禁煙化は難しいという。3月に部分開業した九州新幹線は所要時間が短いこともあり、全面禁煙にしている。