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信州廃棄物の発生抑制と良好な環境の確保に関する条例(案)に係る基本的な考え方
                                 


 以下は、長野県知事から条例制定アドバイザーの依頼を受け、梶山正三弁護士、青山貞一、北村喜宣上智大学教授の3人が作成した信州廃棄物の発生抑制と良好な環境の確保に関する条例(案)に係る「基本的な考え方」です。条例の骨子(案)もすでに公表し、市町村、県民、県議会議員、事業者への説明、質疑をはじめております。
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2004.2.27長野県公表

 環境の世紀、21世紀にあっては、破滅型の大量生産、大量消費、大量廃棄の経済社会からいかに脱するかが至上命題となる。
 
 地域から地球まで、環境と経済の両面から社会の持続可能性が探求されねばならない。そこでは、住民、企業、行政の何人も「観客民主主義者」から脱し、具体的に隗より始めることが問われる。

 地球規模での資源の有限性を深く認識し、20世紀型の自然の破壊と資源の搾取の時代から、自然との共生、資源の循環、住民の参加を基調としたまちづくりの実現に向け責務を負わねばならない。

 日本の背骨に位置し、深い山々に囲まれ、豊かな自然をもち、数多(あまた)の清い水源、湧水、渓流に恵まれた信州は、「未来への提言」のなかで、「コモンズからはじまる長野ルネッサンスを大切にしたまちづくり」を高らかに宣言した。これは、まさに信州、長野が有する希有の自然、景観とひとびとの生活の場としてのコモンズの生態的共生をはかることである。

 戦後復興、高度成長を通じ、遺憾にも、わが国は大量生産、大量消費、大量廃棄に加え、世界に冠たる「大量焼却」と「大量埋め立て」を幾多の国庫補助のもとに行ってきた。もとより、今のわが国で廃棄物と呼ばれているものの大部分は、資源である。それら貴重な資源をゴミとして安易に燃やし、里山や谷戸に埋め立ててきたのである。

 信州は20世紀型のものづくり、流通・消費のあり方を深く反省する。それとともに、廃棄物は本来資源であると言う原点にたち戻り、コモンズの全構成員の参加をもってここに新たな持続可能な経済社会づくり、廃棄物資源化行政を展開する。

 そのための戦略目標の第一は、廃棄物の発生抑制にある。ものづくりのできるかぎり上流から廃棄物を出さないこと、すなわち製造、流通段階での廃棄物の発生抑制と資源の再利用を推進することが最も大切である。そのため、製造者責任、排出者責任、汚染者負担の原則を明確にする。

 目標の第二は「脱焼却」、「脱埋め立て」である。なるべく燃やさない、なるべく埋め立てないことが、環境、健康、財政と言ったリスクを軽減することに通ずるからである。そのためには発生抑制と環境配慮を前提に、廃棄物の資源化を推進する。

 目標の第三は、「ハコモノ主義」と「国庫補助への過度な依存体質」からの脱却である。廃棄物を燃やし、埋め立てるために、国や地方が累積的に債務を増やし、孫子の代にツケを残すことは許されない。信州、長野は財源、税源、権限の地方分権の先頭に立ってきた。その経験をもとに地方の創意工夫を生かす施策を展開する。

 信州は、世界に誇る希有の自然、景観と多様で質的に豊かな県民の生活をまもり、正直者が不利益を被らない新たな廃棄物行政を推進するため、ここに「信州廃棄物の発生抑制と良好な環境の確保に関する条例(案)」を制定する。