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長野県議会 「組織条例改正案」を否決
   青山 貞一

 掲載日:2004.3.24

 長野県の2月県議会を時間が許す限り生中継で聞いた。全部は聞けなかったが、代表質問、一般質問は60%程聞いた。

 県議会は、田中知事の権限の実質強化に通ずるもの、逆説すれば、田中知事による県改革のリーダーシップそのものに反対した。それもまったく対案も示さずに反対したのである。

 今回の県議会での目玉は、「景観」、「土地利用」、「森林」等の条例案の提出にあったが、実は「組織条例改正案」も提出された。この条例改正案は、田中知事が就任後行ってきた県民益にかなった改革、それも逼迫する財政危機のなかで一大組織改革を行うものだ。

 だが、なんとこの「組織条例改正案」は、総務委員会で賛成4:反対5で否決された。知事は23日の本会議で復活を期待した。しかし、記名投票で賛成23票、反対34票となり否決されたのである  ※関連記事 信濃毎日 朝日新聞 読売新聞

 4月1日に向け多くの職員に辞令もでているなかでの、組織改革案の全面否決だ。

 私が知る限り、この「組織条例改正案」は、反対した議員が口をそろえて言うような「拙速」なものではなかった。※関連記事 読売新聞 信濃毎日

 田中知事は一方で自ら車座などで県民の声を現場で聞き、他方で600余名の課長、300余名の若手職員の意向をひとりひとり聞いた。細切れ行政、縦割り行政を排し、同時に未曾有宇の財政危機のなかで行政組織のスリム化と機能向上に資することを眼目に、まさに県民益に直結、合致する組織改革を分かりやすく具体的に提案したと思える。少なくとも私はそう感じている。

 23日の県議会終了後、表現道場で田中康夫知事の会見が行われた。知事は2月議会を振り返り、ひとつひとつかみしめるように話した。 ※知事会見 会見1 会見2

 そのなかに「抵抗係数の高いオールを漕がせて頂いて議会の方々にはお礼を申し上げたい」と言う一節があった。まさに田中康夫流の言い回しだ。

 深夜、インターネットストリーミングによるアーカイブの会見を聞きながら、私は知事の無念さを感じた。知事の命を受けこの間、一生懸命、昼となく深夜となくがんばってきた県庁職員の無念さも伝わってきた。

 と同時に、今さらながら長野県議会の地方改革に抵抗する「強い意志」がよく伝わってきたのである。歴史的な組織大改革案をわずか「拙速」の2文字で否決する「強い意志」である。

 ひるがえって、今の長野県において既存の県議に対し県民益を敵に回すことができないような状況をつくることは容易ではないと思う。同時に県民が今以上に田中知事の改革の意志、ミッションを理解したとても、それで県議会の現状が変わるとも思えない。

 ではどうするか。どうすればよいのか?

 それは明確である。

 たとえ時間がかかろうとも、現状追認と既得権益にしがみつき、対案をもたず、ためにする反対議論と揚げ足取りに終始する議員の「対案」を県民自身が生み出すことである。

 信州民は「観客民主主義」と「手続民主主義」から脱し、21世紀の来るべき分権社会に通用する地方議員になる
ことが問われているのだ。

 21世紀に通用する高い志と、目的意識と問題意識などのミッションをもち、政策提言能力をもつ。さらに自分の言いたいことを一方的に話すのではなく、討論能力をもつ県議をつくりことだ。たとえて言うなら、主尋問だけに応じ反対尋問を受けないような証人ではない、討論可能な議員を多数醸成せねばならない。


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