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末期的症状を呈する自民
その3 「族」「利権」議員集団

青山貞一
 
掲載日2005.8.12、8.14


 郵政民営化を小泉首相が首相になる際の最大公約としたこと、さらに郵政民営化を行財政改革の本丸とすることもよいだろう。大変結構なことだ。

 だが、行財政改革は、当然のことながら郵政民営化だけではない。

 たとえば、つい最近まで、もめにもめ検討会も四散分裂し、結局、羊頭狗肉の見本となった道路公団民営化はどうだろうか?

 おそらく多くの国民にとっては、こちらの方が郵政民営化よりもよほど、身近で火急な問題であったに違いない。なぜ、道路公団民営化がかくも激しくもめたかと言えば、言うまでもなく道路建設を利権とする自民党議員、それも大物幹部議員がたくさんいたからだ。

 田中康夫知事がことあるたびに話すように、日本ではいつになってもイタリアの4倍も高額の高速道路料金を払わされ、一般道がありながら30分に一台も通らない高速道路を作りつづけている現状がある。

 そして今後も不要な高速道路を次々に作れる道路公団民営化という現実、実態はどうなのか?

 伊藤忠の幹部が道路公団の総裁になった後、公団の副総裁、理事が橋梁談合で逮捕されている。 これが道路公団民営化の現実ではないのか。
 
 周知のように、道路民営化では、今回の郵政民営化問題で賛成(ないし結果として賛成)に回った自民党の大物議員、幹部議員が最後の最後まで反対し、法案の骨抜き、羊頭狗肉化に奔走していたことは、記憶に新しい。

 参院のドン、ミキオハウスなどと呼ばれている●●議員など、道路公団民営化反対の急先鋒ではなかったのか?

 事実、今回、郵政民営化法案に賛成した衆参議員のなかには、道路公団民営化に賛成した議員が多数いる。逆に、今回、郵政民営化に反対した議員のなかに、道路公団民営化に賛成した議員もいるのである。

 そのように、ひとつひとつ利権と密接に関連する各族議員炙り出していったら、自民党には、ほとんど議員適格者がいなくなるはずだ(巻末族議員リスト参照)。

 官から民へ、民でできることは民へ、官僚主導から民主導、小さな政府へ、天下りや談合などの利権と無縁、個別業界利権を小泉首相がことごとく徹底的に問題にした場合、族議員、利権議員の集団である自民党議員の圧倒的多数の議員は不適者となるはずなのである。

 つまり、今の自民党の中で、本気で上記を行うことは、まさに自民党をぶっ壊すこと、壊滅させることになるのである。

 はっきりしていることは、自民党そのものが、いわゆる族議員の集合体であることだ。今回の郵政民営化では、たまたま郵政族ないしそれに近い議員が法案に反対の意思を表明したにすぎないことだ。

 小泉首相がたまたま郵政民営化に際し、強引かつ独裁的なな法制化を強行したことに反対の意思を、採決の場で表明したに過ぎない議員も多々いるのでは、ないだろうか? それらの議員の多くが、大きな流れとしての民営化そのものに絶対反対しているとも思えない。

 そうだとすれば、たまたま郵政民営化法案の採決で賛成したものの、他の行財政改革関連法案で強烈に最後の最後まで反対した自民党議員はどうするのか大いに問われる。

 もし、それぞれの分野で行財政改革や民営化政策に反対する者、道路建設をはじめとする各種の利権、政治資金疑義にかかわった者を自民党本部が排除した場合、果たしてどれだけの議員が自民党に残るのか、残れるのかきわめて疑問である。そもそも自民党の参議院議員の大部分は、業界団体、利益団体の代表ではないのか?

 小泉首相が自民党を本気で改革するなら、郵政民営化問題だけでなく、族議員、利権議員をすべて排除すべきではないか。もし本気でそうすれば、残る議員はほとんどいなくなるはずだ。そこに自民党の本質的問題があるのではないか?
 
 国民の多く、有権者の多くは、過去から現在に渡り、自民党に対し、「族議員」、「利権議員」の集団であると見ている。

 以下は、少々古い情報だが、自民党の有力議員が加わる族議員リストである。(週刊朝日、2002年3月1日号)


防衛族 財務族(旧大蔵族)
建設族(道路族) 商工族
郵政族 運輸族
農林族 厚生労働族
文部・科学族 外交族

 
 ところで、2005年9月9日以降、以下のような記事が出回っている。
 
郵政法案、参院旧堀内派4人が賛成へ 与党過半数なら(サンケイ)
崩れ始めた参院反対派 郵政賛否 大半まだ様子見(東京新聞)
内閣改造、郵政法案成立後に 小泉首相が意向 (朝日新聞)

郵政法案、参院旧堀内派4人が賛成へ 与党過半数なら

 郵政民営化関連法案の参院本会議採決で7人が造反した自民党旧堀内派の関係者は10日、欠席・棄権した松山政司氏ら4人が、衆院選で与党が過半数を獲得した場合、特別国会に再提出される同法案に賛成する方向で検討していることを、青木幹雄参院議員会長に伝えた。青木氏はこれを歓迎、法案成立に向けて協力を要請した。

 4人は松山氏のほか、荒井正吾、大仁田厚、水落敏栄各氏。ただ大仁田氏は共同通信の取材に「選挙の結果を見ないといけない」と白紙を強調、慎重に判断する考えを示した。参院旧堀内派では、ほかに3人が反対票を投じたが、このうち真鍋賢二氏も取材に「衆院選で示された民意は大事にしなければならない」と賛成の意向を表明した。

 参院の自民党反対派では、リーダー格の鴻池祥肇元防災担当相が9日に衆院選での与党勝利を前提に賛成に転じる意向を表明したのに続き、条件付き賛成に回る議員が続出。共同通信の取材では、自民党を離党した2人を除く参院造反組28人(反対20人、欠席・棄権8人)のうち、松山氏らを含め11人が方針転換の意向を示していた。(共同)


 大マスコミ等が自民圧勝などと言う選挙結果予測を垂れ流す中、青木参院議員会長の説得などにより、保身的に反対派議員が寝返っていること自体、大きな問題だ。もとはといえば、この問題、すなわち郵政民営化やその法案に対する自身のまともな理念や信念、理解、判断がないまま、反対なり棄権、欠席にまわったことが、政治家として恥ずべきことであろう。

 しかし、ここに自民党の本質、また小泉首相の本質を見る思いがする。

 なぜなら、A参議院議員会長は、フリージャーナリストの横田一氏がここ数年、A議員の地元、島根に幾度となく足を運び、執拗に取材を繰り返し記事としてリポートしてきたように、まさに「道路民営化」を潰し、我田引水そして利権的に高速道路を地元に建設してきた自民党的体質そのものをもった議員であるからだ。(リポートについは以下の関連記事を参照)

 A議員にしてみれば、自身に係わる道路利権が確保できれば、郵政民営化などどうでもよいはずです。まさに自民党があらゆる分野の既得権益、利権の現状追認集団であることの証左ではなかろうか?

その4

■竹下利権の継承者 青木幹雄研究(1)
 消えた仏経山トンネル疑惑 (横田 一)


竹下登元首相の番頭役を務めてきた青木幹雄自民党参院幹事長。小渕恵三元首相死去の際、5人組の1人として密室談義の上、首相代理を引受けた青木氏は森喜朗氏を首相に仕立て、“政界のドン”とも呼ばれる地位を固めた。
青木氏の利権と腐敗の実態を追う。

■日刊ゲンダイ 横田一関連記事

『橋梁談合事件』で、ホンボシの道路公団元理事・神田創造(70=横河ブリッジ前顧問)が東京高検に逮捕された。工事配分のさじ加減を一手に握り、談合の『裏も表も知る』といわれた大物公団OBだ。「神田は全国の公団支社から工事内容などの情報を集め、業者の配分表を作っていました。神田逮捕で、捜査
は最大のヤマ場を迎えています」(司法関係者)

だが、橋梁談合といえば、青木幹雄参院議員会長を無視する訳にはいかない。地元の島根県は2年連続で『談合疑惑度ワーストワン』(全国市民オンブズマン連絡会議)に輝いている。公共事業の落札率は全国一高い98.2%だ。

「島根にも『江島大橋』『浜田大橋』という2大ムダ橋梁があります。また、ある橋梁工事の落札業者を調べると、青木氏に献金している青木系建設業者ばかりでした。実弟の文雄氏が役員をしている都内のコンサルタント会社は『地元の業者が”挨拶”に行く窓口』として知られています」(ジャーナリスト・横田一氏)

これだけの疑惑がありながら、島根県に捜査のメスが入らないのだから不自然だ。「今回の捜査の対象になった地域は関東、東北、北陸です。公共事業が断然多いのに、なぜか中国地方ははずされている。郵政法案のキーマンである青木氏に、小泉官邸が『貸し』をつくったとか、『プレッシャーをかけた』なんて見方がまことしやかに囁かれています」(永田町事情通)

今回もまた、政界までかけあがらずに適当なところで幕引きとなるのだろうか。

■談合疑惑 ワースト1は島根県

“青木幹雄王国”でも橋梁談合か(横田 一) 談合は必要悪――。
そう言ってはばからない建設業者は少なくない。だが、談合は血税の無駄遣いである。本誌で繰り返し報じてきた島根県の談合疑惑に捜査のメスはいつ入るのか。