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末期的症状を呈する自民
 その8 自民党の広報と化す大メディア

青山貞一
 
掲載日2005.8.19

 郵政民営化法案が参議院で否決されて以降、日本のテレビ、新聞などの大マスメディアが、まさに自民党の広報と化しているのではないかと、思われても仕方ないほど、酷い状態になっている。

 言うまでもないことだが、それら大マスメディアがそもそも郵政民営化法案の内容をどこまで分かって、理解しているかが問題だが、報道内容を見るとテレビ、新聞とも、法案内容を掘り下げて報道しているものは皆無だ。

 道路公団民営化、国立機関の独立行政法人化で分かったように、民営化問題は単なる看板の掛け替えであったり、逆に官僚支配が進んだり、民営化問題の本質は小泉首相が言うほど簡単ではない。

 政権与党として自民党が過去、郵貯、簡保はじめ各種年金などを原資とし、政治家と官僚が結託し、巨大な借金(国債、起債、財政投融資)を行い、後先見ないはこもの、公共事業を津々浦々で行ってきたこと、それにからみ利権を得てきた現実をまずもって明らかにすることが先決である。

 このシリーズで課題を述べてきたように、郵政民営化ももちろんそうだ。そもそも、米国の郵便事業は未だ民営化されていない現実がある。複雑怪奇な郵貯、簡保と国債、起債、財政投融資との関係を白日のもとにさらすことが先決だ。独立行政法人化のように単に看板の掛け替えで公務員数が何十万人減った、官から民へ、小さな政府と言ったところで、意味がない。

 年金、景気はもとよりイラク派兵、憲法改正など、国民が大いに関心をもっている政策、施策テーマをほったらかし、ブッシュ大統領がアフガン戦争やイラク戦争に突入する際に、テロか反テロかと言う特定課題について「Yes」か「No」かを世界に迫った手法ときわめて酷似した手法だ。

 にもかかわらず、それらについてまともに報道せず、衆議院選挙モードに入るやいなや、自民党の選挙候補ばかりを膨大な時間をかけ広報している。ここまで日本の大マスメディアが堕落したのか、放送法、新聞倫理もへったくれもない。

 日本の大メディア全体が、小泉首相、自民党のメディア戦略にまんまと引っかかっていると言ってよい。

 以下は、日刊ゲンダイの2005年8月19日号だ。タイトルは「これが先進民主主義国の選挙とは呆れた」となっているが、まさにその通りである。 さらに、その後に、2005年8月20号も示す。

その9

 

これが先進民主主義国の選挙とは呆れた
〜 もうメチャクチャ、イラクやアフガン並みの国会議員選挙
の様相、有識層がこの国の行方に深刻な懸念〜


日刊ゲンダイ 2005年8月19日号

 郵政民営化に反対した議員への刺客として、続々と有名人の候補が決まっている。

 ワイドショーやテレビが面白がり、大新聞も「自民、東ちづる氏に要請」とか「ホリエモンに出馬交渉中」とか悪ノリして競うように“飛ばし”ている。

 果たして、これがマトモな選挙と言えるのか? 

 反対派議員潰しに著名人を担いで血道を上げている小泉の姿は異様だ。それを実況中継しているマスコミはどうかしている。

 担がれた候補者に政治家としての資質や識見があるならまだしも、「どこの馬の骨?」というのもいる。多少、顔が売れていれば、誰でもいいのだ。相手が震え上がり、落選の危機に追い込めればいいのだ。これは怨念選挙だ。狂った独裁者の「力」を見せ付けるショーである。

 そのために、政治のド素人が候補者になり、おそらく比例で1位になる。政治をナメているし、有権者をバカにするにも程がある。

 「著名人候補者を見ていると、選んでいる小泉首相の資質がよく分かる。政治家としての識見などは二の次で、人気、知名度だけで選んでいる。本人の政治手法と一緒です。かと思うと、反対票を投じた自見庄三郎氏(福岡10区)にぶつける西川京子氏は最初は反対だったのに寝返った論功で比例上位になる。

 『俺に逆らうとこうなる』『従えばこうする』ことを見せ付ける狙いもあるのでしょう。こんな選挙はムチャクチャです」(政治評論家・山口朝雄氏)

▼ 権力大好きオンナが浮かれている ▼

 マドンナだとか騒がれている小池百合子(東京10区)は日本新党から新進党、保守党と権力に擦り寄った渡り鳥。財務省の片山さつき(静岡7区)は、「目立ちたがり屋で、何でも自分の手柄にしてしまう。辞めてもらってせいせいした」と言う財務省幹部は多い。

 愛知4区の藤野真紀子は政治とは無縁の料理研究家。上智大教授で比例候補の猪口邦子もそうだが、権力大好き女性が小泉に口説かれ、当選を保証され、「審議会入りするような気軽さで舞い上がっている」(自民党関係者)ように見える。

 節操のない自民党は、「金さえあれば何でもいいのか」(森前首相)と批判していたホリエモンも口説いている。ホリエモンはホリエモンで、話題になればライブドアへのアクセスが増えて株価が上がるので前向きとか。もう、世も末という選挙である。


なぜか争点をすり替え真相を隠蔽している
小泉応援団の選挙報道

日刊ゲンダイ 2005年8月20日号

■ 悪質なのは小泉一派の方だ
■ 大マスコミは自民党の分裂選挙などと選挙民を煽っているが、
■ 問題は小泉政権4年余の国民圧迫、アメリカ追従政治の是か非かの選択だ
■ なぜか争点をすり替え真相を隠蔽している小泉応援団の選挙報道

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戦後最悪な政権、詐欺師、三百代言の香具師、政権の体をなしていない
とまでマトモな人から酷評されている小泉デタラメ一派をなぜ大新聞・
TVは持ち上げ、反対派を「郵政造反組」などと批判しているのか
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 小泉首相は「総選挙の争点は郵政民営化だ」と言っている。しかし、反対派を追い落とすために立てる候補はどれもこれも郵政民営化とは無関係な連中だ。財務省の片山さつきしかり、国際政治が専門の猪口邦子しかり。

 笑っちゃうのが料理本が売れてカリスマ主婦なんて呼ばれている役人夫人まで出てきた。ホリエモンに至っては森喜朗が「カネさえあればなんでもいいのか」なんて批判していた人物だ。彼らがどこでどう郵政民営化とつながるのかサッパリ分からない。

 「そりゃそうです。反対派つぶしの候補選定は、官邸の飯島秘書官が著名人を載せた読売年鑑の人名録を見ながら片っ端から電話をかけているのですから」(事情通) 選挙戦で「郵政民営化賛成」と言ってくれる有名人なら誰でもいいということだ。

 小泉は解散当日、麻生太郎総務相から「総選挙は民主党と争うより、内なる抵抗勢力を一掃するためのものですか」と聞かれ、「うん、そうだ」と答えている。だから、選挙の争点は郵政民営化でなければならなかった。

 こんな選挙の争点はインチキだろう。前東大総長の佐々木毅・学習院大教授が東京新聞でこう指摘している。〈解散が「郵政解散」だったことは事実だが、「郵政選挙」でいいのかについては吟味が必要だ。「単純化」にはとかく落とし穴がある。実は他の重要政策を正面から問わない、巧妙な「争点隠し」選挙になる恐れがある〉〈国民負担を含むこれから先の社会保障制度問題を俎上にのせなければ、この選挙の意味はほとんどなくなる〉〈要するにこの選挙は「郵政選挙」ではなく、政権選択選挙である。

 自民党内の「仁義なき戦い」は、この本筋からすれば所詮傍らのエピソードにすぎない〉 まったくその通りだ。

◆ 大新聞・TVは自民党の広報機関か ◆

 ところが大新聞・TVは「郵政が争点」と流し続け、「お宅は小泉応援団?」と聞きたくなるような報道のオンパレードだ。「構造改革失速させるな」(日経)、「民営化の灯を消すな」(朝日)、「造反組への公認拒否は当然」(毎日)と、小泉政権の援護射撃。まるで自民党の広報紙である。

 そのマスコミの世論調査では、52%の人が「郵政民営化は争点ではない」(17日付の朝日)と答えているのに、そんなのはお構いなし。造反新党だ刺客候補だと郵政対立をあおり、本質から目をそらさせているのだ。

 放送評論家の佐怒賀三夫氏がこう言う。

 「新聞の報道も目に余りますが、テレビもヒドすぎます。『刺客がどうした』とか『造反議員ピンチ』と、郵政法案に反対した政治家はまるで時代劇の悪代官扱い。狼狽ぶりをおもしろおかしく伝えている。

 しかし今度の選挙の最大のテーマは小泉政権の4年間の総点検のはず。これまでの内政、外交問題の検証、分析が不可欠です。ところがテレビはそうしたマスコミとしての使命を一切放棄し、政治ショーを垂れ流しているのだから目も当てられません」 大マスコミにとって、日々、視聴率や部数が稼げるネタを提供してくれる小泉首相は“神様”みたいな存在なのだろう。だが、無批判に小泉をヨイショしている先には、恐ろしい事態が待っている。

◆ ホリエモン 急に政権与党に接近したワケ
 〜 党内からは異論噴出だが “亀井潰し”の見返りは何か?〜

 プロ野球、テレビ局に続き、今度は政界参入を狙うライブドア・堀江貴文社長(32)。

 さすがに自民党内からも「ニッポン放送乗っ取りで批判していた堀江氏を候補にするのはおかしい」「劇薬すぎる、老人票が逃げる」など異論が噴出しているが、きょう中に自民党公認が決まる。そのホリエモン、きのう(18日)はテレビ東京株を個人で5%保有していたことが判明。相変わらずテレビ業界に色気タップリだが、自民からの出馬にも「下心があるんじゃないか」ともっぱらだ。経済ジャーナリストの山本伸氏が言う。

 「ソフトバンクの孫正義社長が政府の『IT戦略会議』に参加し、ネットインフラのADSLを推進したのと同じです。政府と仲良しになれば、『ネットと放送の融合』の実現性も増す。また、政界人脈はさまざまなビジネスにも役に立つ。当然、野党よりも政権与党の自民党の方が後々商売になると踏んだのでしょう」

 自ら希望した亀井静香の広島6区で候補に立てば“選挙の顔”になる。当落はともかく、最大の敵地で“小泉劇場”の旗振り役としてマスコミの注目を独占できれば、自民党は堀江サマサマだ。

 ホリエモンはどんなソロバンをはじいているのか。プンプンにおうのが銀行ビジネスへの参入だ。