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耐震偽造マンションが
「優秀賞」を受けていた!

 
青山貞一

掲載日2005年11月23日


 姉歯建築設計事務所による建築物の構造計算の偽造事件は、日本中を震撼とさせている。

 私自身、数年前、古い店舗併用住宅を取り壊し、小規模だが鉄骨のビルを建てた。リーズナブルな建築費にしたいと考え、基本設計を自分で行い、それをもとに一般競争入札をしたところ、5社が手を上げた。一番価格が低い、すなわち落札業者と一番価格の高い業者の価格差は2.5倍もあった。自宅の小さなビルとはいえ、入札をした以上、一番応札額の低い業者に仕事をお願いしたが、その業者は都内に本社があるマンション建設などで有名な中堅業者だった。

 妻と一緒に解体時から基礎工事、鉄骨・鉄筋組み立て、内装・外装工事としつこく見て回った。その結果、構造面での手抜きはそれほどなかったが、内外装で契約内容と異なる部材を使うなどが見つかった。その場で指摘し、やり直してもらった。

 竣工後も、大きな降雨の後、地下の物置に水がたまるなどの問題が発覚、その都度、修復工事を眼前でしてもらい現在に至っている。施工・管理、アフターサービスを含め契約をしっかりしていたので、一銭も払うことなく建設業者に対応してもらっている。

 ところで、今回の事件は、さまざまな意味で馴れ合い護送船団、そして談合的な日本的体質が顕著に出ていると言える。また、安易な「官から民へ」、「民でできることは民へ」がもたらした典型的な悪例でもあろう。

 もちろん、都道府県、政令指定都市などの官の建築主事が建築確認でチェックすれば問題ないとは言い切れない。しかし、少なくとも官の場合、今回のような「異常なコスト削減意識」に基づく故意による偽造は起こりにくい。

 さらに万一、設計事務所、構造計算者によるこの種の偽造を見抜けず官の建築主事が共同不法行為に問われた場合、公的資金の投入とは言え損害賠償(国家賠償)に対応可能であろう。

 閑話休題

 上記に関連し笑止千万の今回の事件だが、さらに笑うに笑えぬ話がある。

 それは今回問題となったマンション、すなわち東京都江東区のグランドステージ住吉を売り出したヒューザーが、今年5月、社団法人「日本住宅建設産業協会」から「優秀事業賞」を受賞していたことだ。受賞の理由は、「リーズナブルな価格で2ヶ月で完売したこと」だと言う。

 これについて、新聞各紙は以下の記事を掲載している。

 耐震基準満たさない建築が「優秀賞」(朝日新聞)
 
倒壊危険マンションは優秀賞受賞(スポーツニッポン)
 江東の物件は『優秀賞』 偽の計算書見抜けず(東京新聞)

 上記の記事とは別に、東京新聞は11月23日朝刊の特報ページの隣に次の見出して大きな記事を掲載している。

 
なれ合い、順繰りで受賞
 耐震偽造マンションも輝いた 業界団体の「賞」事情
 「選ぶ側」のチェックこそ必要


 この記事を読むと、グランドステージ住吉を売り出したヒューザーが、社団法人「日本住宅建設産業協会」から「優秀事業賞」を受賞していたこと以外に、いくつか興味深い「受賞」事例が報告されている。重要と思われるものを以下に引用する。そこではいずれも安全、安心と言った視点が欠落し、単に経済性、見栄えばかりが重視されていることが見て取れる。

 以下の2事例はまさに笑止千万な事例と言えるが、審査側の環境賞を含めた省庁や審査員は、どう責任を取るのだろうか?

●産業廃棄物を土壌埋め戻し材「フェロシルト」として販売していたとして三重県警の家宅捜査をうけた石原産業は、ほかの3社とともに、昨年、「エコプロダクト大賞」(財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省が後援)を受賞。受賞対象の光触媒の生成過程で、フェロシルトの原材料が生まれたとされる。

●大阪市内のマンション建設現場の土壌汚染を隠蔽し、販売したとして宅地建物取引法違反容疑で大阪府警から書類送検された三菱地所は一昨年「誠実な企業」大賞(木村剛・KFi社長らによる同賞審議委員会が選考)を受賞していた。