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セイモア・M・ハーシュ記者について   青山 貞一

掲載日:2004.5.5

 米兵からの内部告発をもとに、最初に米軍によるイラク人虐待をスクープしたのはニューヨーカー紙のセイモア・ハーシュ記者(Mr.SEYMOUR M. HERSH)である。

 ニューヨーカー紙のハーシュ記者のコラム(英文)は、以下。
 TORTURE AT ABU GHRAIB by SEYMOUR M. HERSH

 セイモア・ハーシュ記者は、ベトナム戦争の最中の1968年、南ベトナムのソンミ村で米軍が約500名の村民を皆殺しとしたソンミ村の大虐殺をスクープしたことでも有名である。ハーシュ記者はこの記事でピューリツア賞を受賞している。

 セイモア・M・ハーシュ記者近影 主な著作一覧

 当時、あの記事はベトナム戦争を集結させる間接的きっかけをあたえたと私は記憶している。今回も、この記事が米軍のイラク撤退の延引となることを期待したい。この事件については、今後も「今日のコラム」で継続的に伝えたい。

(5/3)尋問中死亡のイラク人、遺体を遺棄か・虐待で新疑惑

【ワシントン3日共同】イラク人虐待問題で、米軍が詳細な内部調査報告書をまとめていたことを報じた米誌ニューヨーカーのセイモア・ハーシュ記者が2日、CNNテレビに出演し、尋問中に死亡したイラク人の遺体を米軍が遺棄したとの新たな疑惑を指摘した。
 ハーシュ記者は、イラク人の遺体は氷詰めにされた後に「点滴をしているように偽装して担架に乗せられ、救急車でどこかに(運ばれ)捨てられた」と述べた。
 同記者によると、旧アブグレイブ刑務所に収容されているイラク人の多くは「検問所や民家から手当たり次第に連れてこられた一般市民」で、米軍の報告書でも、60%以上が反米武装勢力などとは「何のかかわりもなかった」と結論づけられているという。
 ハーシュ記者はニューヨーク・タイムズ紙記者などを長く勤め、ベトナム戦争では米軍の虐殺をすっぱ抜くなどの調査報道で知られる
日経新聞 2004.5.3


  
 ハーシュ記者について  
ハーシュは現在、週刊ニューヨーカー誌を主な発表場所にしており、9・11以後も飛びぬけた洞察力と調査力のスクープを連発している。
 坂本龍一監修、星川淳、青山貞一らも執筆で参加した『非戦』(幻冬舎刊)にもアラブ王室と米国の腐れ縁をえぐる「王の身代金」を訳出し、リチャード・パールを国防諮問委員会議長の座から引きずりおろしたサウジ政商との裏取引スクープ、ペンタゴンのネオコン情報操作の根城、特殊作戦室(OSP)を暴いたスクープ(世界増刊『NO WAR!』所収)など、ほとんど外れたことがない。最近パキスタン核拡散問題を取り上げたものとして岩波『世界』6月号  に掲載中。(以上、星川淳からのコメント)


■ソンミ村の大虐殺について

※伊藤善宣氏 ソンミ村旅行記より
 968年3月、米軍により村人504人が殺された。わずか4時間で。これがソンミ村虐殺事件である。当初は民間人ではなくベトコンの部隊との戦いと報告されたが、内部告発により事件が明るみになった。発生から18ヶ月後のことだという。

※吉川 勇一氏 ソンミ村を振り返る
はじめにから
 1968
316日、アメリカ軍の一部隊がソンミ村に入り、一気に504人の無辜の村民を虐殺した。その大部分は、老人、女性、子どもだった。それから18ヵ月のち、米国内でこの虐殺が明るみに出され、全世界と人間の良心とに強烈な衝撃を与えることになった。中略、事実、ソンミの事件は、ベトナムの人民のみならず、人類がこうむった鋭い痛みとして歴史に留められている。