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全く不可解な環境省の
特命随契約契約理由

池田こみち・鷹取 敦

掲載日:2006年4月6日


環境省HPより
 公表対象随意契約一覧


 NHKが繰り返し報道している環境省の随意契約問題だが、その発注内容をみてみると、驚くばかりである。例えば、三菱総合研究所に随意契約で発注されたもののひとつに、「地球温暖化対策推進計画策定ガイドラインの改訂等業務」というものがある。

 そもそも随意契約というものが可能となる条件は;随意契約理由番号表 http://www.nids.go.jp/procurement/reason.htmlにあるように、明確な理由がなければならない(会計法第29条の3第4項及び第5項等)
例えば、

1) 販売権を有するものが1社であるとき
2)技術援助契約を有するものが1社であるとき
3) 工業所有権等の排他的権利を有するものがあるとき
などである。

にもかかわらず、今回の随意契約の理由が以下の通り、「温室効果ガスの排出量算定及び検証の専門的知見やその知見に基づく調査研究」が三菱総合研究所にしかないというのは、どう考えても理解できない。このような理由で随意契約が可能になるのであれば、会計法というものも極めてザル法であり、まったく機能していないに等しい。

 最低限プロポーザル方式とするか、このテーマであれば、入札でも十分だと考える。成果報告書をみてみれば、どれほど三菱総合研究所でなければできないものか、がわかろうというものである。


件名:平成17年度地球温暖化対策地域推進計画策定ガイドラインの改訂等業務
契約年月日:平成18年1月27日
委託先:(株)三菱総合研究所 
委託額:2,499,000
随契理由:本業務は、温室効果ガス排出量算定及び検証の専門的知見やその知見に基づく調査研究が必要となるが、この経験や技術を持っている業者は、株式会社三菱総合研究所以外には無く、競争を許さないことから会計法第29条の3第4項に該当するため。

 また、別の例としては以下の調査がある。確かに総量削減計画導入に不可欠なシミュレーション技術は高度で複雑なものではあるが、「数理計画以外になく」という部分においては明らかに誤りである。

 過去の総量削減計画のシミュレーション調査を伴う業務は、数理計画以外にも実施した実績のある機関が複数存在し、他ならぬ環境総合研究所もその1つである。過去に環境省が環境庁であった頃から同庁および自治体からの同種の委託調査を多数行っており、環境省が数理計画以外に実施可能な機関を知らないということもありえない。

件名:平成17年度ダイオキシン類総量規制検討調査
契約年月日:平成17年5月11日
委託先:(株)数理計画
委託額:19,498,500円
随意理由:本事業は、総量削減計画や総量規制基準等の作成手法等を理解し、総量規制導入に不可欠な高度で複雑なシミュレーション技術を有すること等が必要であり、これらの条件を満たすのは(株)数理計画以外にはなく、競争を許さないことから会計法第29条の3第4項に該当するため。

 随意契約となっている事例全体を見渡すと、社団法人、財団法人など、天下り先として批判の多い外郭団体が目立つ。また、「技術的な理由により、競争を許さない」、「これを満たす豊富な実績と幅広い知見を有しており、競争を許さない」などと漠然とした記述の理由も目立ち、随意契約の客観的な理由となりえない。

 前述したように本来、極めて限定した場合においてのみ例外的に行われるべき、随意契約が、外郭団体や官僚の覚えのよい機関に、漠然とした理由をもって行われているという官製談合より悪質な実態がみえてくる。

 さらに財団法人等へ依託された業務の実施形態にも問題がある。

 例えば、財団法人 日本環境衛生センターに環境省から一括して発注された業務を民間に再委託、丸投げしている場合が少なくない。民間への再委託はその選定方法、額、内容ともに透明性が全くない。財団法人からの恣意的な依託が可能だ。

 問題は不透明な再委託の発注形態だけではない。業務を実施する能力のない財団法人が、民間に再委託を重ねることで、架空の「実績」ができあがる。その実績をもって、さらに国からの事業を請けている実態がある。

 実際に業務を行った民間の機関には「実績」は残らず、トンネルとなって上前をはねた財団法人に偽りの「実績」が積み上がるのは不公正以外のなにものでもない。

 今回「公表対象」として、予定価格が一定以上の額であるなど、ごく一部が公表されているようだが、ぜひ全容を明らかにしてほしいものである。

公表の対象とする随意契約
  会計法(昭和22年法律第35号)第29条の3第4項又は第5項の規定により締結された随意契約のうち国の支出の原因となる契約であって、予定価格が当該契約の種類に応じて予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)第99条第二号、第三号、第四号又は第七号の金額を超えるもの(特定調達契約に該当するもの及び国の行為を秘密にする必要があるものを除く。)