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データでみる
環境省随意契約の
不透明な実態

鷹取 敦

掲載日:2006年4月7日


 環境省の発表によると「2000年〜04年度に同省が発注した契約額5百万円以上の事業約3200件のうち、随意契約が92.5%(金額の割合は91.8%)に上」ったことが明らかとなった。(東京新聞4月7日)

 環境省のウェブサイトには「公表対象随意契約一覧」として平成17年4月から平成18年1月までの随意契約の一覧が公表されている。
 http://www.env.go.jp/kanbo/zuikei/list.php

 この「公表対象」データの全数のコンピュータによる集計を試みた結果、以下に示すように一部の機関、特にいわゆる外郭団体、天下り先に発注が偏っていることが明らかとなった。なお、公表資料には「単価契約」の額が掲載されているものがあるがこれについては「備考」に示された年間の想定額、実績額を用いて集計を行った。

データ総数

 平成17年度(1月まで)の公表契約件数は1,144件、契約総額は(推定)約261億4235万万円に上った。契約の対象となった機関・組織は全501である。(一部、複数社が契約対象となっている案件あり)

外郭団体に集中

 名称から財団法人・社団法人・独立行政法人であることが明らかなものについて集計したところ、以下のとおり件数にして全体の51%、額にして全体の50%と半数を占めていることが明らかとなった。

財団法人 342件 67億9927万円
社団法人 167件 23億5775万円
独立行政法人 74件 37億7156万円
583件 129億2858万円

 ちなみに民間について以下のとおり、株式会社であることが明らかなものは、全体の件数で33%、額で41%に過ぎない。NPO法人は件数で5%、額で2%に満たない。

株式会社 381件 106億4790万円
NPO法人 59件 4億2899万円


●特定の組織に集中

 以下に示す発注総額の多い順をみると、上位15組織の合計で全発注額の50%を超えることが分かった。これをみるとやはり独立行政法人、財団法人、社団法人等が目立つ。

契約総額・上位15組織
順位 件数 契約総額
1 (独)国立環境研究所 59 3,165,990,000円
2 (株)博報堂 1 2,700,000,000円
3 富士通(株) 10 1,045,532,832円
4 (財)日本環境協会 10 797,408,000円
5 (財)自然環境研究センター 39 765,960,000円
6 (財)国民公園協会 3 732,372,000円
7 日本エヌ・ユー・エス(株) 16 590,896,001円
8 (財)日本環境衛生センター 30 534,917,000円
9 (財)地球環境戦略研究機関 12 494,658,000円
10 (社)環境情報科学センター 25 483,916,587円
11 (財)地球環境センター 6 460,701,500円
12 (株)荏原製作所 2 444,000,000円
13 (株)りゅうせき 1 436,759,000円
14 (学)早稲田大学 2 404,987,500円
15 国土環境(株) 11 364,691,783円


 次に以下に年間に10件以上の委託を受けている組織を挙げる。これを上表と合わせてみると、契約件数、契約額ともに多いところが浮かび上がってくる。契約額、契約件数共に多いものに「●」印をつけた。

 民間で●がついているところは少なく、独立行政法人、財団法人、社団法人が多くを占めており、環境省は外郭団体に集中して随意契約による委託を行っていることが分かる。

 また「独立行政法人」国立環境研究所は環境省からの委託に依存しており、「独立」とはほど遠いことも分かる。

契約件数(10件以上)
順位 件数 契約総額
1 (独)国立環境研究所 59 3,165,990,000円
2 (財)自然環境研究センター 39 765,960,000円
3 (財)日本環境衛生センター 30 534,917,000円
4 (財)自然公園財団 27 103,443,707円
5 (社)環境情報科学センター 25 483,916,587円
6 (株)数理計画 21 264,854,315円
7 (社)海外環境協力センター 21 293,257,000円
8 (株)三菱総合研究所 20 255,642,000円
9 日本エヌ・ユー・エス(株) 16 590,896,001円
10 (財)日本鳥類保護連盟 14 108,823,535円
11 (財)地球環境戦略研究機関 12 494,658,000円
11 (財)地球・人間環境フォーラム 12 192,176,000円
13 国土環境(株) 11 364,691,783円
14 みずほ情報総研(株) 10 111,056,300円
14 (財)環境情報普及センター 10 141,712,000円
14 (財)日本環境協会 10 797,408,000円
14 富士通(株) 10 1,045,532,832円


 前回のコラム「全く不可解な環境省の特命随契約契約理由」(池田こみち・鷹取敦)でも指摘したように、これらの外郭団体は必ずしも受けた事業を自身で実施している訳ではない。

 外部の民間機関等に再委託を行っているケースが少なくない。再委託を行わなければならないのであれば、そもそも随意契約の理由がないし、再委託の発注形態は不透明となり、恣意的な再委託先の選定が可能となってしまう。

不可解な発注時期

 発注時期にも不可解な点がある。なんと年度が始まって初日である4月1日に284件もの契約が行われているのである。

 行政の仕事は年度単位だから、4月1日に人事も確定しようやくその年度の仕事がはじまるから、普通に考えれば4月1日に契約が成立すること難しいはずだ。実際に行政の委託調査では、契約までの事務手続きに時間がかかり、発注が夏や秋になることは珍しくない。

 反対に極めて発注時期が遅いものもある。12月、1月になってから、それなりに時間のかかりそうな調査が少なからず依託されている。行政の委託調査は年度内、すなわち3月には完了することになっているから、このように遅い時期の発注では調査の実施に充分な時間を割くことは難しい。


 環境省の炭谷茂事務次官は、記者会見で、調査研究事業が随意契約の大半を占めると指摘したということだが、土木事業なら問題で、調査研究であればこのような不透明、不適切な随意契約が問題ないとでも言うのだろうか。

 「現状で法律上の問題はないと考える」というが、個々の「随意契約の理由」に記載されている内容と、上記の分析からみえてくる実態からはとてもそうは思えない。


●追加情報:公益法人のうち63%に天下り(NHK4/8報道より)

 4月8日のNHKの報道によれば、随意契約の半数を占める公益法人のうち63%に環境省のOBが天下っていることが明らかとなった。