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村上F成長の背景
官僚仲間からヒルズ族まで
"華麗"人脈モノをいう
手法めぐり対立も


東京新聞 2006年6月8日朝刊(経済)


掲載:2006年6月15日

 
 「村上ファンド」の村上世彰前代表が、旧通産省官僚から転身しファンドを成長させることができた背景には、政財界の幅広い人脈の支援があった。また「面倒見の良さ」も知られ、ヒルズ族など若手経営者の輪の中心にいた。その一方、いきなり株式を大量取得し「株主価値向上」を要求する"村上流"は、企業の経営陣らとの対立も生んだ。



■政財界

 「村上前代表の逮捕は、かなりショックだったようだ」。オリックス関係者は五日、宮内義彦会長の様子を打ち明けた。村上前代表と官僚時代に知り合い、物心両面で支え続けてきた"後見人"。「遺憾だ」と短いコメントのみ発表した。

 オリックスは、村上前代表に、ファンドの前身となる休眠会社を譲渡。五月までグループの一部に出資し、社外取締役も派遣してきた。百数十億円の運用を委託する顧客でもある。ほかに日銀の福井俊彦総裁や西川善文・日本郵政社長ら大物財界人との交流は広い。

 政界関係者では、東大の同級生や役所の同僚だった林芳正参院議員(自民)や松井孝治参院議員(民主)の応援演説に出かけたことがある。太田房江・大阪府知事は役所の先輩で、ときどき食事をともにする仲だった。

 こうした、広い人脈が信用を高め、村上ファンドに機関投資家らが資金をつぎ込む背景になったようだ。

■若手経営者

 二〇〇四年にオフィスを六本木ヒルズに移してから「ヒルズ族」も仲間の輪に
加わった。互いに投資情報を交換し連携。逮捕容疑となったニッポン放送株をめ
ぐるインサイダー取引の温床になったともいえる。

 ライブドア前社長の堀江貴文被告とは「三、四年前に講演を頼まれて以来の付き合い」」(村上前代表)。一緒に食事をしたり、電話をかけ合ったりする親しい間柄。ライブドアのライバルだった楽天の三木谷浩史社長とも、ホームパーティーに招くなど親交があった。

 ライブドアと業務提携したUSENの宇野康秀社長も、同社の無料動画チャンネルの番組ゲストに村上前代表を招くなど親しい。村上ファンドが株式を保有する企業の中で数少ない、友好的な関係だ。

■反発

 村上ファンドが〇二年■五月、東京スタイルの株主総会で仕掛けた議決権の委任状争奪戦で、経営陣の先頭に立って対時(たいじ)したのが同社の高野義雄社長。
村上ファンドの大幅増配の要求を退けた。

 村上ファンドは取締役決議なしで行った高野社長の投資の失敗について損害賠償を提訴。〇五年十月、高野社長が会社側に一億円支払うことで和解し「思い出に残る案件」と村上前代表は振り返った。

 〇四年十二月に上場廃止となった西武鉄道をめぐって対立したのは、同社経営改革委員会委員長の諸井慶氏(太平洋セメシト相談役)。同委員会が示した再生案を村上前代表は「不透明な形で決められた」と主張。対案を示したが、諸井氏は取り合わなかった。

 また、楽天のTBS株大量取得では、村上前代表は三木谷社長に買収を促したが、TBSの社外取締役だった諸井氏は三木谷氏の行為に怒りをあらわにした。



投資顧問業者の資産残高、過去最高140兆円超

 投資ファンドなど投資顧間業者の今年三月末の契約資産残高が、前年同期より約三割増え、過去最高の百四十兆円台半ばに達したことが七日、日本証券投資顧問業協会の調べなどで分かった」日本経済の回復基調を好感して、海外の大口資金が流入したことに加え、株価上昇で運用益が膨らんだのが主因。投資顧問業者の株式市場での影響力が急速に増している。

 ただ、五月まで国内で投資顧問業を展開していた村上ファンドの村上世彰前代表が逮捕されたこで、「村上ファンドと他の投資顧問業者を同一視し、運用委託に慎重になる機関投資家が出てくるのではないか」(国内投資会社幹部)と、悪影響を懸念する声もある。

 同協会の加盟業者の資産残高は、IT(情報技術)バブル崩壊後伸び悩んだが、二〇〇四年から上昇軌道に乗り、〇五年三月末に初めて百兆円の大台を突破、百七兆円に達した。

 村上ファンドの中核会社だったMACアセットマネジメントも、廃業した五月まで同協会に加盟していた。同ファンド創業の一九九九年当時と比べると、最近では業界の資産残高は約二倍に拡大した一方、業者数も約五割増え、「競争が激しくなる中で、村上ファンドは生き残りのため強引な投資に走ったのではないか」(外資系証券幹部)との見方も出ている。

 同協会には、大手銀行・証券系の資産運用会社や外資系ファンド、国内の独立系投資ファンドなど二百四十九業者が加盟している。