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「ベトナム戦争と枯れ葉剤

聴講記


青山貞一

掲載月日:2008年7月25日

無断転載禁


 2008年7月18日、横浜市都筑区にある武蔵工業大学環境情報学部にて、国際フォトジャーナリスト、中村悟郎氏が「ベトナム戦争と枯れ葉剤」と題し、特別講演を行った。


講演する中村悟郎氏、
武蔵工業大学環境情報学部31A大階段教室にて
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 ※ 特別講演告知 Web

 同特別講演は、私が担当している授業、「公共政策論」の講義「戦争と環境」なかで行われたもので、当日は武蔵工大の受講生だけでなく、慶應義塾大学、東京工業大学など他大学の学生、大学院生、一般市民も参加した。

 講演では、1970年代はじめ戦火の現地に入り、命を賭け撮影した写真はじめ、35年前から現地に20回以上足を運び、撮影してきた写真をもとに戦後最大の死傷者を出したベトナム戦争が、枯れ葉剤に含まれるダイオキシンによって末代まで深刻な影響、被害をもたらす悲惨なものであったかについて、現地で撮影された写真を元に話された。

 さらに中村氏は、米国には枯れ葉剤を日本の大都市にも空中散布する計画があったことも詳細に話された。

 参加者の多くはベトナム戦争そのものを知らない学生であったが、一様に大きな衝撃を受けたようだ。


中村悟郎氏 公式Webより

 中村悟郎氏が撮影した多くの写真は、国際的に見ても非常に貴重なものであり、すでに以下の数々の賞を受賞されている。

1976年:第1回公募展「視点」大賞受賞(審査委員長土門拳)
1979年:日本ジャーナリスト会議(JCJ)奨励賞(カンボジア報道に対して)
1983年:ユージン・スミス賞(1983,USA)に最終候補(10人)の一人に
1983年:ニコン第8回伊奈信男賞(1983年度賞)(Agent Orange に対して)
1996年:日本ジャーナリスト会議特別賞(岩波書店「戦場の枯葉剤」に)
2003年:ベトナム政府より情報文化功労賞授与(枯葉剤問題の報道に対し)
2006年:第1回日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)賞受賞
     (30年にわたる枯葉剤問題の取材とその科学的報道に対して)


 ところで、本題の「枯れ葉剤」は、米国ではエージェントオレンジと名付けられた。その枯れ葉剤に含まれる猛毒ダイオキシン(2,3,7,8TCDD)は、急性毒性以外に、超微量でも人間が摂取すると催奇形性、発ガン性、生殖毒性、胎児毒性、遺伝毒性、免疫毒性などさまざまな毒性をもっている。

 中村氏による1970年代はじめから現在に及ぶダイオキシンによる人体への影響・被害の追跡調査によれば、ベトナムでは、それらダイオキシン類がもつ毒性の痕跡があり、とくに3世代にわたり人々の体を蝕んでいる実態もあるという。

 講演では、年代を追ってそれらご自身が現地で撮影した貴重な写真をパワーポイントで大型スクリーンに投影しながら示された。

 ※ 講演の要旨はこちらをご覧下さい!

 下の写真はベトナム本土に散布された枯れ葉剤の年度別総量。1967年、1968年にピークがあることが分かる。中村氏の講演によれば、米空軍は散布された2378四塩化ダイオキシンの総量は168sとしているが、コロンビア大学のステルマンらは366sあるいは500s余としており、いずれにしても膨大なダイオキシンをベトナムに散布したことは間違いがない。


講演する中村悟郎氏。武蔵工業大学環境情報学部にて
ベトナム戦争における枯れ葉剤散布量と年度
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


講演する中村悟郎氏。武蔵工業大学環境情報学部にて
ベトナム最南端拡大図。赤い部分散布機の飛来軌跡
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 下の写真は、枯れ葉剤によって焦土と化したなかで、子供が立っている写真。中村氏は、その後、この子供を追跡している。この写真はベトナムはもちろん、米国からも提供を依頼され提供したという。


米軍による大量の枯れ葉剤散布により枯れ果てた森林
のなかにたたずむ少年
講演する中村悟郎氏。武蔵工業大学環境情報学部にて
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10


大量枯れ葉剤散布により砂漠化に向かうベトナムの国土
講演する中村悟郎氏。武蔵工業大学環境情報学部にて
 
 下の写真に写っている左側の男性はベトナム戦争で枯れ葉剤の直接的な影響を受け催奇形性をもっている。右側の男性はその子供である。

 
講演する中村悟郎氏。武蔵工業大学環境情報学部にて
撮影:青山貞一、Nikon CoolPix S10

 以の写真は、枯れ葉剤、エージェントオレンジに含まれていた2,3,7,8TCDDダイオキシンの催奇形性による癒合体双生児である。


ダイオキシンの催奇形性による癒合体双生児
出典・著作権:中村悟郎氏


ダイオキシンの催奇形性による癒合体双生児
出典・著作権:中村悟郎氏

 特別講演終了後、横浜キャンパス大学2階のカフェで中村悟郎氏を囲んで懇親した。


特別講義終了後、中村悟郎さんを囲んで。
前列中央が中村悟郎氏、左が青山貞一、右は宮坂栄一氏(武蔵工大教授)
後列左から2人目が池田こみち氏(環境総合研究所副所長)、
後列右端がべ ユン氏(慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科)

撮影:政野敦子氏、Nikon CoolPix S10


特別講義終了後、中村悟郎さんを囲んで。
前列中央が中村悟郎氏、左が青山貞一、右は宮坂栄一氏(武蔵工大教授)
後列、左から2人目が政野敦子氏(ジャーナリスト、東京工大大学院生)

撮影:池田こみち氏、Nikon CoolPix S10