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大マスコミは
なぜ反対しないのか
〜教育基本法改悪〜

日刊ゲンダイ

掲載:2006年11月15日


─ Dailymail Businessより ─────────────
■ 大マスコミはなぜ反対しないのか
■ 問題の教育基本法が様々な点で改悪であるのが常識なのに、
■ 大新聞の記者諸君はなぜ沈黙しているのか
■ この悪法案の本当の正体は民主主義の否定だ
■ それでいいのか何も知らない国民の皆さん
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国家と個人に関するこの大問題を単なる政争のようにタレ流している大新聞・テレビは再び言論機関としての役割を自ら放棄しデタラメ政治に加担しているが、その行く先はどうなるのか承知の上なのか
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 いま日本中を騒がせている子供たちの「いじめ自殺」や「履修不足」問題を勝手に追い風だと理解して、安倍政権は教育基本法改正の強行採決を狙っている。基本法の改正イコール教育改革というフレコミだ。

 しかし、教育現場の荒廃の問題と、教育基本法の改正は全然関係がない。まったく別物だ。国民はここをシッカリ理解しないとごまかされるし、大マスコミがなぜそこを繰り返し突かないのか、本当に不思議だ。

「いま教育の改革が必要なことは国民のだれもが感じています。いじめ問題の徹底調査と撲滅の対策づくりとか、クラスのいじめ問題に対処できず、見て見ぬフリの教師や校長を鍛え直すことは緊急課題です。未履修問題の根本的原因の究明、さらに事なかれ主義の教育委員会の改革などにしても、国会で議論するまでもなく、政治や行政は早急に手をつけなければウソです。

 こうした教育改革ならだれも反対しないし、歓迎される。しかし、いま国会で安倍政権が採決を急いでいる教育基本法の改正は、狙いが愛国心の押し付けや国家の教育統制であり、教育現場の荒廃の改善と全然関係がない。

 基本法が改正されて、いじめがなくなったり、教育委員会がまともに機能することはないのです。それなのに安倍政権は、学校事件への関心の高さを悪用して、別物の教育基本法をイジろうとしているのだから許せない。悪質ですよ」(九大名誉教授・斎藤文男氏=憲法)
 
 言論機関としての大マスコミの役割は、この重大な矛盾とペテンを国民に教えてやることだ。緊急に心臓手術が必要な患者に、おカド違いの全身美容整形をしている病院があったら、大マスコミの記者は「おかしい」とカミつくはず。それと同じことなのに、なぜか報じない。

 報じていることといえば、「教育基本法、来週、衆院委可決へ」「審議時間80時間」「野党抵抗、近づく限界」といった永田町の動きのタレ流しだ。トンチンカンすぎるし、意図的にやっているのなら、国民読者への犯罪だ。

 どうして安倍政権にそこまで弱腰になる必要があるのか。

◆ 憲法改正のジャマになるから基本法を改悪の愚 ◆

 そもそも、なぜ教育基本法を変える必要があるのか。教育基本法のどこが間違っているというのか。

 敗戦直後の1947年に制定された教育基本法は、簡単に言えば、戦前の全体主義教育を排し、個人の尊重の大切さを目的にしている。「真理と正義を愛し」「個人の価値をたっとび」「勤労と責任を重んじ」など、誰も否定できない当たり前の文言が並び、理想の教育理念が掲げられている。

 それなのに安倍首相と自民党が、遮二無二教育基本法を変えようとしているのは、ズバリ、教育基本法が改憲のジャマになるからだ。

 教育基本法は、制定する時に「憲法の一部に含めてはどうか」という意見があったほど憲法と密接な関係にある。前文には「われらは、さきに、日本国憲法を確定し……この理想の実現は、根本において教育の力にまつ」とも記されている。

 祖父・岸信介の悲願だった改憲にまっしぐらの安倍首相は、憲法とセットになっている教育基本法を“抹殺”したくて仕方がない。

 評論家の立花隆氏は、〈憲法改正を実現するために「将を射んとすればまず馬を射よ」の教えどおり、まず憲法の馬(教育基本法)を射ようとしている〉(朝日新聞11月6日付夕刊)と喝破した。その通りだろう。