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議会制民主主義という幻想と
放射能汚染という現実の狭間で
前桐生市議会議員
庭山 由紀
投稿
掲載月日:2012年8月30日
 独立系メディア E−wave Tokyo



撮影:青山貞一 Nikon CoolPix S8 2012-9-7

 2012年6月20日に桐生市議会から除名されました。除名とはつまり、「議員をクビ」になったということです。

 選挙で選出された議員を、議会でクビにすることができるという地方議会独特の有権者を愚弄するシステムがあることを多くの皆様に知っていただく機会に恵まれ、大変嬉しく思っています。

 この市民・国民を愚弄するシステムは、この除名だけにとどまりません。地方議会の存在そのものが市民を馬鹿にするものであることを知っていただきたく、また、国民のいのちと健康を第一に考えない国の方針の言いなりの状態で、地方行政が運営され、市民の安全確保ではなく“安心”を優先させている放射能問題の実態を知っていただきたく、ペンを執りました。

 私が議員になったのは、2007年、市民の意見を無視して強引に進められる学校の統廃合と、市の財政状況が悪化の一途をたどりながらも無駄な公共事業が繰り返されることに怒りを感じ、選挙に出ました。言論の府である議会の場で議論したいと思ったからです。

 人生初の選挙。ジバン、カバン、カンバンといったいわゆる選挙の三種の神器なるものをひとつも持たずに立候補しました。無茶な立候補でしたが、応援してくださった友人、知人の人徳で当選できました。そして、意気込んで議会に臨んだのですが、そこは言論の府ではありませんでした。


【地方議会の惨状】

 議会では質疑答弁は往復3回しかできないという、議会のルールがあり、議会での質疑内容は前もって当局(市役所側)に伝え、議会ではそれを読み上げるという“芝居”をします。

 討論というカタチはありますが、当局から出される議案は採決前に “談合”によって99%“多数決”で可決されます。これは桐生市議会に限ったことではないのですが、芝居、談合、多数決の八百長がまかり通っているのが地方議会の現状です。


飽きちゃうから半分の議員で審議する予算・決算特別委員会

 議会に入って最も納得できなかったことのひとつが、市民のみなさまからお預かりしている予算・決算の審議でした。予算・決算審議は、特別委員会が設置されるのですが、その特別委員会は半数の議員でしか構成されません。つまり、議員の半数でしか審議していませんでした(昨年の改選後、予算・決算審議は全員審議になりました)。

 この根拠・理由について調べたところ、桐生市議会では昭和42年から議員の半数でしか審議していないことがわかりました。議事録にはその理由が残っていないので、当時議員をやっていた人を訪ね、うかがったところ「今だってそうだろうけど、質問する議員としない議員がいるだろう。質問しない議員は飽きちゃって何度もトイレに行くんだよ。みっともないから半分にしたんだよ」と言われました。このような、全く唖然とする理由で、一番大事な審議が議員の半数でしか行われてこなかったのです。

 さらに予算・決算特別委員会の委員になる条件は「複数名の会派に入っていること」です。ですから、私のような「ひとり会派」は、はじめから審議に入れません。これに疑義の声を上げ「現在、1人会派ということで、総括質疑も決算審議もできず、市民の皆様からいただいた市税の使途について、議員として当然あるべき審議の権利を奪われています」という発言したのですが、これに対して桐生市議会は「議員として当然あるべき審議の権利を奪われているという発言は、他議員の名誉を傷つけるものである」と私に対する最初の問責決議を可決しました。


お小遣いつきの行政視察

 議会のルールは議会を構成している議員が決めます。議員の報酬金額も、政務調査費の使途や金額も、視察旅費計算の仕方もすべて議員が決めます。

 行政視察は、課題や問題があるから行くのではありません。年度末に、一人当たりの視察旅費予算があてがわれます。桐生市議会では常任委員会の視察日の場合、ひとり2泊3日で12万円です。議会事務局は、これを消化する距離にある視察先をいくつか選定します。そしてご丁寧に、もっともらしい視察項目まで考えてくます。また「6月の視察なら、関東とか梅雨の季節だから、カラッとした北海道がいいよ」。こんなことをアドバイスくださった先輩議員もいます。

 行政視察は職員同行の元、まるで大名行列のようです。視察時間は1自治体で2時間程度。小学校の社会科見学と大差ありません。夜の宴会費用も公費から支出されます。さらに、この視察に参加すると約1万円の余剰金が発生するように仕組まれており(例えば、グリーン車に乗らないのにグリーン料金で交通費が計算され、6000円〜8000円のビジネスホテルに泊まるのに、1泊すると15700円の宿泊代が支給されます)、この余剰分は議員のお小遣いになります。

 「こういうことは市民の理解を得られないのではないか」。議員になった当初、疑義を唱えた私に、「我々は議会のルールにのっとってやっている。違法なことをしているわけではない」と言ってのけたのが、現在の桐生市議会議長の荒木恵司議長です。(視察旅費計算については、改選後条例改正されました。)

 何百万円も費やして大名行列のようなで視察に行って、視察先で勉強してきたことが行政で活かされた試しはありません。


デタラメな政務調査費使途と馴れ合いの監査

 政務調査費の使途基準も既得権益を最大限に活かそうとする議員たちによって決められるので、自宅で購読する新聞代から趣味の本、議会とどういう関連があるのか不明なアンプの購入、1議員に年に2台ものコピー機の購入が認められます。中には、日当と交通費を得て大学院に通うものもいましたし、同日に東京と伊香保に研修に行って政務調査費を二重取りした者もいます。

 平成22年9月議会では、私がこのような事実を議員の実名挙げて議会で明らかにしたため、この時ばかりは事実が市民に知られては困ると思ったのでしょうか。桐生市議会はケーブルテレビの放送を中止させました。そして、多数派議員のナカマは、お互いにかばいあうことで、問題をもみ消そうとしました。

 ところが、本件については住民監査請求が出されました。ところが、監査委員は問題議員を呼び出し、問うたようですが、「注意」で終わりました。なぜなら、住民監査請求が出された後、ヤバイものは取り下げたり、修正されたからです。

 その後の9月議会の決算特別委員会の中において、私は本件について監査委員の責任を追及しました。すると当事監査委員長を務めていた大島宏周氏は「議員たるものと話し合ってそれを信じるのか信じないのかと言われても、私のほうにすれば信じざるを得ない。相手は桐生の議員なのです。

 それを信じられるか、信じられないかと言われれば、やはり私のほうにすれば信じるよりないと思うのです。そういうものではないのですか、議員というのは。庭山委員もそうだけれども。市民から選ばれて出ている人たちのことを言われたから、それを一々疑ってかかっていたらどうなのでしょう」と答えました。監査する人間が、監査される側の人間をはじめから“信じるより他ない”という意識で監査するというのです。このことから、地方自治体の監査制度は機能していないことがお分かりいただけると思います。

 議員たちは、生活に追われて議会を監視することのできないことをいいこと幸いに、市民を侮っています。選挙のときは「市民の皆様のために!」と嘯きますが、私は彼らが市民のために仕事をしたのを見たことがありません。それどころか、自分たちがいかに仕事をしないで市民の平均年収の何倍もの高額報酬を得て、議員という身分を維持するか。そのためにいかに当局職員と仲良くしてうまくやるかは、彼らにとってかなり重要です。なぜ、当局職員を仲良くするかといえば、市が抱える問題や出された議案などを調査・審議する能力が議員にないからです。

 とりあえず選挙では「市民の皆様のために」と言ってしまった手前、議員になって何もしないわけにはいきません。しかし、能力がないので、職員から、職員と議員にとって都合のいい情報だけを得て、職員協力の下、質問や賛成討論を書き、市民の皆様のために働く議員を演じます。議場は議会ごっこをするための芝居小屋です。

 桐生市議会は地方議会の中でもかなり露骨にデタラメな事をするのでわかりやすいのですが、全国どこの自治体も大差ありません。是非、お住まいの議会を傍聴したり、議事録を見たり、政務調査費の使途について確認してみてください。


【放射能汚染をめぐる行政との闘い】

 2011年3月11日、東日本大震災が発生し、東京電力による福島第一原発事故が起こりました。ガソリン不足によるパニックや計画停電などで議会開会もままなりませんでした。

 国が情報を隠蔽する中、ネットで海外からの情報やツイッターなどで情報を収集していた私は、大変なことになったと途方にくれました。そんな中、心配して連絡をくれた遠方の知人に、子どもたちを10日あまり、預かってもらいました。本当は、そのまま遠方においておきたかったのですが、ちょうど私たちの子どもは、卒園と卒業を控えており、夫や両親に懇願され、情に流され、卒業式前日に呼び戻しました。人生最大の後悔です。

 計画停電の合間を縫って、議会は開かれました。その間、放射能の問題について、問題提起も報告も、全くありませんでした。

 議会最終日。私はいたたまれない気持ちで「福島原発の件が非常に懸念されます。6基あるうちの4基が既に危ない状態です。これに対する対策というものを是非考えて下さい。このまま黙って被曝させるわけにはいきません。子供たちへの対応を早急に考えていただきたい。また、できることなら避難をする、できる人は避難するほうがいいのではないか。そう言うことを行政として広報してもらえないか」と発言しました。しかし、議場では、他議員から冷笑され、選挙前の3月議会は終了しました。

 2011年4月、統一地方選挙がありました。再度出馬するかどうか迷いました。しかし、選挙は市民のために働かない桐生市議会の問題を市民に知っていただくチャンスととらえ、また議会のあり方に疑問を持つ数名の新人候補者も選挙に挑んだこともあり、市民のために働く議会にできるのではないかと、再度挑戦することにしました。しかし、そのときの前提は、私の両親に子どもたちを預け、西に避難してもらうことでした。

 なぜなら、桐生は放射能に汚染されていると確信していたからです。放射能からは、避けるか逃げるかしかありません。放射能とは、戦えません。しかし、結果的には、子どもたちの避難計画は頓挫し、私は当選し、不本意ながら、桐生で子育てしながら、放射能問題に取り組むことになりました。


補正される空間線量

 5月。学校の空間放射線量だけでも測ってほしいという父母たちと、教育委員会に測定をお願いしました。が、当然「そんなことは知らない」「そんなことはやらない」の一点張りでした。それでも、何度も通いました。ところが、5月18日に市民からメールをもらいます。

「先週散歩中、川内幼稚園での放射線量計測に遭遇いたしました。消防と職員の方々が記載中の数値を伺うと、地上80cmで0.5μSv/hとのことでした。地上直上はまだ未計測とのことでしが、地上80cmでも年間5mSvとなる数値です。地上直上や雨樋、排水溝付近ではどの位の数値になるのでしょうか?今日も砂場付近で裸足で遊ぶ園児の姿をみると、桐生もただ事ではないぞという感じです。是非、ご確認ください。」

 翌日まず消防へ行き、空間線量を測定した事実を確認し、その後教育委員会へ行きました。消防で測定の確認をしたことを伝えるとようやく、茂木曉至教育部長は消防が所持しているガイガーカウンターで測定した事実は認めましたが、その数値については「機械の性能が悪いので公表しない」の一点張りでした。

 今でもその数値は公表されていません。ところが、10月19日群馬県の調査によると、その地域のイノシシから1キログラムあたり49.8ベクレルのセシウムが検出されました。セシウムはイノシシだけに降り注ぐものではありません。空間線量を測定して、すぐに伝達してくれたら防げた被曝なのにと、悔やまれてなりません。

 桐生市は2011年6月から空間線量の測定を開始しますが、公表する数値が第4回(2011年7月19-21日測定)から急激に下がります。それは、桐生市は群馬県立県民健康科学大学に依頼して補正値を計算させたからです。つまり、桐生市は補正値をかけることで空間線量を故意に低く公表しています。


子どものいのちと健康より産地の風評を懸念する教育委員会

 日本政府は一方で放射能汚染された情報を隠蔽し、一方でマスコミと結託して「健康に、直ちに影響はありません」「食べて応援」などとPRしました。


 原発や放射能問題について無知であった私たちは必死で情報を集めました。桐生市は放射能に汚染されているようだ。日本政府の暫定基準が世界が驚愕するほど危険な高いレベルであることを知りました。

 子どもたちが毎日食べている学校給食はどうなっているのだろう。子どものたちの健康を心配するパパやママたちは、給食食材の産地の公表や、食材のベクレル検査をしてほしいなど教育委員会に懇願しましたが、重い腰は上がりませんでした。それどころか、教育委員会の東郷直子委員は5月の定例会で「福島で売れ残った野菜を学校給食で使ったらどうか」と提案しました。子どものことを第一に考えるはずの教育委員会ですが、この「福島で売れ残った野菜を給食で」という意見に反対する委員の声はありませんでした。

 6月には群馬大学の早川由紀夫教授による放射能汚染地図がネットで公表されました。いよいよ群馬県は福島県の次に汚染されていること、桐生市も汚染されていることが、より具体的に明らかになってきます。

 とにかく、放射能による子どものいのちと健康への影響を危惧するママたちと「子どもたちのすこやかな成長のための学校給食の安全性確保に関する請願」を出しました。

 桐生市は8月下旬から、給食食材の検査を始めました。月に2回、1回の検査で3品目の食材を横浜の同位体研究所に出すことになりました。検査結果は市のホームページで公開されました。この検査の目的は、福島第一原発事故の放射能漏れによる影響を懸念してのものでした。ところが、鳥取県などの遠方の食材も検体として出していました。そして、すべての食材がND(不検出)でした。

 不審に思った私は、検体提出書類と検査結果、その領収書を資料請求して確認しました。すると、10月5日に検体で出された群馬県産の白菜から、セシウムが18ベクレル検出されていること、そしてこれが公開されていないことを突き止めました。これについて問い詰めると、茂木曉至教育部長は「産地の風評を懸念して情報を公開しなかった」と答えました。

 このセシウム検出の事実は、未だに市のホームページで修正も謝罪もされていません。その理由は、「新聞で報道されたので、修正の必要がない」ということです。

 また昨年の10月11日から桐生市は給食食材の産地を公表しています。毎朝、市のホームページと学校内に、使用するすべての給食食材の産地が公開・掲示されます。しかし、納品書を確認したところ、納品書には、日付がないもの、数量がないもの、価格が明記されていないものまであり、当然、産地は書かれていませんでした。何を根拠に産地を確認しているのか担当職員に問うと「今までの経験(カン)で産地を公表してる」ということでした。

 納品書ひとつ満足に処理できない職員に、平均620万円、管理職になれば1000万円を超える給与が、私たちの血税から支払われています。


放射能汚染されている桐生市のゴミ・汚泥と瓦礫受け入れ問題

 桐生市は放射能汚染されています。それは、空間線量をみても、桐生市から排出されるゴミや下水汚泥の焼却灰のデータを見ても、明らかにわかります。しかし、行政も議会もこの放射能汚染の事実を認めません。特に象徴的なのは、先の3月議会で森山享大議員が『放射性物質から市民生活の安全安心を守ることを求める』決議案と意見書案を出てきました。

 ところが、この意見書は、桐生市が放射能に汚染されていることを認めていないものでした。放射能に汚染されているというのは風評で、この風評払拭のために市民に安心してもらおうというものです。しかしまた、一方で放射能汚染を認めないにもかかわらず、一方で除染を推奨する矛盾もあります。「桐生は放射能汚染地域です。市民を安易に安心させるより、安全確保が先決です」と私は反対しました。が、私以外の議員は全員、これに賛成しました。

 しかし、議員たちや職員たちが、どんなに「桐生市は放射能汚染地域ではない」と言い張っても、福島第一原発事故によって放射性物質が桐生に降り注いだ事実は変わりません。それは、空間線量も事故前の値(文部科学省のデータによると群馬県の平均は毎時0.033マイクロシーベルト)と比較しても高いですし、桐生市から出されるゴミや下水汚泥を焼却すると、数千〜16000ベクレルを超えるセシウムが検出されます。

 現在の日本では、原子力発電所などで出る放射性廃棄物は、本来低レベル放射性廃棄物としてカンリすべき100ベクレル以下のものは“便宜上”リサイクル可能としました。そして100ベクレル以上のものは黄色いドラム缶に入れて厳重に管理されています。それにもかかわらず、その何十倍、何百万倍もの放射性物質が野ざらしの状態で放置されていました。

 さすがに国の暫定基準8000ベクレルを倍以上超える16600ベクレルの下水汚泥焼却灰(2011年5月19日検査)は、お花見ブルーシートで包まれていました。それを水道局職員は「管理」と言います。しかし、原発事故から5月19日以前の、おそらくもっと放射性セシウムが高濃度に含まれているであろう下水汚泥焼却灰は、最終処分場内のどこに棄てたかわからないそうです。さらに最悪なのは、ゴミ処理施設や最終処分場で扱う約束のない放射性物質を含むゴミや下水汚泥の焼却、処分について近隣住民にお知らせさえしていませんでした。

 桐生市の放射性物質を含むゴミや汚泥の管理は、特にズサン極まりありませんが、放射能に汚染された東北関東地域の自治体は、自分のまちから出ているゴミや汚泥の処分や管理が十分にできていないのがほとんどでしょう。このような状況下で、日本政府は「東北被災地の復興が進まないのは津波によるガレキの処分が進まないからだ」という名目で、やはり放射能に汚染されている宮城や岩手のガレキを全国の自治体に処分の協力を求めてきました。

 全国でこのガレキ拡散問題については疑問の声が上がり、桐生市でも安全性を懸念する声が上がりました。そこでツイッターで「ガレキ受け入れについて市民の声を届けませんか」と呼びかけました。

 するとおよそ40人の市民が集まり、市役所に抗議しました。また、ネットや電話などを使って、ガレキ受け入れの反対の声を届けました。さらに、最終処分場のズサンな管理実態を市民に見てもらおうということで、現地見学会を開催し、自由報道協会の記者に取材していただきました。

 おかげで桐生市の放射性物質を高濃度に含んだ下水汚泥焼却灰のズサンな管理体制が全国に知れ渡りました。私も3月議会で、瓦礫の広域拡散について、その安全性と法的問題、不必要なコスト負担とこれが次世代へのツケになる危険性を問う質問をしましたが、市長ならびに職員は「調査・検討している」の一点張りでした。

 3月16日に議会が終了し、これを待っていたかのように27日に大沢正明群馬県知事同席の元、亀山豊文桐生市長は「ガレキの安全性が確保できたので受け入れを判断した」と表明をしました。

 その後、桐生市は「市民に説明しました」というステップを踏むために、桐生市と伊勢崎市でそれぞれ1回ずつ住民説明会を行いました。しかし、当然のことながら、市民の理解を得ることはできませんでした。亀山豊文桐生市長は、地元住民や市民にしっかり説明していくことを3月27日の記者会見で明言しましたが、未だにこの約束は守られていません。

 また桐生市は、4月1日に放射線対策室を設置しました。しかし、「私たちがやっているのは除染です」と対策室の職員が言うように、目的を果たすものではありません。また、5月9日には要綱非公開のまま「桐生市災害廃棄物受入監視員会」が設置されました。委員は公募されず、桐生市から報酬をもらって審議委員をしている大学教授や行政と関係のある病院の放射線科の医師、清掃センターの地元対策委員、農協関係者、PTA関係者などが選定されました。

 5月9日に行われた第1回の委員会の中で、赤岩委員長は「安全を担保するのは難しい。この委員会では風評を払拭して市民に安心してもらいましょう」と発言しました。安全でない環境で市民を安心させる・・・この委員会の、恐ろしい目的を委員長は明言しました。

 マスコミは放射能の問題についてその危険性をほとんど報道しません。それどころか東北復興支援の名の元、「絆」だとか「思いやり」ということで瓦礫の全国拡散処理を推奨したり、東北被災地の野菜などを「食べて応援しよう」などとPRする始末です。

 放射能がどのような健康被害をもたらすかということについて、専門家の意見は両極端に分かれています。放射能の問題は、感情や根性でどうにかなるものではなく、科学的な問題です。放射能の問題、瓦礫問題について、もっと広く市民に知ってもらおうと、福島第一原発4号機の設計建設に携わった元群馬大学教授の五十嵐高先生を迎え、3回に渡って市民向けの勉強会を行いました。それでも放射能に対する市民の関心をひき寄せることはできませんでした。

 その後も、市民が説明会の再開を要望しても「やらない」と桐生市は答え、どんなに市民が反対の声を上げても、瓦礫受け入れの姿勢は変わりませんでした。

 瓦礫を受け入れる試験焼却をどうしても5月中に行わなくてはならない圧力があるようで、桐生市はまったく急ぐ理由がないにもかかわらず、5月31日と6月1日に試験焼却が行われることになりました。そして5月26日に瓦礫が搬入されることになり、仲間と相談して瓦礫を搬入するトラックを阻止すべく、トラックの前に立ちはだかり抗議行動をしました。

 およそ3時間粘りましたが、職員や警官と小競り合ったものの、結局トラックは施設内に入場しました。抗議行動をした市民もしなかった市民も、入場を規制されました。この間、亀山豊文市長は、裏口から施設内に入場し、私たちの前に現れることはありませんでした。

 そして桐生市では、8月からガレキの本焼却が始まるということです。

注釈)瓦礫の本格焼却の日については、国の都合で遅れており、いつからはじめるかはまだ未定とのことです(2012.8.30現在)


【不当な除名にこだわるべきか】

 5月25日に市役所前に献血車が止まっていたのを見て「放射能汚染地域に住む人の血って欲しいですか」とツイートしました。これは、数日前に、原発事故後、この子だけは被曝させまいと必死に幼子を守って、それでも心配で甲状腺の検査をしたところ、異常が見られたという話を聞いていたからです。

 事故後も、事故前と同じ生活をしていたり、あるいは「食べて応援」などしている人の血液はどうなっているのか。母乳や尿からセシウムが検出された新聞記事もありました。母乳や尿にセシウムが混入しているということは、当然血液にも含まれているはずです。このような報道や事実があるにもかかわらず、献血という事業を担っている日本赤十字社とこれを管轄する厚生省は、あまりに無責任ではないのでしょうか?

 また、「善意」ならば、無知ならば、内部被曝の拡散に寄与して良いのでしょうか?世界が驚愕する未曾有の原発事故にあっても、あまりに無責任な政府の管轄下で暮らす私たちは、私たちの行動が次世代に、どのような影響を与えるのか。私たち一人ひとりが、もっと、考えて行動すべきではないでしょうか。

 この私の献血ツイートは、「差別だ」「献血する善意の人を傷つけた」などと飛躍した解釈でネット炎上しました。が、福島第一原発事故現場で100ミリシーベルト以上被曝した作業員は半年間、献血することに制限がかかるということですが、それ以外については、基準値もなく、検査もまったくしていないことがわかりました。

 今回、私が除名になったのは、行政や議会の具体的問題を指摘し、徹底して情報公開を求めてきたこと。また放射能問題に対して執拗なほどに当局や議会の中外で、市民の被曝を少しでも抑えたいと、とにかく思いつくこと、できることをやり、当局からも、議会からも疎まれていました。

 加えて、例えば、昨年セシウムが高濃度に検出されたため出荷制限がかかった野菜を市民の口に入れて処分した新田みどり農協の橋場理事長や、高濃度に放射能汚染されている黒保根地域で検査もせずに山菜などを販売していた黒保根のやまびこ会などは、その事実を私にネットで指摘されその事実を公開されてしまったため、恨みの気持ちがあったのでしょう。

 献血ツイートで炎上したことは、彼らにとって私を追い出す大変なチャンスでした。

 私は6月20日に除名されました。

 ネット上での発言を元に除名することは全国でも始めてのことです。桐生市議会の行為は、議場外での個人的行為と議員の身分は関係ないという最高裁判例を無視した行為ですし、憲法で認められている元の自由にも反している問題があります。不正義は正すべきと思います。しかし、私は、除名取り消しの裁判をすべきかどうか、迷っています。

 今の桐生市議会に戻ったところで、私に何ができるのでしょうか。

 今回、ここに、私が体験した地方議会の本当にお粗末な実態の一部を紹介しましたが、選挙の時は「市民の皆様のために」と言いながら、当選後は会派に所属し、ほとんど質問も討論もせず、当局の出してきた議案や予算・決算をほとんど審議もせず、無責任な採決を繰り返すのが、議会制民主主義の実態です。

 自らの報酬金額や政務調査費の使途、お小遣いが出るように計算する視察旅費の計算方法から始まり、多数派議員に都合の悪い議員をクビにできるような、多数決で都合の良いようになんでも決められるのが、議会制民主主義のシステムです。

 加えて、議案や条例、予算は議会で承認されて執行されますが、実は最終責任は議会にはなく、執行者である首長にあります。議会の賛否は、例えそれが全会一致で可決されても、何の責任も問われません。

 放射能の問題について、国にならい桐生市も、そしておそらくほとんどの自治体は情報を隠蔽、あるいは意図的に情報を操作し公表しているでしょう。それは、子どものいのちと健康よりも、商業や農業の損失をいかに守るかということを優先しているからです。当局は、放射能対策について、そのステップを踏むだけで、市民の意見を聞くことはありません。市民の声を聞いたフリをするだけです。そして議会は当局から出されてきた議案や予算を承認するだけです。

 国に飼いならされたマスコミも、放射能問題について、その危険性や問題についてほとんど報じませんから、おかげで市民の危機意識は非常に希薄です。東電による原発事故からおよそ1年半。事故前と同じ生活をしている人がほとんどではないでしょうか。

 さらには、「絆」や「東北復興支援」の美名の下、放射能汚染されたガレキの拡散を声高に推奨したり、ほとんど検査されていない状態で流通している放射能汚染された土地で生産された食べ物を「食べて応援」している人も少なからずいます。

 しかし、もっと多いのは、放射能問題に無関心すぎる市民です。日々の生活に追われているせいでしょうか。情報を得ない(得られない)→情報を得ても咀嚼できない→思考停止→判断できない→自分と自分の子どものいのちと健康にかかわることも安易に他人に一任する。私は、こういう大人が非常に多い現実に、愕然としています。こういう大人が大多数を占め、投票するのですから、そういう議員が選ばれるのです。

 この国の将来はどうなってしまうのでしょう。

 どうぞ、国や行政の発する情報は鵜呑みにしないでください。

 国や行政が何を目的にしているのか、疑ってください。日本で起こった公害問題の歴史、チェルノブイリの事例を振り返ってください。そして、多様な情報を得ながら、ご自身で考え、判断して行動してください。議会制民主主義は幻想です。他人任せでは殺される社会です。なによりも、まず、ご自身とご自身の子どもを守ってください。

 お願いします。