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パナソニック経営難の解決策とは?
〜パラダイムシフトを考える


大前研一
今週のニュースの視点

掲載日:2012年11月9日

 
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〜大前研一ニュースの視点〜
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『パナソニック経営難の解決策とは?〜パラダイムシフトを考える』
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パナソニック 純損失6852億円
 スクウェア・エニックスHD 純損失が
54億円
 
シャープ 格付けを6段階引き下げ
 
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 ▼ パナソニックに求められているのは、パラダイムシフト
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 パナソニックが先月31日発表した2012年4月から9月までの中間決算は 6852億円の最終赤字となり、通期でも7650億円の最終赤字との予想を 発表しました。

 これにより、パナソニックは2年連続の巨額赤字を計上する見込みです。
 業績の悪化を受けて、株価も400円を割り込みストップ安を記録しています。

 このような状況のパナソニックについて心配している人は多いと思います。

 パナソニックの津賀社長は「パナソニックは普通の会社ではない、 それをしっかりと自覚しなくてはならない」と記者会見で述べていましたが、 結局のところ「今後パナソニックは何に集中するつもりなのか」という点は 何も説明しておらず、未だに模索中ということでした。

 「パナソニックはこういう会社になります」という発表ではなかったため、 ますます投資家にパニックを引き起こしただけ、と私は感じました。
 
 例えば、フィリップスは家電から手を引き、LEDや医療関係向け製品に 特化する方向性を示しました。

 IBMもかつては「箱売り(ハードウェア販売)」をしていましたが、 今ではソリューション提供中心にシフトしています。

 つまり、必要とされているのは「パラダイムシフト」なのです。

 パナソニックは大々的に事業部編成を行うそうですが、それだけではなく 「ある特定の1つか2つの分野で世界一を目指す」というような方向性を 示すべきだったと思います。

 スマートハウスを軸にしたハウジング分野、あるいはメディカル・医療分野 などは絶好の候補でしょう。

 新たな道を示す明確な方向性を早く示して欲しいと思います。

 また、パナソニックの赤字とは意味合いが異なりますが、 スクウェア・エニックス・ホールディングスが中間決算で 初の純損益が54億円の赤字になるとの見通しを発表しました。

 ゲームメーカーの純損益を見ると、ゲームソフト販売構成が「据置型」から 「携帯型」へいち早く転換できたか否かで明暗が別れたことが分かります。

 セガ、カプコン、バンダイナムコ、コナミなどは早いタイミングで 「携帯型」へ転換できたので、未だに利益が出ていますが、 一方のスクウェア・エニックス、任天堂は、非常に厳しい状況に追い込まれています。

 これもパラダイムシフトに乗り遅れた一つの事例です。

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 ▼ 日本は、際限なくモラルハザードが広がる国
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 先日格付け大手フィッチ・レーティングスは、シャープの格付けを これまでより6段階引き下げ、投機的水準の「シングルBマイナス」としたと 発表しました。
 
 私が問題だと感じているのは、どこから見ても「投機的」でしかない シャープに対して、日本の銀行が3500億円もの資金を融資していることです。
 
 これほど財務状況が悪化した企業に銀行がお金を貸す、 というのは通常考えられません。
 
 私はそんなことがまかり通る国を見たことがありません。
 
 銀行が「政府の御用聞き」に成り下がってしまい、金融機関としての 機能を果たせていないと言わざるをえないと思います。
 
 財務省が銀行を救済し、今度は銀行が企業を救済するという構図ですが、 完全にモラルハザードに陥っています。

 中小企業金融円滑化法の問題点については今さら指摘する必要はないと 思いますが、本来時限立法であったこの法律は延長を繰り返し、 問題の先送りを続けています。

 おそらく来年の期限切れのタイミングでも、 再び延長が検討されるのではないかと思います。

 日本という国は、モラルハザードが際限なく広がる国になってしまった、 そう強く感じてしまいます。
   
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  この大前研一のメッセージは11月4日にBBT557chで放映された  
  大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
  再構成しております。
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