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日本変革のブループリント





第三章 グローバルな小日本主義
「ミニマ・ヤポニア」(2)


佐藤清文
Seibun Satow

掲載日:2007年1月元旦


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すべて執筆者である佐藤清文氏にあります。



全体目次



2節 ソフト・パワーに基づく政策哲学

1 社会保障

 これまで論じてきたことからも明らかなように、社会保障制度の再編は最優先課題と位置づけるべきです。社会保障制度は新たな平等主義とリスクの社会化から制定しなければなりません。

 人々が社会保障制度に求めているのは質的充実です。すでに言及した通り、身近さを考慮し、コモンズを基盤とした社会の実態に合った社会保障制度の改変が必要です。

 高度医療の充実と情報開示などによって医療の質を向上させ、予防のために感染症型のネットワークを活用し、町医者と総合病院など各種医療機関の連携といったチーム医療の一層の拡充、医療と高齢者福祉の融合等がこれからの医療介護政策の柱です。

 また、社会的多様性確保の観点から、福祉の拡充も必須です。障害者援助や育児子育ての支援の質的向上は言うまでもありません。運のリスクは社会化すべきなのです。

 福祉と医療の連携を妨げているのは現在の官僚機構の規模の大きさです。現在は相互依存・相互浸透の時代です。

 縦割り・セクト主義の官僚機構は反時代的です。大規模な組織にそれを導入しても、混乱を生じさせてしまいます。規模の小さいコモンズならそういう弊害も少なくて済みます。

 現行の年金制度は、資金運用など金の流れが不透明であるなどの理由により、信頼性がありません。まず厚生官僚からギュゲスの指輪を取り上げなければなりません。

 老後の給付以外への運用を一切禁止して資金流出を止め、一律をやめて、掛け金を見直し、所得水準に見合い、人口構成に依存しない年金制度へ以降させるべきです。その間、積立金を切り崩して、給付に当てます。

 徴収と運用は、当然、別組織に担当させます。また、年金は老後のための経済的な準備ですから、医療や介護、生活保護と関係付ける必要があります。

 未来を念頭に置いた年金制度は、その改革において、社会の持続可能性と関連していることを再確認しなくてはなりません。開かれたコモンズが新たな可能性を暗示しています。

 クロアチアのドゥブロブニクは、長年に亘り、交易都市として栄え、一六世紀には地中海最大の商船隊を持ち、大国の支配下に入りながらも、自治共和国の地位を守ってきました。また、この街は強い権力者を置きませんでした。

 ドゥブロブニクの人々は各国の歴史を検討し、情報を収集して、今日から見ても、先進的な福祉政策を実施しています。

 多くの国の崩壊が社会保障の不備によると彼らは気づいていたのです。コモンズの知恵がこの街を繁栄し続けました。そこは小さくとも、懐の深さがあります。

 社会保障制度は外部経済に属します。その意義の肯定と内部化が市場経済での持続可能な社会を実現するとことの一つなのです。

つづく