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日本変革のブループリント





第二章 福祉国家を超えて(6)


佐藤清文
Seibun Satow

掲載日:2007年1月元旦


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すべて執筆者である佐藤清文氏にあります。



全体目次



3 高齢化世界

 少子高齢化は日本だけのドメスティックな問題ではなくなりつつあります。グローバル化しているのです。戦争がなく、政治が安定し、経済が発展すればする程、その社会は高齢化しやすくなります。

 高齢化社会はソフト・パワー時代の到来の証です。日本は世界で最初に少子高齢化と経済停滞を同時に経験した国ですから、その政策は後に続く諸国に影響を与えるのです。

 国連は、2000年2月末、2050年に世界の60歳以上の高齢者人口が20億人に達し、全人口の5分の1を占めるだろうと発表しています。日本大学広報第447によると、ナフィス・サディク国際連合人口基金事務局長は、2050年の人口について、70億から119億人程度の見込みであり、種々の人口抑制対策によって、将来の世界人口を90億人前後に抑えることも可能だと言っています。

 従来、高齢化は先進国に限った問題でしたが、これからはアジア地域を中心に発展途上国へと広がっていくのです。中でも、驚異的な経済発展を示す中国や韓国、台湾、タイ、シンガポールは日本以上のスピードで上昇するのはほぼ確実です。

 2002年時点では、高齢者人口が20%以上なのはヨーロッパと日本に限定されていますが、2050年では、サハラ以南のアフリカなどを除くほとんどの地域で20%を超えてしまいます。特に、日本を含め、中国や韓国、シンガポールなど太平洋岸のアジア諸国は30%を以上を示し、東アジア全体では、50年間で平均9%から31%に達して、増加率は世界最高です。

 東アジアはドラスティックに高齢地域に突入していきますが、その詳細を確認すると、事態は予断を許しません。現在、韓国の65歳以上人口の高齢化率は7%を超える程度ですが、14%を超えるスピードは日本以上と予測されています。

 しかも、総人口の約半分がソウルとその周辺に住んでいますので、農村地域の過疎化・高齢化は日本の比ではありません。台湾は、1993年の時点で、高齢者人口は7%を上回り、ハイ・ペースが続いています。台湾独自の傾向として、人口の男女比において、男性の比率が高い点が挙げられます。また、70年代以降、一人っ子政策を採った中国は、上海や北京、天津など都市部での高齢化が先行している特徴があります。

 中でも、上海の高齢化率は国内で最も高い12%に達し、すでに高齢社会です。さらに、東南アジア地域のタイやシンガポールは出生率が急速に低下しています。

 アジア人口・開発協会の調査報告書によると、タイの出生率は九〇年代中に1.94人と二人以下に下がり、シンガポールに至っては、すでに1.5人です。日本では出生率のピークは1947年から49年にかけての四・四人であるのに対し、タイでは六〇年代まで六人以上ですから、少子化のスピードは日本の比ではありません。

 現段階では、タイとシンガポールの高齢化率は10%前後ですが、2050年には、間違いなく極端な少子高齢化社会を迎えます。

 この他にも、マレーシアやインドネシアも都市部を中心に少子高齢化がすでに始まっており、今後も急速に進むと見られています。少子高齢化は政治的安定と経済的発展の産物なのです。この詳細は東芝けあコミュニティ
でも確認できます。

 これらの諸国は、高度経済成長の日本と同じように、都市への人口集中と農村の過疎化が起きています。

 しかし、バンコクの交通渋滞は、「首都駐」と皮肉られる首都高速道路に慣れた人にとっても、呆れる程です。これだけの人口変動は日本の経験でもなかなか捉えにくいものです。

 他方、日本を含むOECD諸国は第二段階に入り、人口が減少していきます。グローバルな人口分布・構成の変化はワールド・ワイドな政治・経済・文化の変動をもたらすでしょう。

「こんなにも豊かな、というか、バニティーな生活って、いつまでも続くわけないな」ということは確かなのです。

 しかも、先に挙げたアジア諸国は、経済発展を優先させるため、日本同様、穴の多い社会保障政策をとっているケースも少なくありません。ですから、日本のこれからの社会保障は国内だけの問題ではなくなるのです。急速なグローバルな高齢化の中、成長しつつあるアジアは日本を見ているのです。

つづく