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大間崎と大間原発建設現場

  鷹取 敦
環境総合研究所(東京都目黒区)

掲載日:2014年5月22日
独立系メディア E-wave Tokyo
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 下北半島、本州最北端の大間崎(おおまざき)を訪れた。とても風が強い日で風で歩くのが困難なくらいだった。四半世紀ほど前に友人と来た時にも同じように風が強い日だったことを思い出した。

 大間崎は下北半島の中でも特に北に尖っている。東、北、西を津軽海峡に囲まれ、周囲300度以上の範囲が海である。そのため周辺の地形の影響を受けにくく、内陸と比較して風は強くなりやすい。この地形と気象条件は、大間原発の影響と密接に関係している。

 大間崎の先端には、豊国丸戦死者忠霊碑、石川啄木歌碑、本州最北端のモニュメント、まぐろ一本釣のまちを象徴するまぐろと腕の石像等が並んでいた。石川啄木の歌碑の裏をみると地元企業等の名前に並んで「電源開発株式会社」の名前がある。建設中の大間原発が電源開発の発電所だからであろう。


石川啄木の歌碑
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-17

 大間崎の観光案内所のようなところで案内の方にうかがったところ、大間と函館の間は1日2便、定期船が往復しており、大間から函館の病院に行くときには朝の船で函館に行き、夕方の船で大間に戻ってくるそうである。このように津軽海峡を隔ててはいるが大間町(青森県)と函館市(北海道)は、生活圏を形成しており、地域社会としての関係も深い。


函館−大間館の定期船の時刻表
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-17

 2014年4月、その函館市が大間原発の建設差し止めを求める訴訟を提起した。大間崎をふく強い風に象徴されるように、函館と大間の間には津軽海峡があり、風を遮る山などの地形がない。万が一、大間原発が過酷事故を起こせば、放射性物質が、津軽海峡を渡って函館に到達するから、大間原発から直線距離でわずか二十数キロの位置に市域がかかり、30キロ圏に含まれる函館市の大間原発稼働への危機感は当然であろう。環境総合研究所による原発事故時の影響予測でも、このような地形的な特徴が予測結果に表れている。

 大間崎からわずか3km南側に、建設中の大間原発がある。西側を津軽海峡に面した敷地である。敷地面積約130万u、出力138.3万kWの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)で、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する計画である。


大間原発建設現場(北側から)
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-17

 ちなみに6基の原発のうち3基で過酷事故を起こしている福島第一原発の敷地面積は約350万uである。現在、汚染水を貯めるタンクを1〜3号機側の敷地内に建設しつづけている。タンクからの汚染水漏れや移送ミス、敷地の制約等もあるため、発生する汚染水を減らすため、地下水をバイパスして海に放出したり、国費を投じて凍土壁を建設しようとしているが、漁業への風評被害や対策の有効性等について課題が指摘されている。
※国費を投入するために「実験」「研究」の名目で建設するために、実績のない「凍土壁」が選ばれたという経緯がある。


汚染水タンク群(出典:東京電力サイトより)

 いずれにしてもタンクを建設し続けなければならない状況に当面変わりはなく、敷地に十分余裕があることも重要だということが分かるが、その点、大間原発の敷地は原子炉の数は異なるものの、いかにもせまい。計画地を迂回する「大間バイパス」(国道338号)を自動車で走るとすぐに反対側の奥戸(おこっぺ)漁港に出る。


大間原発敷地を迂回する国道338号(グーグルマップ)

 原発の敷地を迂回するバイパスの途中から原発の敷地内に向かって両側をフェンスで挟まれた細い道があり、道の終端には「あさこはうす」と呼ばれている小さな一軒家がある。原発建設反対を貫く土地所有者・熊谷あさこさんが電源開発(株)に土地を売却せずに未買収のままとなった土地である。このため、原発関連施設は設計変更され南側に移動されている。現在は娘さんの小笠原厚子さんが、あさこはうすを守っているそうである。あさこはうすには風車や太陽光パネル、畑があり、ニワトリの声が聞こえることからエネルギーも食も自給自足できるようになっていることが分かる。


あさこはうす
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-17

 敷地の南側に位置する奥戸漁港に行くと、建設現場がよく見えた。港と建設現場の間には、3〜5メートルもあると思われる壁が建てられており、原発敷地の方に近づくと建設現場が見えないようになっている。(ただし陸側を迂回することは出来るので目隠しとしての効果は疑問である。)巨大なクレーンは動いていなかったが、原発の建屋の外見がほぼ完成している様子が分かる。


大間原発建設現場(建屋)
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-17

 道路の東側の階段を上ると海抜約22メートルの高さにある防災公園に出て、建設現場を見下ろすことができる。原発敷地のすぐ近くにまで漁港と住宅が広がっている。


奥が大間原発建設現場、手間は奥戸漁港周辺の街並み
撮影:鷹取敦 Sony DSC-HX50V 2014-5-17

 「大間のマグロ」(クロマグロ・ホンマグロ)で有名な大間であるが、福島第一原発事故後の汚染水問題が、当面収束しそうもないことを考えると、大間原発が稼働して大間と原発のイメージが結びついてしまうと、大間の漁業への影響も逃れられないのではないだろうか。

 電源開発は平成26年11月の営業運転開始を目指していると、大間のマグロのイラストのある大間町のウェブサイトに記載されている。工事は東日本大震災で停止していたが、平成24年10月に再開されている。


大間町サイト(大間原子力発電所の情報)

参考資料:
函館市サイト(函館市長から電源開発への質問状)