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国際シンポ
「レジリエントな社会形成を目指して」
参加記

鷹取敦

掲載月日:2011年12月4日
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 2011年12月3日(土)、東京都市大学(以下都市大)横浜キャンパスで、都市大と延世大学(韓国)による国際シンポジウム「レジリエントな社会形成を目指して」が開催された。2011年9月11日に延世大で開催された第1回に続く第2回の研究・教育交流として「レジリエントな社会形成を目指して」と題して開催されたものである。

 2011年入り、ソウル市での大洪水、東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故により生じた汚染問題などの大きな災害が生じた。これを契機として持続可能な社会の形成を考えるための要素として「community resilience」に焦点を当てて議論が行われた。「resilience」とは回復力のことを意味する。つまり災害等の影響からいかにして回復する力を持つかということであろう。

 中村英夫 都市大学長の開会挨拶(日本語)、Tae Yoon Park 延世大教育大学院教授からの挨拶(英語)に続き、基調講演としして崔相龍 元駐日大韓民国大使、現法政大学特任教授より「今、平和と民主主義を考える」と題した基調講演(日本語)が行われた。

 元駐日大使である崔相龍氏は、現在日本の法政大学で特任教授として教鞭を執っており、基調講演は日本語によるものであった。(1)平和とは何か(2)平和をどう実現するか(3)平和と政治体制の関係、という3つの柱を立て平和と民主主義について幅広い観点から話された。民主主義を掲げるアメリカが戦争ばかりしているパラドックスは、アメリカが民主平和論の哲学的根拠をカントのみに限定していることにあること、ネオコン中心の外交政策に関する批判、日本、韓国で国内の格差が広がり、中国ではそれよりもさらに大きな格差が生じていること等も指摘しながら、元外交官ならではの、しかし率直な表現で話された。


基調講演:崔相龍氏

 質疑では都市大学生か本質に関わる質問が出され、崔相龍氏は質問のクオリティが高いと評価されていた。

 基調講演の後に9月の第1回ワークショップのわかりやすい報告が参加された学生3名により行われ、とても有意義な交流であったことが伝わった。

 昼食をはさんで行われた、シンポジウムでは日韓両国から9件の発表があった。タイトルと発表者は次の通りである。地域のあり方、農業の持続可能性、ヒ素による飲料水汚染、環境教育、NGO活動、清渓川の復活、福島の津波・原発問題と地域の回復等、様々な観点からの発表があった。発表および質疑は両国の参加者の共通言語である英語で行われた。

 同じテーマを共有しながらも全く異なる分野の発表であり、非常に興味深いものばかりであった。

(1)Resilience, Community and Social Memory: From the Perspective of Environmental Sociology
発表者:大塚善樹(都市大)

(2)Equilibrium between Agricultural Productivity and Environment: Focusing on Water Use in Asian Region
 発表者:Young Deuk Kim (都市大)

(3)Strengthening the Resilience of the Arsenic Problem in Bangladesh
 発表者:島村雅英(都市大)

(4)The Importance of Environmental Literacy for Community Resilience
 発表者:SeongYul Jo(延世大)

(5)Survey on Elementary School Teachers’ Perceptions Regarding the Partnership with Corporation for Resilient Community
 発表者:Yisung Kim(延世大)

(6)Climate Change Education for Community Resilience in Korea
 発表者:Tae Yoon Park(延世大)

(7)The Role of Environmental NGO for Community Resilience
 発表者:MongJea You(延世大、NGO White Peace 事務局長)

(8)Urban Stream Restoration for Community Resilience in Korea
 発表者:KyungAe Chang(延世大)

(9)For the lessons to be learned from the Past Disasters ~Based on the Study Tours to the Sanriku Area affected by the Great East Japan Earthquakes of 3.11~
 発表者:青山貞一(都市大)、池田こみち(環境総合研究所)
     *鷹取敦・筆者(環境総合研究所)
 *:当日の発表者

 その後に行われたパネル討論は、小堀洋美教授(都市大)が司会を行い、Young Deuk Kim(都市大)、Tae Yoon Park(延世大学)、Yisung Kim(延世大)、鷹取敦(環境総研)の4人がパネリストとなり、Resilient Community 関連しもっとも重要な要素、期待されること、教育に関連して必要なこと等について、それぞれの立場からの意見を述べた。

 筆者は、発表内容に関連し、また震災発生以来の日本における課題に関連するものとして、合意形成のあり方、透明性、住民参加が重要であること、現場から学ぶこと等の重要性について述べた。

 シンポジウムは都市大の吉崎真司環境情報学部長の挨拶で締めくくられた。

 シンポジウム終了後には日韓両国の発表者および都市大学生が参加して交流会が行われ、そこでも夜まで有意義な議論がくり広げられた。

 あいにく雨天の一日であったが、日韓だけでなく総合司会のリジャル ホム・バハドゥル都市大講師(ネパール)も含めて異なる国、異なる研究分野、異なる立場、異なる年齢からの参加者からの発表、討論、交流のある非常に有意義な一日であった。

 貴重な機会をいただいた青山貞一教授、小堀洋美教授、日本語が非常に流ちょうで進行も勤められた都市大咸泳植講師とリジャル ホム・バハドゥル講師、事務局をされた東京都市大学の学生のみなさん、日韓の発表者のみなさんに心よりお礼を申し上げたい。