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特集:沖縄現地視察
沖縄現地視察を終えて
B首里・具志川・知念・漁港・ビーチ

鷹取 敦
 
2009年2月17日 無断転載禁



 本特集では、2009年2月13日(金)から15日(日)に行った武蔵工業大学環境情報学部(この4月より東京都市大学環境情報学部)の青山研究室と株式会社環境総合研究所による合同沖縄県現地調査についてその概要を報告する。


■2009年2月15日(日)

◆首里城・平和祈念公園・ひめゆりの塔◆


 首里城と平和祈念公園は以前にも訪れたことがある。


首里城にて
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10

 空港から行きやすいこともあり、日曜日ということもあってか、今回も大勢の人が訪れていた。

 平和祈念公園の平和の礎には国籍・敵味方も問わず沖縄戦で無くなった方の名前を記してあることがとても印象的であり、宗教色が無いという点において靖国神社とは対照的である。


平和祈念公園の平和の礎
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10

 大勢の学生さんが訪れていた。ひめゆりの塔の見学施設(最近リニューアルされた様子)では、「日本本土」の地上戦を避けるため、犠牲にされた沖縄戦の想像を絶するむごい現実を改めて思い知らされた。


ひめゆりの塔資料館にて
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


◆具志川城跡・喜屋武岬・知念城跡◆

 国指定史跡・具志川城跡は12世紀後半から15世紀中頃の城(グスク)であり、平成12年度から10カ年の予定で保存修理事業が糸満市教育委員会によって行われている。海に面した崖の上にあったような城だったようである。まだまだ修復作業の先は長いように見え、駐車場はおろか観光に関するようなものは周辺になにもなかった。城跡の内部には手すりがあり、歩いて回れるようになっている。干潟に面した海への眺めが素晴らしかった。


具志川城跡にて
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10

 その跡に喜屋武岬だと思って立ち寄った場所(カーナビが示した場所)は、畑の中を通った道の先にあり、まわりにはゴミが沢山捨ててあった。小型の冷蔵庫のようなものまであった。ただ、道の途中にあった喜屋武岬の方向を示す立て札は別の方向を示しており、Google Mapにも喜屋武岬の名前は別の場所に示されているので、カーナビが示した場所が誤りだったのだろうと思われる。それにしても、ゴミが捨ててなければ、干潟に続くきれいな場所だったので、もったいない限りだし、そもそも不法投棄である。

 順序は前後するが、志喜屋漁港の跡に知念城跡も訪れた。ここは急峻な坂を上った山の中腹にあり、これも修復工事が行われているところであった。修復によって新たに積まれた石垣の石は他の石より白く、修復の進み具合が分かる。新城、古城、裏門、正門の位置などを示した地図もあり、想像力をかきたてられる。今回、三箇所の城跡と、再建された首里城の合わせて4箇所のお城を巡ったことになる。自然と合わせて沖縄ならでは貴重な活用すべき資源であると感じた。


知念城跡にて
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10


◆志喜屋漁港・あざまサンサンビーチ◆

 一方、城跡や自然と対照的なのが、海中道路、古宇利大橋とを含む一連のコンクリート公共工事ものであった。志喜屋漁港は、半分が漁港、半分がビーチ風の人工の砂浜である。砂浜の一部は海中道路にもあったコンクリートの階段状の構造になっている。

 古宇利大橋の「ビーチ」と同様、そこら中に「(注意)遊泳者へ・本施設はビーチとしての施設ではありません。遊泳する方は自己責任で利用してください。」と書いてある看板が立ててあるが、シャワー施設はある。沖縄まで来てコンクリートの階段のついた、泳いでいいんだか悪いんだか分からない監視員のいない「ビーチ」で泳ぎたいと思う人がいるだろうか。


珊瑚を壊して人工海浜?
志喜屋漁港と人工ビーチが隣り合わせ
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10

 しかも遊泳できる「ビーチ」が近くに3つもある。(うち2つは自然な砂浜、1つは「サンサンビーチ」)看板をみるとどうやら指定管理者制度を利用しているようだ。別の看板にはあまり綺麗でない手書きの字で「当施設の運営はみなさんの駐車料金等の利用料金でまかなっています。南城市の予算は使っていません。管理人」と書いてある。駐車場料金(1日500円)で運営しているようであるが、ほとんど人が来そうもない駐車場の駐車料金でまともな運営が出来るのだろうか。

 さらに東に進むと「あざまサンサンビーチ」がある。東西および中央に突堤がある。最近はやりの砂浜の砂が流れにくいように、海の中に作られた短い堤防、あれを少し大きくしたようなものである。突堤の斜面は石垣風であるが、上側は舗装されている。海水が入ってくる砂浜のあるプールのような風情である。砂浜にはビーチバレーのネットが張ってある。


珊瑚を壊して人工海浜?
 撮影:青山貞一 Nikon Digi Camera CoolPix S10

 ビーチの隣には久高島に向かう船の出る小さな港があった。島には行かなかったので島の様子は分からないが、自然を満喫できるようであれば、船は利用してみたいが、人工海浜のビーチは不要だろう。


◆沖縄の街並みと負担

 日本でも世界でも観光地の一番の魅力は街並みではないだろうか。その風土に根ざした街並みがあってこそ、個別の観光拠点が活きるのである。その点、沖縄本島でみた街並みの大半は残念ながら、魅力を感じることが出来なかった。家の造り、屋根の色、壁の色、沖縄ならではのデザイン、色合いになっていれば、各段に魅力的な島になるであろうし、移動しているだけでも楽しい場所になるだろう。

 基地の存在は二重の意味で沖縄の負担になっている。基地が広大な場所を占有し、自然を破壊し、廃棄物により汚染し、騒音、事故の危険、米兵による犯罪等のおそれは分かりやすい負担であるが、それと並んで基地があることによって国から交付される各種の補助金、公共事業が沖縄の魅力を大きく損なう要因になっていると思われる。

 道路やコンクリートの施設を中心とした、縦割りによる総合的なビジョンのない公共工事が蔓延し、沖縄の自然・文化・観光資源を破壊しているだけでなく、沖縄の人が自ら工夫、創造しようという意欲も同時に壊しているのではないだろうかと感じた。公共事業は工事という仕事が継続している間はいいかもしれないが、それはいつまでも続かないし、なにより、沖縄の魅力を損なう結果しかもたらしてこなかった。

 これは沖縄だけで起きていることではない。沖縄に顕著に現れている同じことが、全国で起き結果として日本は経済も文化も疲弊していることを、私たち自身が自覚しなければならないと感じた視察であった。