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太陽の大気は表面より高温、
その理由が判明

The Sun’s Atmosphere is Hotter
than Its Surface, Now We Know Why

Sputnik International 
Mar 25, 2022


翻訳:青山貞一(東京都市大学名誉教授)
  独立系メディア E-wave Tokyo 2022年3月26日


CC BY 2.0 / NASA ゴダード宇宙飛行センター / 噴出しフレア現象

 太陽は2011年9月25日にMクラス(中程度レベル)のフレアを弾き出し、プラズマのプルームを太陽の上空に送り出したが、そのかなりの部分が、それを打ち上げた活動領域に向かって戻ってきたように見えた - スプートニク・インターナショナル、1920、2022.03.25

 通常、熱源から遠ざかると熱が放散され、周囲の温度が下がる。暖房器具を考えてみると、すぐそばにあるときとは違って、部屋の向こう側では効果が薄れることがわかる。太陽はそのようなことはない。

 オタゴ大学の科学者たちは、太陽の大気がその表面よりもはるかに高温である理由を説明するために、現在ある2つの理論を統一した。

 太陽の熱は、2700万度以上あるとされる太陽の中心部で発生する。そのエネルギーが地表に到達する頃には、6000度という比較的低い温度まで冷えている。その後、太陽の大気(コロナ)では、わずか数百キロメートルで100万度以上まで温度が上昇する。

 科学者たちは、その理由を説明するのに苦労してきた。有力な説は2つあるが、どちらにも問題がある。1つは、太陽のエネルギーによる乱気流が、大気中のガス(主に水素、ヘリウム、酸素)を熱くするとする説。しかし、それでは太陽の近くにある電子が比較的冷たいままであることの説明がつかない。

 これは、もう1つの理論である磁気波で説明できる。この理論では、地球よりもはるかに無秩序な太陽の磁場が自分自身にぶつかり、大量のエネルギー散逸を引き起こすと考えられている。そうすれば、電子への影響を与えることなく、ガスが加熱されることになる。しかし、科学者たちは、コロナの驚くべき熱の全体を説明できるほどの磁気活動を、太陽で観測していない。

 ジョナサン・スクワイア博士とロマン・メイラン博士が『Nature Astronomy』に発表した新しい理論は、6次元コンピューターシミュレーションを用い、両方の理論が正しいことを決定したものである。この2つの理論は、電子を比較的低温に保ちながら、気体を加熱するために同時に作用している。

 これまで相容れなかったこの2つの理論を結びつけるものを、スクワイヤーは「ヘリシティの障壁」と呼んでいる。これは、乱流因子が電子ではなく、最もスケールの小さい粒子、すなわちイオンだけを熱するようにするものである。これにより、電子のエネルギーをイオンサイクロトロン波に転換しながら、ガスを加熱する。

 「もし、プラズマの加熱を、水が丘の下を流れるように起こると想像すると、ヘリシティ障壁はダムのように作用して流れを止め、そのエネルギーをイオンサイクロトロン波へと転換させる。このように、ヘリシティ障壁は2つの理論を結びつけ、それぞれが抱える問題を解決してくれるのです」とミランドは説明する。

 この研究成果は、NASAの探査機パーカー・ソーラー・プローブが太陽のコロナに飛び込んで観測した結果とも一致している。

 コロナの熱によってガスがはじけ飛び、太陽系内を飛行する。一般に太陽風と呼ばれるものだ。太陽風とそれに伴う放射線は、人工衛星やエネルギー網、地球の磁場などに大きな影響を与える。

 太陽のコロナを理解することは、太陽系をよりよく理解することに加え、太陽風を予測し、防止策を講じることにつながり、通信経済を何十億ドルもの被害から救うことができるとスクワイヤーは述べている。