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【視点,日本の自殺者増】
自殺者数がまた増加、その原因や動機には
従来のものに加え、目新しいものも

Sputnik 日本語版
War in Ukraine #2547  26 Jan 2023


独立系メディア E-wave Tokyo 2023年1月27日

2023年1月26日, 16:00 (更新: 2023年1月26日, 18:47) 孤独 - Sputnik 日本, 1920, 26.01.2023
© Depositphotos.com / Kanzilyou


本文

 日本の厚生労働省が2022年の自殺者数を発表した。

 統計では、男女別で、男性が13年ぶりに増加した。すでにかなり以前から危機的状況となっている自殺者数の増加は、出生率の低下と並んで、政府がなかなか解決できない問題の一つである。しかもコロナウイルスによるパンデミックにより、状況は悪化しており、どうやら岸田政権が講じる策は機能していないようだ。

 世界の自殺(Suicide in the World)の研究データによれば、日本は自殺率では以前からG7諸国の中で、主な戦略的パートナーである米国に次いで2位となっていた(米国14.5%、日本12.24%、カナダ10.34%、ドイツ8.27%、英国6.88%、イタリア4.33%)。

 この喜ばしくない数字は一時下がり始めていたが、コロナウイルスにより、再び、上昇し始めている。世界第3の経済大国である日本で、これほど多くの人々が人生に見切りをつけようとする動機は一体なんなのか、「スプートニク」が探ってみた。

パンデミック:第1位は孤独

 現在、多くの若者たちがワーカホリックの渦に巻き込まれ、ある種の奴隷となり、それ以外の人生の意味を失うようになっている。またそれにより、コミュニケーションの幅が大きく狭まり、それが完全な孤独につながることも少なくない。

 日本で孤独・孤立対策大臣が任命(2021年2月、坂本哲志氏)されたのも偶然ではない。孤独・孤立対策大臣の主な任務は、深刻化する社会的な孤独・孤立の問題について総合的な対策を推進することである。

 高等経済学院の日本研究家であるアンドレイ・フェシュン氏は次のように指摘している。

 「日本の若者の自殺の主な原因は、日本の教育現場における対策がまったく功を奏していない、いじめ問題です」と指摘している。

 パンデミックのときには、いじめ問題はやや落ち着いていましたが、若者の間では別の自殺の原因が目立ってきている。それは、ひきこもりである。ひきこもりとは、自ら1人になることを望み、社会から孤立することを選ぼうとする隠遁者である。

 以前はこうした若者たちは、何ヶ月も家から出ないこともあったが、パンデミックによってこれまでとは違うルールや禁止が作られたことで、ひきこもりの人たちのストレスを増やしたの」


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社会問題


 若者以外の年齢層では、こうした従来からの問題に加えて、社会問題が自殺の原因となっている。たとえば、解雇、鬱、借金、就職活動、健康、人間関係などの問題である。
フェシュン氏は言う。

 「犠牲者はもう、働きすぎで疲れ果ててしまったという人だけではありません。社会から除外されてしまったと感じる人たちも自殺を選ぶようになっています。多いのは、借金のしすぎによるものです(たとえば、値上がりししていた土地を買うためにローンを組んだが、いきなり下落したなど)。いきなり破産する人々がいて、さらには住む場所を追われる人までいます」

 政府は何年もの間、景気停滞を克服し、出生率低下に関する人口問題や老人介護のための医療従事者不足を解決しようと措置を講じている。しかし、このエネルギー危機の今、防衛予算が絶対的な優先課題になろうとしている。つまりミサイルの調達やその他の防衛上の目的のための予算が増加しているのである。

 一方で、自殺者の統計には、40〜60代、そして年金生活者も多く含まれている。こうした人々の自殺の動機は健康問題である。

パンデミックの打撃に「弱い」性別

 2020年、日本における自殺者数は増加した。ロイター通信によれば、特に、パンデミックによって引き起こされた経済的、金融的なストレスを背景に女性の自殺者が増えているという。

 警察庁の自殺統計によれば、2020年の自殺件数は20,919件で、2019年よりも750件増加した。男女別では、男性が13,943人、女性が6,976人で、男性は前年比で1%減少したが、女性は14.5%の増加となっている。女性は多くがサービス業や小売業で働いており、パンデミックの際に解雇された人も多かった。


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子どもたち:懸念を呼ぶ統計

 日本では、出生率の低下も現在、深刻な社会問題であるが、それと同時に、子育てに関する恐ろしい事実も指摘されている。

 警察庁と児童相談所の職員らは、2018年に児童虐待事件の数が記録的な数に達したと発表した。警察は、児童虐待の事件は1380件で、被害に遭った子どもの数は1394人に上ったことを明らかにした。しかも、日本は世界でも、もっとも安全な国の一つであると言われているにもかかわらず、児童への虐待事件は相変わらず起きている。

 しかも、こうした事件は、孤立した状態の中で起きている。コロナウイルスによるパンデミックを背景に、日本では1947年以来最多となる数の子どもの自殺が記録された。その原因は、学業の遅れ、家庭問題、健康問題である。

 マスコミは、文部科学省の情報を基に、子どもの自殺は、過去40年でもっとも多くなっていると報じている。

 これに関連して、アンドレイ・フェシュン氏は、問題は思ったようなスピードではないものの、解決されつつあると指摘している。

 「日本は世界でもっとも発展した国の一つです。しかし、大都市の住民たちは欧米の生活スタイルなどを好み、少しずつ純粋な日本人ではなくなりつつあります。愛国心と勤勉さは失われていませんが、同時に、遠くに都市においては、個人主義が『開花』しています。もっと自分自身のために生きたいという気持ちが芽生え、それが大きな家庭を作るということに否定的な影響を与えています」

 一方、自殺の問題について、フェシュン氏は、現在、そこには、地域問題、経済問題、政治問題が、国民の心理状態にも影響を及していると指摘する。

 「多くのことが、この経済状況において、どうやって収入減に対処するのかにかかっています。というのも、(主に家庭を持っていて)経済的に厳しくなった場合、その人は、別の収入源を探さなければなりません。とはいえ、一人暮らしの人たちにとっても厳しい状況です。多くの人が何年もの間、自分だけのために生きてきました。そんな人たちの間に、家庭を持ってもいいかもしれないと思う人もいるかもしれません。しかし、これまでの間に彼らは利己的になってしまい、誰か別の人のために生きるということを忘れてしまいました。そして1人で生きる習慣が身についてしまったのです」

 このように、自分自身を幸せだと感じることを邪魔する「新たな願いと古い習慣の葛藤」が生まれている。葛藤というのは、概して危険なものである。たとえその葛藤を生み出したのは自分自身であっても、そこから逃れることはできないのである。