エントランスへはここをクリック   


米軍による沖縄県内における
枯葉剤問題への適切な
対応についての意見書
2012年3月14日 
池田こみち  
環境総合研究所副所長

掲載月日:2012年4月10日
 独立系メディア E−wave


 ベトナム戦争開戦から半世紀余りがすぎたにも拘わらず、現在も実際にベトナム戦争を知らない多くのベトナムの子どもたちが枯れ葉剤の影響と思われる心身への痛ましい障害に苦しめられている。そればかりか、ベトナム戦争で枯れ葉剤を散布した側の米国、カナダ、韓国の退役軍人の多くも枯れ葉剤に含まれていたダイオキシン類の毒性に心身を蝕まれ苦しみが続いている。ベトナム戦争は、今もなお、多くの未解決の問題を現代に引きずったまま、戦争の愚かさを私たちに突きつけている。

 我が国ではすでに忘れ去られた感も否めないベトナム戦争だが、基地の県、沖縄では、イギリス人ジャーナリスト、Jon Mitchell氏のねばり強い取材により沖縄県内においてもベトナム戦争中に、枯れ葉剤が持ち込まれ、使用(山間地に散布)され、一部が環境中に投棄されていたという証言が報じられ、にわかに沖縄県内の枯れ葉剤問題がクローズアップされている。
 
 筆者は、2012年1月、市民グループからの依頼に基づき、現地を視察し、市民や自治体関係者と意見交換を行った上で、問題の所在を以下に報告した。

◆池田こみち:ベトナム戦争の枯れ葉剤、今も沖縄に
掲載月日:2012年1月26日
 http://www.eritokyo.jp/independent/ikeda-col1006...html

 その後、沖縄県内の市民団体(沖縄・生物多様性市民ネットワーク:略称 沖縄BD)の依頼に基づき、上記の視察、情報交流を踏まえ、沖縄における枯れ葉剤問題をどのように捉えるべきかについて意見書をとりまとめ、2012年3月15日に依頼先に提出した。

 意見書では、沖縄における枯れ葉剤問題の経緯について、Jon Michell氏の取材レポートや沖縄県内の新聞記事から整理すると共に、後半では、これまで行われた関連調査の問題点、調査のあり方、市民参加のあり方など多面的に提言を行った。

 意見書の提出を受け、沖縄県内市民グループは、枯れ葉剤が埋立処分されたとされる北谷の町長に意見書を手渡し、町として適切な対応を求める要望書も併せて提出した。北谷町は2011年末の3月に町内の地下水や河川底質のダイオキシン類調査を行い、「異常なし」という結果をすでに報告している。

◇北谷町長への要望書  PDFファイル添付
沖縄県内NGO:北谷町における枯れ葉剤問題に関する要請書

 今後、沖縄県の担当部署にも意見書を手渡し、県として問題解決にむけて責任ある対応を迫る意向である。

 沖縄BDは、2011年(平成23年)第8回沖縄県議会(11月定例会)に枯れ葉剤の件で、陳情を出しているが、今回の意見書を受けて、再度、議会での継続審議を求め、2012年2月県議会中に開催された米軍基地関係特別委員会及び、沖縄振興・那覇空港整備促進特別委員会において質問を行い、日本政府や米国政府への照会や関連調査の実施等についての要望を行った。

◇2011年第8回沖縄県議会への陳情
 http://okinawabd.ti-da.net/e3720155.html

 沖縄県内における枯れ葉剤問題は、単に沖縄県内に現在も枯れ葉剤が残留しているかどうかといった表面的な事実解明にとどまらず、県内に現在も多数存在している米軍基地内における環境問題の解決に向けて、日米関係をどのように見直すべきであるのか、市民や基礎自治体はどのように対処していけばよいのか、行政への要望に加えて市民としての問題解決への多面的な取り組みが必要であり、提言を行っている。

 折しも、東日本大震災で発生した大量の震災瓦礫の処理を巡り、国論を二分する大きな議論となっている。有害物質を含む廃棄物をどのように処理するべきなのかについて、国内も基地内も同等のルールで将来世代への負担の軽減を第一に、また、人間だけでなく生態系への影響にも配慮した適切な対応が求められる。

 本意見書が同様の問題に直面する各地の市民活動にとって参考になれば幸いである。

◆意見書PDF
池田こみち:米軍による沖縄県内枯れ葉剤への適切な対応についての意見書 2012年3月14日 池田こみち 環境総合研究所