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貧乏人から
最も沢山の税金を
ふんだくる国


 田中康夫

掲載日2005.10.2



 「これからの日本は良い方向に進む」と考える国民が59%。と「讀賣新聞」は世論調査の結果を報じています。昨年7月の参議院選挙後よりも10%増加しているのだとか。本当にそう思っているのだとしたら、苛められるのが大好きなM体質な国民性だって事なのかな。

 何故って今や“日沈むニッポン”は、畏友・森永卓郎氏の言葉を借りれば「日本は世界の中でも貧乏人から最も沢山の税金を取っている国」なのです。事実、6月に提出された政府税制調査会は、「日本は先進国の中で最も課税最低限が低い」と明言しているのです。

 言わずもがなの解説を加えれば課税最低限とは、一定の収入以下の世帯には課税しない限度額を示します。夫婦に子供2人の家庭の場合、日本は325万円。他方、ドイツは500万円、フランス403万円、アメリカ358万円、イギリス359万円。いやはや、一目瞭然。物価が最も高い日本が、最も低所得者層に国税ならぬ酷税国家なのです。

 のみならず、今や日本はアメリカと並ぶ金持ち優遇国なのです。日本に於ける所得税の最高税率は、80年代には70%でした。現在は37%と半減しています。

他方、ビル・クリントン政権下で日本を上回る39.6%へと引き上げたのがアメリカです。その後、富裕層に優しい政権だと非難を浴びるジョージ・ブッシュの下で金持ち減税を行ったとは言え、その数値は35%。殆ど日本と変わらないのです。

 更には従米・屈米が基本方針の“朕・小泉純一郎”内閣は、売却益を一律10%とする株式投資減税を行い、自社株売却で140億円を得た堀江“ベトベト体質”貴文氏への課税も、僅か14億円に留まっているのです。それらは全て、元祖従米・屈米主義者で経済財政諮問会議議長として君臨する宮内義彦オリックス会長等の提言に基づく金持ち優遇策であります。

 繰り返しますが、にも拘らず今日日のジンギスカン人気と軌を一にしてか、従順な子羊ちゃんと化したM体質な奇っ怪ニッポン国民のは、この国には明るい未来が期待出来る、と儚い夢を信じているのです。

とは言え、同じく「讀賣新聞」の「国家観」に関する調査結果は、極めて興味深い内容です。「明確な長期目標や国家戦略を持つ国」だと捉える人は17.4%に留まり、逆に71.4%が「明確な長期目標や国家戦略に欠ける国」との認識を抱いているのです。

而して、「国の指導者が国民全体の利益に配慮している国」20.2%、「国の指導者が自分達の利益を優先しがちな国」72.9%。「国際社会でしっかりと自律した国」23.0%、「他国の顔色を窺っている国」73.6%

が、その国民は若しや、朕・小泉純一郎こそが「国民全体の利益に配慮し」「明確な長期目標や国家戦略を持ち」「しっかりと自律した国」を造り上げる偉大なる領主様だと魔法に罹ってしまっているのでは???

いやぁ、だとしたら、それ程までに予知能力無き国民へと育て上げてくれた戦後の日本教職員組合(日教組)に、自民党は国民栄誉賞を授与すべきかも知れません。